現代イギリスを代表する女流本格作家
レンデルとともに女流現代本格ミステリー作家の代表格です。かなりの寡作作家ですが、元々純文学作家を志向していたこともあって、その少ない作品のどれもが文学性に優れた高い水準を保っています。
また、作家になる前は看護婦をしていたこともあり、その病院勤務の経験を活かした作品が多いのが特徴です。
高校卒業後、1941年に結婚。その後第二次大戦で夫が従軍し、自らも赤十字の看護婦として働きます。1945年、夫は復員しますが、精神を患って入院(64年死去)し、そのため彼女が2人の娘も含めて一家の生計を担うという苦労を味わいます。
国民健康保険協会に勤務する傍ら、ミステリーの執筆を始めるようになり、処女作「女の顔を覆え」を発表しデビューを果たしました。
その後第4作、1971年発表の「ナイチンゲールの屍衣」で英国推理作家協会(CWA)賞のシルヴァー・ダガー賞を受賞し、一躍人気作家となりました。この作品は彼女のこれまでの病院勤務を生かされた作品といえます。
そして彼女のもっとも人気の高い作品となったのが、弱冠22歳の可憐な女性私立探偵コーデリア・グレイの活躍する「女には向かない職業」(1972)でした。
この作品はうら若き女性探偵が健気にひたむきに生きていく姿を描いた作品で、多くの読者の共感を呼び、その後の自立した女性探偵の活躍をを描いたジャンルの先駆けともなった作品です。
1997年、ヘレン・バクセンデール主演で映画化もされています。
ダルグリッシュ警視シリーズの方も、本国イギリスではドラマ化されていて好評を博し、日本でもビデオ化されています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | ラトクリフ街道の殺人 | 1971 | 国書刊行会 クライム・ブックス('91) | T・A・クリッチリーとの合作 歴史ミステリ |
2 | 罪なき血 | 1980 | 早川文庫129-3 早川書房('82) |
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3 | トゥモロー・ワールド (人類の子供たち) |
1992 | 早川文庫129-17(新装版) 早川文庫129-13 早川書房('93) |
映画化('06) |
4 | Death Comes to Pemberley 高慢と偏見、そして殺人 |
2011 | HPB1865 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | いともありふれた殺人 (処刑) |
1967 | 創元推理文庫169-3「ディナーで殺人を/上」('98) HMM'89.8 HMM'68.11 |
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2 | Murder, 1986 殺人─一九八六年 |
1970 | HMM'71.1 | |
3 | The Victim 黄金色の飛沫 |
1973 | HMM'80.12 | |
4 | A Very Desirable Residence 豪華美邸売ります |
1976 | 早川文庫「ある魔術師の物語」('80) HMM'78.1 |
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5 | The Girl Who Loved Graveyards 墓地を愛した娘 |
1983 | 早川文庫「伯父さんの女」('85) HPB「現代イギリス・ミステリ傑作集3」('88) |
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6 | The Man Who Was Eighty 八十歳の男 |
1992 | HMM'93.10 | |
7 | The Mistletoe Murder ヤドリギ殺人事件 |
1995 | HMM'96.12 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Time to Be in Earnest | 1999 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Ought Adam to Marry Cordelia ? アダムはコーデリアと結婚すべきか? |
1977 | 集英社「ミステリー雑学読本」('82) | |
2 | Dorothy L. Sayers: From Puzzle to Novel パズルからノヴェルへ |
1978 | HMM'80.1 | ドロシー・セイヤーズ論 |
3 | P.D.James on Ngaio Marsh | 1997 | - | ナイオ・マーシュの評論 |