美食のミステリー作家

レックス・トッドハンター・スタウト
(Rex Stout)

「料理長が多すぎる」
（1938年）
（早川書房）

　アメリカの小説家で、〈私立探偵ネロ・ウルフ〉シリーズの生みの親。

　英米の探偵小説界では、超一流の作家としてきわめて評価が高く、現在でも非常に人気のある作家なのですが、それに比べれば日本では未訳の作品も多く、不遇の作家の一人と言えるかもしれません。

　48歳でミステリ作家としてデビューするまでドラグ・ストアのソーダ水係り、水兵、会計係、イチゴつみ、会社の支配人など、実に様々な職業を経験していて、その間に身に着けた知識やユーモアのセンスが作中に色濃く反映されています。

　登場人物の性格や心理が細かく描写され、文学的な味わいの高く、欧米の評論家から絶賛されました。特にウルフとアーチーのやりとりは絶妙なテンポの良さで、多くの後世の作家の手本となっています。

　またスタウトは大変な美食家で、園芸に熱中していたらしく、このあたりはウルフと同じですが、ウルフと違い長いあごひげを生やし、非常に痩せていて活動的な人物だったそうです。

「手袋の中の手」
（1937年）
（早川書房）

　作中では料理の知識もふんだんに語られていますが、これはスタウト自身が試食して、気に入ったものだけを取り入れたものらしく、1973年に「ネロ・ウルフの料理本」という著書まで出しているほどです。

　黄金時代の作家で、アガサ・クリスティーやエラリー・クイーン、ジョン・ディクスン・カーらとともに1970年代まで活躍し、1959年にはアメリカ探偵作家クラブ（ＭＷＡ）の巨匠賞を、1969年には後期の代表作「ファーザー・ハント」でイギリス推理作家協会（ＣＷＡ）賞のシルヴァー・ダガー賞も受賞しています。

　その死後には長年の功績を讃えて〈ネロ・ウルフ〉賞も創設され、ヘレン・マクロイやヒュウ・ペンティコーストらの後輩作家たちが受賞しています。

■作家ファイル■

出身地

アメリカ、インディアナ州ノーブルスヴィル
九人兄弟の一人として生まれる（トッドハンターは母方の姓）
育ちはカンザス州

学歴

トペカ高校卒

生没

1886年～1975年10月27日（老衰で、88歳）

作家としての経歴

1929

最初の作品「How Like a God」を刊行。なお40歳で作家を志すまでは、ドラグ・ストアのソーダ水係り、水兵、会計係、イチゴつみ、会社の支配人その他約30種類ものいろいろな職業に就いていた

1934

48歳の時ネロ・ウルフ物の長編「毒蛇」で探偵小説家としてデビュー

1959

アメリカ探偵作家クラブ（ＭＷＡ）賞の巨匠賞を受賞

1969

「ファーザー・ハント」でイギリス推理作家協会（ＣＷＡ）賞のシルヴァー・ダガー賞を受賞

1973

「The Nero Wolfe Cook Book （ネロ・ウルフの料理本）」を出版

シリーズ探偵

私立探偵ネロ・ウルフ (Nero Wolfe)＆その助手アーチー・グッドウィン (Archie Goodwin)
セオドリンダ・ドル・ボナー嬢 (Theodolinda Dol Bonner)
テカムス・フォックス (Tecumseh Fox)
アルファベット・ヒックス (Alphabet Hicks)

代表作

【ネロ・ウルフ】

「毒蛇」「腰抜け連盟」
「料理長が多すぎる」
「ファーザー・ハント」

ランキング

ＥＱアンケート39位

■著作リスト■

１　私立探偵ネロ・ウルフ登場作品リスト

２　セオドリンダ・ドル・ボナー嬢登場作品リスト

【長編】

【中編】

【テレビ映画原作】

３　テカムス・フォックス登場作品リスト

４　その他の作品

【長編】

【未収録短編】

【編書】

【エッセイ・評論その他】

【研究書】

５　パルプ・フィクション

【長編】

【短編集】

【映画原作】

【参考】「エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち」（パシフィカ　名探偵読本４）
「毒蛇」（早川書房　ハヤカワミステリ文庫）
「ラバー・バンド」（早川書房　ハヤカワミステリ文庫）
「ハヤカワ・ミステリマガジン1977年６月号」（早川書房）

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