後に純文学の分野でも活躍
純文学の分野でも活躍したアメリカの推理小説家で、日本人スパイで天皇の密偵であるミスター・モトを主人公とする一連のシリーズでミステリー界に名前を残しています。
ハーヴァード大学卒業後、しばらく〈ボストン・トランスクリプト〉誌に勤務しますが、第一次世界大戦が勃発すると兵役の任につき、フランス戦線に赴きます。
ちなみにこの際の経験は「H・M・プラム」や「命みじかし」といった作品に活かされているそうです。
除隊後は〈ニューヨーク・トリビューン〉紙に約1年間勤務し、後に広告会社に転職してコピーライターとして活躍する傍ら執筆活動にも取り組むようになり、雑誌に大衆向けの作品を投稿して次第に作家としての地位を確立していきました。
やがて1935年になると日本人のスパイ、ミスター・モトの登場するシリーズ第1作「ミカドのミスター・モト(ノー・ヒーロー)」を発表。「ソーリー」を連発する慇懃無礼なモトのキャラクターをベースに、米ソ間の緊張関係を鮮明に描いたこの作品はたちまち評判を集め、映画化もされてたちまち人気シリーズとして定着しました。
この〈ミスター・モト〉シリーズは1938年の代表作「天皇の密偵」なども含めて全部で計6作品が残されています。
もっとも本人自身はこういったミステリー小説よりもどちらかというと純文学を志向していたようで、1937年にボストンの旧家に育った実業家の一生を伝記の形を借りて描いた「故ジョージ・アプリー(The Late George Apley)」という長編でピューリッツァー賞を受賞したのを契機に純文学の分野でも認められるようになると、以後は大衆小説で培った穏やかな風刺と巧みな話術を武器に数多くの純文学作品を書き残しています。
ちなみに「故ジョージ・アプリー」は1947年にロナルド・コールマン主演で「ボストン物語」の題名で映画化もされていますが、他にも「将軍ベッドに死す(Top Secret Affair)」(1957年)などの映画化作品もあるらしく、英米ではどの作品もベストセラーになるなど大変な人気作家だったようです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Ming Yellow | 1935 | - | |
2 | Don't Ask Questions | 1941 | - | |
3 | It's Loaded, Mr. Bauer | 1949 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Unspeakable Gentleman | 1922 | - | マーカンド最初の作品 |
2 | Four of a Kind | 1923 | - | |
3 | Pozzi of Perugia | 1924 | - | |
4 | The Black Cargo | 1925 | - | |
5 | Lord Timothy Dexter | - | ||
6 | Do Tell Me, Doctor Johnson | 1928 | - | |
7 | Warning Hill | 1930 | - | |
8 | Haven's End | 1933 | - | |
9 | Winner Take All | 1934 | - | |
10 | The Late George Apley (故ジョージ・アプリー) |
1937 | - | ピューリッツァー賞('37) 映画化「ボストン物語」('47) |
11 | Castle Sinister | 1938 | - | |
12 | Wickford Point (ウィックフォード・ポイント) |
1939 | - | |
13 | H. M. Pulham, Esquire (Gone Tomorrow) (H・M・プラム) |
1941 | - | |
14 | So Little Time (命みじかし) |
1943 | - | |
15 | Repent in Haste | 1945 | - | |
16 | B. F.'s Daughter B・F・の娘 |
1946 | - | |
17 | Point of No Return | 1949 | - | |
18 | Melville Goodwin, U S A | 1951 | - | |
19 | Thirty Years | 1954 | - | |
20 | ウイリス・ウェイド物語 (光と影) |
1955 | 荒地出版社 現代アメリカ文学全集12('58) 新鋭社('56) |
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21 | Life at Happy Knoll (ハッピー・ノーの生活) |
1957 | - | |
22 | Women and Thomas Harrow | 1958 | - | |
23 | Timothy Dexter, Revisited | 1960 | - | マーカンド最後の作品 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 高潮 | 1932 | 講談社文庫「世界スパイ小説傑作選3」('79) | |
2 | Goodbye, Piccadilly さよなら、ピカデリー |
1955 | EQMM'64.12 | |
3 | スパイ対スパイ | 学習研究社「中学二年コース3月号第三附録」('65) | 原題不明 サスペンス小説 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Guide to the Gospels | 1970 | - |
【参考】「天皇の密偵 ミスター・モトの冒険」(角川書店 角川文庫)