シェイクスピアの研究でも有名な大学教授
イギリスの推理小説家で、江戸川乱歩からはマージェリー・アリンガム、ニコラス・ブレイク、ナイオ・マーシュらとともに、英国”新本格派”の代表的作家の一人と評されています。
各地の大学教授を歴任し、シェイクスピアなどの文学研究・評伝でも高い評価を得ている人物で、生涯作家生活と研究生活を並行して行っていました。
イネスのミステリ作家としてのデビュー第1作の誕生は、1937年、オーストラリアへの6週間の航海の途上でのことだったそうです。
教授に推薦してもらえたにもかかわらず、自分にはこれといった著書が一つもなかったため、推理小説の筆を執り、自らの教授昇進の祝いとしたのだと後年イネスは語っています。そうして発表されたのがアプルビイ警部シリーズの第1長編「学長の死」でした。
その後は毎年一冊のペースで作品を発表し続けましたが、彼のミステリ作品のほとんど全てにはこの「学長の死」に登場したアプルビイ警部が登場。シリーズが進むにつれて警部は順調な出世街道を歩んでいきます。
イネスの作品は文学的教養、とくにシェイクスピアなどの古典的教養に裏打ちされたプロットにあるため、日本はもとよりアメリカ人でさえも好みが分かれる作家といわれています。そのためそのようなくせのあまりない短編のほうが親しみやすいかもしれません。
彼の代表作は、長編では「ハムレット復讐せよ」や江戸川乱歩が1935年以降の海外長編ベスト10の5位に選んだ「ある詩人の挽歌」で、初期作品に評価が集中しているようです。
また短編の方では、アプルビイ警部の第1短編集「アプルビイ語る」がクイーンの定員にも選ばれています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | From London Far (米 The Unsuspected Chasm) |
1946 | - | |
2 | What Happend at Hazlwood | - | キャドーヴァー警部 | |
3 | The Journeying Boy (米 The Case of the Jouneying Boy) |
1949 | - | |
4 | Christmas at Candleshoe (CandleShoe) |
1953 | - | |
5 | 海から来た男 | 1955 | ちくま世界ロマン文庫12(新装版)('78) ちくま世界ロマン文庫11('70) |
心理的冒険小説 |
6 | Old Hall, New Hall (米 A Question of Queens) |
1956 | - | |
7 | The New Sonia Wayward (米 The Case of Sonia Wayward) |
1960 | - | |
8 | Money from Holme | 1964 | - | ヒルデバート・ブロンコフ |
9 | A Change of Heir | 1966 | - | |
10 | The Mysterious Commission | 1974 | - | チャールズ・ハニーバス教授 |
11 | Honeybath's Haven | 1977 | - | |
12 | Going It Alone | 1980 | - | |
13 | Lord Mullon's Secret | 1981 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | A Test of Identity 鏡の顔 |
1955 | HMM'86.9 | |
2 | Mysterious Affair at Elsinore ハムレット異聞 |
EQMM'64.3 | ||
3 | A Case of Headlong Dying | 1973 | - | |
4 | The Secret in the Woodpile ウッドパイルの秘密 |
1975 | バベル・プレス「本の殺人事件簿─ミステリ傑作20選1」('01) | |
5 | ペリーとカリス | 1979 | 講談社文庫「13の判決」('81) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Death As a Game ゲームとしての死 |
HMM'75.7 | エッセイ |
【参考】「アプルビイの事件簿」(東京創元社 創元推理文庫)