イギリス最初の長編推理小説を発表
イギリスのヴィクトリア朝時代の作家。「クリスマス・キャロル」や「二都物語」などで有名なイギリス有数の文豪チャールズ・ディケンズとは親友で、二人でいくつかの作品を合作したこともあったそうです。
ちなみにコリンズの弟チャールズは父親と同じ画家で、ディケンズの娘ケイトと結婚しています。
有名な風景画家であったウィリアム・コリンズの長男としてロンドンに生まれ、最初は大学には進学せずロンドンで紅茶輸入業を営むアントロバス商店に徒弟奉公していました。
そして1845年に小説「イオラニ(Iolani)」を書き上げますが、出版社を見つけられずにこの作品はお蔵入りとなります(1999年にようやく出版)
その後1846年からリンカーンズ・イン法学院に入って法律を学び始めますが、翌1847年に父親が他界すると更に一年後の1848年に彼の父ウィリアムの伝記「Memoirs of the Life of William Collins(ウィリアム・コリンズの生涯)」を出版。これが好評を得たため、1850年、最初の作品となった歴史長編小説「Antonina(アント二ナ)」を出版し作家デビューを果たします。
元々は法律と絵画を嗜好していたコリンズでしたが、1851年、素人芝居での共演をきっかけとしたディケンズとの出逢いによって強く作家を志すようになったといいます。そして以後生涯で20余りの長編と7冊の短編集を残しました。
彼の代表作としてよく知られているのは「白衣の女」と「月長石」ですが、「白衣の女」は謎とロマンスを融合させた作品で、自身の恋愛体験がモデルとなっていると言われています。
この作品には後の首相グラッドストーンが面白さのあまり予定の観劇会を欠席してしまったという興味深いエピソードも残っています。
またカッフ巡査部長が活躍するイギリス最初の長編ミステリー「月長石」は、T・S・エリオットをして「最初の最大にして最良の推理小説」と絶賛され、ドロシー・L・セイヤーズも「スケールの大きさ、物語の緻密な構成、多様でリアリティーあふれる人物描写においてこれまでに類を見ない素晴らしい作品」と高く評価しています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Antonina (アント二ナ) |
1850 | - | 最初の長編 歴史小説 |
2 | バジル | 1852 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選 1('00) ビー・アール・サーカス('99) |
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3 | Mr. Wray's Cash Box; or, The Mask and the Mystery (米 The Stolen Mask; or, The Mysterious Cash Box) |
- | ||
4 | Hide and Seek (隠れん坊) |
1854 | - | |
5 | ならず者の一生 | 1856 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選2('00) | |
6 | The Dead Secret (秘中の秘) |
1857 | - | |
7 | 白衣の女 | 1860 | 岩波文庫(上・中・下巻)('96) 国書刊行会(全2冊)('78) |
ロマンス小説 |
8 | ノー・ネーム | 1862 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選3・4・5('99) | |
9 | アーマデイル | 1866 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選6('00)・7・8('01) | |
10 | 夫と妻 | 1870 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選9('99)・10('00) | 娯楽小説 |
11 | Poor Miss Finch (哀れミス・フィンチ) |
1872 | - | |
12 | The New Magdalen (新マグダレン) |
1873 | - | |
13 | 法と淑女 | 1875 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選11('00) | 女性探偵ヴァレリア・ブリントンの活躍するミステリ |
14 | The Two Destinies (二つの運命) |
1876 | - | |
15 | 幽霊ホテル | 1878 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選2('00) | |
16 | The Fallen Leaves (落ち葉) |
1879 | - | |
17 | 毒婦の娘 | 1880 | 臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選12('99) | |
18 | The Black Robe (黒衣) |
1881 | - | |
19 | Heart and Science (心臓と科学) |
1883 | - | |
20 | I Say "No" (私はノーと言う) |
1884 | - | |
21 | The Evil Genius (疫病神) |
1886 | - | |
22 | The Guilty River (罪の河) |
- | ||
23 | The Legacy of Cain (カインの遺産) |
1889 | - | |
24 | Blind Love (盲目の愛) |
1890 | - | 遺作、ウォルター・ベザント(Sir Walter Besant)により完成 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Wreck of the Golden Mary (ゴールデン・メアリ号の難破) |
1856 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | After Dark (暗くなってから) |
1856 | - | ||
2 | The Queen of Hearts (ハートの女王) |
1859 | - | クイーンの定員3 | |
1 | Ourselves | - | |||
2 | Our Dilemma | - | |||
3 | Our Young Lady | - | |||
4 | Our Grand Project | - | |||
5 | 黒い小屋 | 1857 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
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6 | 家族の秘密 (家庭の秘密) |
岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) |
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7 | 夢の女 (夢のなかの女) (夢の魔女) |
1855 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 創元推理文庫「怪奇小説傑作集3」('69) 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
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8 | Brother Griffith's Story of Mad Monkton | - | |||
9 | Brother Morgan's Story of the Dead Hand 死人の手 (死者の手) |
溪水社「コリンズ短編小説集」('99) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
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10 | 人を呪わば (探偵志願) (手柄をあせって) |
1858 | 創元推理文庫100-1「世界短編傑作集1」('60) 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」 光文社文庫「クイーンの定員 I」('92) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
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11 | Brother Owen's Story of the Parson's Scruple | - | |||
12 | Brother Griffith's Story of a Plot in Private Life | - | |||
13 | Brother Morgan's Story of Fauntleroy | - | |||
14 | Brother Owen's Story of Anne Rodway | - | |||
15 | The Night | - | |||
16 | The Morning | - | |||
3 | My Miscellanies | 1863 | - | ||
4 | Miss or Mrs? (ミスかミセスか?) |
1873 | - | ||
5 | The Frozen Deep | 1874 | - | ||
6 | The Ghost's Touch and other stories | 1885 | - | ||
7 | Little Novels (小小説集) |
1887 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 夢の魔女・黒い小屋 | 1956 | 英宝社 英米名作ライブラリー | ||
1 | 恐怖のベッド | 1852 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 朝日ソノラマ文庫「悪夢の化身」('85) HMM'88.12 |
短編集1所収 | |
2 | グレンウィズ館の女主人 (グレンウィズ・グレンジの女) |
1859 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) | ||
3 | 黒い小屋 | 1857 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) |
短編集2所収 | |
4 | 死人の手 (死者の手) |
溪水社「コリンズ短編小説集」('99) | |||
5 | 夢の魔女 | 1855 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 創元推理文庫「怪奇小説傑作集3」('69) 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) |
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6 | 手柄をあせつて (探偵志願) (人を呪わば) |
1858 | 創元推理文庫100-1「世界短編傑作集1」('60) 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」 光文社文庫「クイーンの定員 I」('92) |
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2 | 夢の女・恐怖のベッド | 1997 | 岩波文庫 | ||
1 | 恐怖のベッド (恐怖の寝台) (恐るべき奇怪な寝台) |
1852 | 朝日ソノラマ文庫「悪夢の化身」('85) HMM'88.12 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
短編集1所収 | |
2 | 盗まれた手紙 | 1854 | 大和書房「ラヴレターにご用心」('84) | ||
3 | グレンウィズ館の女主人 (グレンウィズ・グレンジの女) |
1859 | 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) | ||
4 | 黒い小屋 | 1857 | 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
短編集2所収 | |
5 | 家族の秘密 | ||||
6 | 夢の女 (夢のなかの女) (夢の魔女) |
1855 | 創元推理文庫「怪奇小説傑作集3」('69) 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
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7 | 探偵志願 (人を呪わば) (手柄をあせって) |
1858 | 創元推理文庫100-1「世界短編傑作集1」('60) 光文社文庫「クイーンの定員 I」('92) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
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8 | 狂気の結婚 (狂人の結婚) |
1874 | 溪水社「コリンズ短編小説集」('99) | ||
3 | コリンズ短編小説集 | 1999 | 溪水社 | ||
1 | 黒い小屋 | 1857 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
短編集2所収 | |
2 | 死者の手 (死人の手) |
英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) | 短編集2所収 | ||
3 | 狂人の結婚 (狂気の結婚) |
1874 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) | ||
4 | 運命のゆりかご | ||||
5 | 悪漢フォントラロイの話 | ||||
6 | 夢の魔女 (夢の女) (夢のなかの女) |
1855 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) 創元推理文庫「怪奇小説傑作集3」('69) 英宝社「夢の魔女・黒い小屋」('56) |
短編集2所収 | |
7 | 船長とニンフ | ||||
8 | 家庭の秘密 (家族の秘密) |
1857 | 岩波文庫「夢の女・恐怖のベッド」('97) | 短編集2所収 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 不幸なアイザックの話 | 新青年'28新春増刊 | 原題不明 | |
2 | 油釜 | 新青年'38夏期増刊 | ||
3 | 無銘の墓 | 新青年'39特別増刊 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Lighthouse (灯台) |
1855 | - | |
2 | The Frozen Deep (凍結の深海) |
1857 | - | |
3 | The Woman in the White (白衣の女) |
1871 | - | 同名長編の劇化 |
4 | The New Magdalen (新マグダレン) |
1873 | - | 同名長編の劇化 |
5 | ミス・グウィルト | 1876 | - | 長編「アーマデイル」の劇化 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Last Stage Coachman (駅馬車最後の御者) |
1843 | - | エッセイ 活字になった最初の作品 |
2 | Memoirs of the Life of William Collins (ウィリアム・コリンズの生涯) |
1848 | - | 父親の伝記 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Detective and Mr. Dickens 文豪ディケンズと倒錯の館 |
1990 | 新潮文庫('01) | ウィリアム・J・パーマー著 ディケンズが探偵役でウィルキー・コリンズが語り手を務めるパスティーシュ・シリーズ |
2 | The Highwayman and Mr. Dickens | 1992 | - | |
3 | The Hoydens and Mr. Dickens | 1997 | - | |
4 | The Dons and Mr. Dickens | 2000 | - |
【参考】「バジル」(臨川書店 ウィルキー・コリンズ傑作選)
「月長石」(東京創元社 創元推理文庫)