詩人として最高の賞である〈桂冠詩人〉の称号を持つ作家
アイルランド生まれのイギリスの詩人・小説家。ミステリ作品はほぼすべてがニコラス・ブレイク名義で発表されています。その一方で詩人としても有名な人物で、1968年から1972年までの間、本名のセシル・デイ・ルイスの名で詩人としては最高の称号である〈桂冠詩人〉の地位を授かっています。
アイルランドのクイーンズ州に生まれ、ほどなくイングランドに移住し、オックスフォード大学に進学。卒業後はいくつかの学校で教師として教鞭を執っていましたが、第二次世界大戦になると情報省に所属して活躍。大戦が終わると再び教職に戻って母校の詩学教授を務めました。
推理作家としてデビューしたのは1935年に発表した長編「証拠の問題」でですが、そのきっかけというのが、自宅の屋根を修繕する必要が生じたにもかかわらず当時は生活が苦しく、その費用を捻出する必要があったからだと言われています。
ブレイクは江戸川乱歩の分類によれば、同時代にデビューしたマイクル・イネス、マージェリー・アリンガム、ナイオ・マーシュらとともに本格黄金時代の伝統を継承する”新本格派”の一人として名前が挙げられています。
ちなみにこの1930年代後半から40年代にかけてデビューした作家たちというのは、日本では第二次世界大戦の混乱などもあって紹介が遅れ、不遇のまま終わってしまっているというケースが数多く見受けられるのですが、その中にあってブレイクは例外的に邦訳に恵まれている方で、幸運であったともいえます。
彼の作風は詩人として名を馳せていたこともあってか、謎解きの面白さはもちろんのこと、シェイクスピアをはじめとするイギリス文学作品からの引用やもじりが全編に散りばめられていて、文学性の高い格調ある作品に仕上がっています。
また、ブレイクは黄金時代の女流作家ドロシー・L・セイヤーズの影響を強く受けていたとされ、女史のような人物描写・風俗描写に重きを置いた作品である点にも特徴があります。
この点彼のシリーズ探偵であるナイジェル・ストレンジウェイズとジョージアやクレアとのロマンスは、セイヤーズの描いたシリーズ探偵ピーター・ウィムジイ卿と女流作家ハリエット・ヴェインとのロマンスを彷彿とさせるものがあるのはそのような理由があるためです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | くもの巣 | 1956 | HPB462 | |
2 | 血ぬられた報酬 | 1958 | 早川文庫17-5 HPB543 |
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3 | 死のジョーカー | 1963 | HPB824 | |
4 | 秘められた傷 | 1968 | HPB1143 | CWA賞シルヴァー・ダガー賞('68)、ブレイク最後の作品 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 白の研究 | 1949 | 光文社文庫「世界ベスト・ミステリー50選/上」('94) EQMM'56.10 |
EQMM短編年間コンテスト3位('49) |
2 | Sometimes the Blind 目は見えなくとも |
EQ'97.9 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | なぜまた探偵小説が? | 研究社出版「探偵小説の美学」('74) | エッセイ |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 丘の上のカシの木 | 1936 | 晶文社 文学のおくりもの10('75) | |
2 | Starting Point | 1937 | - | |
3 | Child of Misfortunea | 1939 | - | |
4 | オタバリの少年探偵たち (オタバリの少年探偵) |
1948 | 岩波少年文庫155('08) 岩波少年文庫2052('57) 岩波少年少女文学全集7('60) |
児童書 ジュヴナイル・ミステリ |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Beechen Vigil | 1925 | - | |
2 | Transitional Poem | 1929 | - | |
3 | 羽根から鉄へ | 1931 | 平凡社「世界名詩集大成10 イギリス編 II」('62) | |
4 | 磁気のある山 | 1933 | 国文社 | |
5 | 舞踏の時 | 1935 | 国文社 | |
6 | Poems in Wartime | 1940 | - | |
7 | An Italian Visit | 1953 | - | |
8 | 世に知られぬ或る女のための哀歌 | 1965 | 新潮社「世界詩人全集21 現代詩集 II」('69) | |
9 | The Whispering Roots | 1970 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | A Hope for Poetry | 1934 | - | |
2 | 詩を読む若き人々のために | 1944 | 筑摩書房 | |
3 | 詩をどう読むか | 1947 | ダヴィッド社 現代小説作法('75) | C.D.ルーイス |
4 | ハーディ・抒情詩 | 1951 | 研究社(圧縮版) | |
5 | 埋もれた時代 ─若き詩人の自画像 |
1960 | 南雲堂('72) | C・デイ・ルイス 自伝 |
6 | On Translating Poetry | 1970 | - |
【参考】「殺しにいたるメモ」(原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ)
「死の殻」(東京創元社 創元推理文庫)
「丘の上のカシの木」(晶文社 文学のおくりもの)