現代警察小説の旗手

UK イアン・ランキン
(Ian Rankin)
〔別名 ジャック・ハーヴェイ (Jack Harvey)〕

紐と十字架
「紐と十字架」
(1987年)
(早川書房)

 現代イギリス警察小説の代表作家で、〈フロスト警部〉シリーズのR・D・ウィングフィールドらと並び、現在もっとも期待されている注目の若手ミステリー作家の一人です。

 スコットランドに生まれ、スコットランドのエジンバラ大学を卒業後、しばらくはブドウ栽培やパンクロックのミュージシャン、そしてジャーナリストなど、様々な職業を転々としていましたが、1986年にそれまで散発的に発表していた詩や短編をベースにして書かれた普通小説「フラッド」で作家デビューを果たします。

 翌1987年に発表された長編「紐と十字架」からは、スコットランドのエジンバラ市を舞台に、リーヴァス警部を主人公とする警察小説をシリーズとして書くようになり、1997年に発表された同シリーズの長編「黒と青」では、主人公の心理描写を中心に据え、それに過去と現在の犯罪を交錯させた重厚な作りでイギリス推理作家協会(CWA)賞のゴールド・ダガー賞を受賞するという栄誉に輝きます。

 また2004年にも同シリーズの長編「甦る男」でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀長編賞を受賞しており、名実ともに一流作家としての仲間入りを果たしています。

黒と青
「黒と青」
(1997年)
(早川書房)

 リーバス警部は独走型で自分がとことん満足するまで捜査を止めない、ルール破りのアメリカ型のハードボイルド探偵の流れも受け継いでいますが、この一匹狼的な性格は著者のダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーなどの読書体験に基づいているそうです。
 そしてこれとイギリスの伝統的な作風を巧みにミックスすることでバランスを取り、彼独特の世界観が作り上げられています。

 またリーバス警部シリーズにおいては、作品を通して権力の腐敗や政治家や警察組織の堕落、企業の独善や暗黒社会が生々しく描き出されており、社会派の色合いの濃い、視野の広い小説に仕上がっています。

 他にもジャック・ハーヴェイ名義で政治スリラー小説や冒険小説なども発表しています。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、スコットランドのファイフ生まれ
学歴
エジンバラ大学卒、同大学博士課程を中退
生没
1960年4月28日~
作家としての経歴
1986
普通小説「The Flood」でデビュー
1987
長編「紐と十字架」でリーバス警部が初登場
1997
リーバス警部ものの長編「黒と青」でイギリス推理作家協会(CWA)賞のゴールド・ダガー賞を受賞。一躍脚光を浴びる
2004
2003年発表のリーバス警部ものの長編「甦る男」でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀長編賞を受賞
2005
イギリス推理作家協会(CWA)賞のダイヤモンド・ダガー賞を受賞
シリーズ探偵
ジョン・リーバス警部 (John Rebus)
代表作
「黒と青」
「甦る男」

■関連リンク■

1 イアン・ランキン公式サイト


■著作リスト■

1 ジョン・リーバス警部登場作品リスト

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Flood 1986 - デビュー作
普通小説
2 Watchman 1988 -
3 Westwind 1990 -
4 Doors Open 2008 -
5 A Cool Head 2009 - Quick Readsシリーズ
6 The Complaints -

【ジャック・ハーヴェイ名義の長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Witch Hunt 1993 -
2 Bleeding Hearts 1994 -
3 Bloodhunt 1995 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Herbert in Motion and Other Stories 1997 - リーバスもの1編他
全4編
1 Herbert in Motion
動いているハーバート
1996 扶桑社ミステリー「双生児」('00)
HMM'97.12
2 The Serpent's Back 1995 -
3 N-79 1997 -
2 貧者の晩餐会 2002 早川文庫362-2 現代短篇の名手たち2
HPB1748
リーバスもの7編他
全21編(邦訳文庫版は19編)
1 誰かがエディーに会いにきた 1994
2 深い穴 扶桑社ミステリー「現代ミステリーの収獲3 ロスト・コースト」('98)
3 自然淘汰 1996
4 会計の原則 1995 HMM'04.1
5 唯一ほんもののコメディアン 2000
6 動いているハーバート 1996 扶桑社ミステリー「双生児」('00)
HMM'97.12
再収録
7 グリマー 1998
8 恋と博打 2000
9 不快なビデオ 1993
10 広い視点 1996
11 Unknown Pleasure
新しい快楽
1998 HMM'00.1 文庫版は未収録
12 自白 2000
13 吊るされた男 1999 HMM'04.1
14 The Serpent's Back
大蛇の背中
1995 文庫版は未収録
3 Complete Short Stories 2005 - 「A Good Hanging and Other Stories」と2の合本にリーバスものの「Atonement」を収録
4 One City 2006 - アレグザンダー・マコール・スミス、アーヴィン・ウェルシュとの共著

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Soft Spot
ソフト・スポット
2005 HMM'05.10

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Rebus' Scotland 2005 - ノンフィクション
2 Jackie Leven Said - Jackie Levenとの共著
ノンフィクション
3 Dark Entries 2009 - Werther Dell'Ederaとの共著
グラフィック・ノヴェル
4 ジョン・リーバス 早川書房「ヒーローの作り方─ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話」('10) オットー・ペンズラー編
5 私がミステリを書き続ける理由 HMM'03.5

【参考】「貧者の晩餐会」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
「黒と青」(早川書房 ハヤカワポケットミステリ)
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