本格推理とサスペンスを融合させた男性名義の女流作家
イギリスの女流本格作家。もっとも現役として活躍していた当時はアントニイ・ギルバートが女流作家ということは明らかにされていなかったらしく、一部の間では男性作家だと思われていたこともあったそうです。
俳優の父のもとに生まれ、幼い頃から作家を志していましたが、15歳で家庭事情のため学校の中退を余儀なくされ、タイピストとして働きはじめます。その後は赤十字、厚生省などに勤めながら、その傍らで小説の勉強にも励んでいたといいます。
そして1925年、最初は”J・キルメニー・キース”という名前で作家デビューを果たしますが、周囲の評価はなぜか今ひとつ芳しくなかったといいます。
そこで1927年、今度は”アントニー・ギルバート”という男性作家を思わせる名義を用いて長編「フレインの悲劇」を発表した所、今度は大好評を博し、その後はシリーズ探偵であるアーサー・クルック弁護士を主人公とする作品を中心に創作を続け、やがてアガサ・クリスティー、ナイオ・マーシュ、E・C・R・ロラックといった大物たちとともに、イギリスの大手出版社・コリンズ社の〈クライムクラブ叢書〉の看板作家として位置づけられる存在にまでなったのでした。
なお”アントニイ・ギルバート”という男性名義を使ったのは、その当時は女性が探偵小説を書くということ自体が一般的ではなかったため、男性名義で発表した方が女性名義で発表するよりも売り上げが伸びるであろうと考えたからと言われており、事実その通りになった訳ですから先見の明があったといえるでしょう。
彼女の作品は、犯人・トリック当てなどの謎解き要素に、登場人物たちの克明な心理描写とサスペンスの要素が巧みに織り交ぜられていて、両者を上手く融合させることに成功しています。そのため「一度読み出すと続きが気になってやめられなくなる」という評価がなされることが多いようです。
ミステリ関係ではアーサー・クルック弁護士のシリーズを中心に全部で69の長編といくつかの短編を発表しており、それ以外にアン・メレディス名義で発表した普通小説が20冊ほどあります。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Tragedy at Freyne (フレインの問題) |
1927 | - | アントニー・ギルバート名義、最初の長編 |
2 | The Murder of Mrs. Davenport | 1928 | - | |
3 | The Mystery of the Open Window | 1929 | - | |
4 | Death at Four Corners | - | ||
5 | The Night of the Fog | 1930 | - | |
6 | The Body on the Beam | 1932 | - | |
7 | The Long Shadow | - | ||
8 | The Musical Comedy Crime | 1933 | - | |
9 | An Old Lady Dies | 1934 | - | |
10 | The Man Who Wasn't There | 1935 | - | ムッシュ・デュピュイとの共演 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Man in Button Boots | 1934 | - | |
2 | The Man Who Wasn't There | 1935 | - | スコット・エジャートンとの共演 |
3 | The Man Who Was Too Clerer | 1936 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Man Who Was London | 1925 | - | J・キルメニー・キース(J. Kilmeny Keith)名義 |
2 | The Sword of Harequin | 1927 | - | |
3 | The Case Against Andrew Fane | 1931 | - | |
4 | Portrait of a Murderer | 1933 | - | アン・メレディス名義 |
5 | Death in Fancy Dress | - | ||
6 | There's Always Tomorrow (米 Home Is the Heart) |
1941 | - | アン・メレディス名義 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 弔花はご辞退 | 1953 | 早川文庫113-1「殺意の海辺」 HMM'85.5 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 幸運の馬蹄 (幸運の蹄鉄) |
1939 | 早川文庫149-1「敗者ばかりの日」('88) EQMM'57.10 |
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2 | わたしの目の黒いうちは (屍を越えて) |
1951 | 創元推理文庫104-24「ミニ・ミステリ傑作選」('75) EQMM'59.10 |
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3 | Remember Madame Clementine マダム・クレメンタインを忘れない |
1953 | HMM'04.6 | |
4 | 血が知らせる | 1958 | 東京創元社「アメリカ探偵作家クラブ傑作選1」('61) | |
5 | いたちごっこ | 1965 | 光文社文庫「世界ベスト・ミステリー50選/下」('94) EQ'91.11(84) |
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6 | Cat Among the Pigeons 鳩の中の猫 |
1966 | HMM'67.1 | |
7 | Sleep Is the Enemy 眠ってはいけない |
HMM'73.1 | ||
8 | The Quiet Man 静かな男 |
1969 | HMM'69.10 | |
9 | Door to the Different World 別世界への扉 |
1970 | HMM'72.2 |
すべてアン・メレディス名義
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Coward | 1934 | - | |
2 | The Gambler | 1937 | - | |
3 | The Showman | 1938 | - | |
4 | The Stranger | 1939 | - | |
5 | The Adeventurer | 1940 | - | |
6 | The Family Man | 1942 | - | |
7 | Curtain, Mr. Greatheart | 1943 | - | |
8 | The Beautiful Miss Burroughes | 1945 | - | |
9 | The Rich Woman | 1947 | - | |
10 | The Sisters | 1948 | - | |
11 | The Draper of Edgecumbe (米 The Unknown Path) |
1950 | - | |
12 | A Fig for Virture | 1951 | - | |
13 | Call Back Yesterday | 1952 | - | |
14 | The Innocent Bride | 1954 | - | |
15 | The Day of the Miracle | 1955 | - | |
16 | Impetuous Heart | 1956 | - | |
17 | Christine | 1957 | - | |
18 | A Man in the Family | 1959 | - | |
19 | The Wise Child | 1960 | - | |
20 | Up Goes the Donkey | 1962 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Mrs. Boot's Legacy | 1946 | - | アン・メレディス名義 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Three-a-Penny | 1940 | - | アン・メレディス名義 |