イギリスの女流本格派。アイルランドに生まれ第二次世界大戦中に17歳にして空軍補助部隊のレーダーを扱う部署に属し、退役するときは准尉まで昇進します。
この頃小説を書くことを覚えたそうで、慰安演芸会用のレビューの台本を書いたのを皮切りに、英国空軍のために、レーダーに関する記録映画の台本を書く許可をとりますが、この計画は結局アーサー・ランク・プロによって引き継がれました。
その後「ナイル殺人事件」を初めとするクリスティー映画でポアロ役を演じたピーター・ユスチノフの助監督を務めたり、1953年から5年間、ファッション誌「ヴォーグ」のロンドン支社の副編集長として活躍したりと華々しい経歴を終えた後、1959年にミステリ作家としてデビュー。
処女作となった「死人はスキーをしない」は発表するや、たちまち評判を呼び、〈ミステリーの新女王〉と評されるようになります。
そしてその後も第1作で登場したヘンリ・ティベット警視とその妻エミーのおしどり夫婦が活躍するシリーズを中心に作品を発表し、人気を集めました。
モイーズは2回結婚していますが最初が写真家、その後国際裁判所判事でした。そして夫の仕事の都合上ヘーグの国際司法裁判所やIMFのあるスイスやオランダ、ワシントンDCで暮らし、夫の退職後はカリブ海の小さな島、英領ヴァージン・ゴダードに移住します。
スキーとセーリング、旅行が趣味でワイン好き、また探偵小説もアリンガム、マーシュ、クリスピンなどを愛読していたそうです。
モイーズ作品の特徴は本格推理小説としても優れていますが、こういった各地を転々とした彼女の経験をもとに作品ごとに魅力的な舞台設定がなされ、その情景描写や、そこに集まる人々の人物描写にも優れているところにも魅力がうかがえます。
全部で19の長編と1冊の短編集、1冊のエッセイを発表していますが、日本での人気も高く、全ての長編が早川書房のハヤカワ・ポケット・ミステリから刊行されています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Who killed Father christmas and Other Unreasona | 1996 | - | ||
1 | ソロモンとミンク | 1961 | EQ'80.3(14) | ||
2 | A Suitable Revenge (The Revenge) |
- | |||
3 | A Man Without Papers | - | |||
4 | Love at Second Sight ふた目惚れ |
HMM'88.12 | |||
5 | The Most Hated Man in London | - | |||
6 | A Young Man Called Smith スミスという名の青年 |
1986 | HMM'87.4 | ||
7 | Who Killed Father Christmas ? サンタを殺したのは誰? |
1980 | 早川文庫「新・読者への挑戦」('83) HMM'81.1 |
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8 | Beyond the Reef | 1982 | - | ||
9 | A Whispering in the Reeds | - | |||
10 | A Matter of Succession | - | |||
11 | Hit and Run 轢き逃げ |
EQ'95.9 | |||
12 | The Honest Blackmailer 正直な恐喝屋 |
EQ'97.9 | |||
13 | 小列車強盗 | 光文社文庫「クリスマスに捧げるミステリー」('93) EQ'84.1 |
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14 | A Lonely Profession 孤独な職業 |
1983 | EQ'83.5 | ||
15 | Faces of Betrayal | - | |||
16 | 替え玉 | 光文社文庫「ネコ好きに捧げるミステリー」('90) EQ'97.11 EQ'90.3(74) |
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17 | Flowers of the Dead 死者の花 |
1984 | EQ'92.1 | ||
18 | 懺悔 | 1989 | EQ'89.7(70) | ||
19 | すべてを持っていた男 | 1990 | HPB1578「13のダイヤモンド」 HMM'91.10 |
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20 | Family Christmas ファミリー・クリスマス |
1991 | 扶桑社ミステリー「サンタクロースにご用心」('91) HMM'91.10 |
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21 | The Holly Wreath 娘がさらわれた |
1965 | HMM'85.1-2 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Halter=Slelter | 1968 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 猫と話しませんか? | 1981 | 晶文社('79) | エッセイ |
2 | 警官の妻たち | HMM'85.2 | エッセイ |
【参考】「死人はスキーをしない」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)