H・P・ラヴクラフトの影響を受け出版社「アーカム・ハウス」を設立

USA オーガスト・ダーレス
(August William Derleth)
〔別名 タリー・メイスン (Tally Mason)〕

ソーラー・ポンズの事件簿
「ソーラー・ポンズの事件簿」
(東京創元社)

 アメリカの小説家。ウィスコンシン州ソーク・シティに生まれ、生涯を故郷で過ごし、多くの筆名を使い分けてホラー・SF・ミステリーなどの小説をはじめ、詩・評論・伝記・児童文学など幅広い分野で100冊を超える著作を残しました。また編集者として数多くのアンソロジーの編纂や出版事業、雑誌の編集にも携わっています。

 13歳で小説を書き始め、15歳の時にはもう作品を実際に出版社から出版してたらしく、17歳で〈ウィアード・テールズ〉に登場し、心酔するホラー小説界の巨匠H・P・ラヴクラフトの影響から怪奇小説の執筆にのめり込みます。
  そして1939年にはドナルド・ワンドレイとともに出版社の〈アーカム・ハウス〉を設立し、ラヴクラフトの埋もれた作品の発掘をはじめ、怪奇小説を専門に次々と刊行してホラー小説界の発展に貢献しました。

 ミステリの世界では、コナン・ドイルの息子と黄金時代の巨匠ジョン・ディクスン・カーの合作短編集「シャーロック・ホームズの功績」や短編の名手として知られたロバート・L・フィッシュの〈シュロック・ホームズ〉と並ぶ、ホームズの贋作ものの代表格”ソーラー・ポンズ”シリーズの作者として知られていますが、そのきっかけというのは、次のようなものでした。

淋しい場所
「淋しい場所」
(1962年)
(国書刊行会)

 元々シャーロック・ホームズものの大ファンだったというダーレスがホームズ作品をすべて読了し、もっと読んでみたいとある日ドイルにもうホームズものは書かないのかという旨の手紙を出します。

 するとドイルからは「もう書くことはない」との返事が帰って来たらしく、それなら自分が続きを書こうと思い立ち生み出したのが、ホームズをイメージして造られたソーラー・ポンズというキャラクターでした。

 そのためソーラー・ポンズはホームズの生き写しと言われるほどよく似ており、当然舞台もイギリスなのですが、当のダーレスは生涯を母国アメリカのウィスコンシン州で過ごし、驚くことに一度もロンドンを訪れることなくこの作品を書き上げたといいます。

 また他にも故郷のウィスコンシン州を舞台にした、郷土色豊かな詩や歴史小説でも高い評価を得ています。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、ウィスコンシン州ソーク・シティ
学歴
ウィスコンシン大学卒
生没
1909年2月24日~1971年7月4日
作家としての経歴
1926
15歳で〈ウィアード・テールズ〉誌の5月号にファンタジー小説「蝙蝠の鐘楼」が掲載される
以後同誌に30年近くに渡ってファンタジーやホラー作品を発表している
1928
19歳の時にポンズもの「The Adventure of the Black Narcissus」を発表
シリーズ探偵
私立探偵ソーラー・ポンズ (Solar Pons)
田舎町の判事エフレイム・ピーボティ・ぺック(10作)
代表作
「丸い部屋」「アルミの松葉杖」
「ファヴァシャム教授の失踪」

■著作リスト■

1 ソーラー・ポンズ登場作品リスト

2 その他の主な作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Man on All Fours 1934 -
2 Murder Stalks the Wakely Family
(英 Death Stalks the Wakely Family)
-
3 Sign of Fear -
4 Three Who Died 1935 -
5 Sentence Deferred 1939 -
6 The Narracong Riddle 1940 -
7 The Seven Who Waited 1943 -
8 Mischief in the Lane 1944 -
9 No Future for Luana 1945 -
10 Death by Design 1953 -
11 Fell Purpose -
12 The Three Straw Men 1970 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Consider Your Verdict 1937 - タリー・メイスン名義
2 淋しい場所 1962 国書刊行会 アーカム・ハウス叢書('87) ミステリ含む怪奇小説集
1 淋しい場所 1948 HMM'67.8
早川文庫NV「幻想と怪奇1」('75)
角川文庫「幻想と怪奇3/残酷なファンタジー」('75)
2 パイクマンの墓 1946
3 キングスリッジ214番
(キングスリッチ214)
1949 HMM'72.5
4 黒檀の杖 1953
5 シデムシの歌
(しでむしの唄)
HMM'72.7
角川文庫「怪奇と幻想2/超自然と怪物」('75)
岩崎書店 恐怖と怪奇名作集「シデムシの歌」('98)
6 閉まる扉 1950
7 暗い部屋
(ある家のある部屋)
HMM'73.7
8 ポッツの勝利
9 黄昏に遊ぶ 1949
10 レコード録音機 1953
11 へクター 1951
12 仮面舞踏会 1952 国書刊行会 書物の王国12「吸血鬼」('98)
13 もうひとりの子供
(7人目の子供)
1950 早川文庫NV「幻想と怪奇3」('78)
奇想天外'74.7
14 森の空地 1954
15 フォークナー氏のハロウィーン
(フォークナー氏のハローウィン)
1959 HMM'75.4
16 幽霊屋敷
(貸別荘 幽霊も出ます)
1962 HMM'68.7
17 図書館の殺人鬼 1949
18 黒い髪の少年
(ダーク・ボーイ)
1957 HMM'68.8
3 Harrigan's File 1975 -
4 Dwellers in Darkness 1976 -

【その他の邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 イーモラの晩餐 1926 創元推理文庫169-3「ディナーで殺人を/上」('98)
2 The Lylac Bush
ライラックの茂み
1930 講談社文庫「世界ショートショート傑作選2」('79)
奇想天外'74.10
3 The Man On B-17
B17鉄橋の男
1950 HMM'82.9
4 The Ghost
幽霊
1966 河出文庫「恐怖通信」('85)

【編書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Dark Mind, Dark Heart
漆黒の霊魂
1962 論創社 ダーク・ファンタジー・コレクション5('07)

【参考】「ソーラー・ポンズの事件簿」(東京創元社 創元推理文庫)
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