アメリカの本格作家。手がかり索引などの趣向で知られるアメリカ黄金時代の作家C・D・キングと同じニューヨークで生まれ、同じくイェール大学を卒業。
その後はアメリカ軍に入隊して騎兵としてメキシコ国境線の警備として活躍し、第一次世界大戦の際にはフランスに赴いて砲兵として活躍します。
大戦が終わると貨物船やタンカーなどの無線技師を務めたりブラジルで沈没船の引き揚げ作業に従事するなど海上生活をしばらく続けていましたが、やがてアメリカに戻ると、帰国後は雑誌に短編を投稿するようになります。
ミステリー作家としては1924年に短編「Battling Beaucaire」をパルプ雑誌〈フリンズ〉に掲載したのを皮切りに、1927年にSFタッチの「Mystery De Luxe」で長編デビューを果たします。
そして1929年にカナダに移住した元パリ警視庁刑事の息子であるヴァルクール警部補の活躍する第1作「Murder by the Clock」がダブルデイ社のクライム・クラブ叢書より刊行されると、ヘイクラフトとクイーン選の名作表にも挙げられるほどの好評を博して、一躍人気作家の仲間入りを果たします。
以後も順調に作品を発表し続けますが、中でも自らの海上生活の経験を活かした「緯度殺人事件」や「深海の殺人」など、全部で11編が書かれたヴァルクールものは批評家の間では評価は芳しくなかったものの、大衆からは広く支持されたそうで、それらの作品のいくつかは映画化もされているようです。
また1946年に刊行されたノンシリーズの長編「青髯の妻」は、サスペンス色とゴシックロマンの色合い濃いストーリー展開の中にも計算し尽くされたプロットが織り交ぜられていて、こちらも映画化もされて絶大な支持を集めたといいます。
第二次世界大戦以降は、パトリック・クェンティンやヘレン・マクロイなどと同様に本格からサスペンス色の濃い作風へと徐々に変化していきますが、その一方で短編作品にも力を入れ始め、その中でも〈エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン(EQMM)〉など発表した作品を集めた短編集「不思議の国の悪意」は、アメリカ黄金時代の巨匠エラリー・クイーンにより絶賛を持って迎えられて〈クイーンの定員〉にも選ばれています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Mystery De Luxe (英 Murder De Luxe) |
1927 | - | キングのデビュー長編 |
2 | The Fatal Kiss Mystery | 1928 | - | |
3 | Hokiday Homicide | 1940 | - | |
4 | Design in Evil | 1942 | - | |
5 | A Variety of Weapons | 1943 | - | |
6 | The Case of the Dowager's Etchings (Never Walk Alone) |
1944 | - | |
7 | The Deadly Dove | 1945 | - | |
8 | 青髯の妻 (ドアのかげの秘密) |
1946 | 新樹社 ぶらっく選書3('50) 別冊宝石113('62) |
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9 | Lethal Lady | 1947 | - | |
10 | The Case of the Redoubled-Cross | 1949 | - | |
11 | Duenna to a Murder | 1951 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Diagnosis: Murder (診断:殺人) |
1941 | - | コリン・スター博士 | |
1 | The Case of the Radiana Refugee | - | |||
2 | The Case of the Three Buleful Brothers | - | |||
3 | The Case of the Prodigal Bridegroom | - | |||
4 | 死体は物語る | HMM'79.11 | |||
5 | The Case of the Imperious Invalid | - | |||
6 | The Case of the Buttoned Collar (Three Paths to Choose) |
- | |||
7 | The Case of the Lonely Cadies (A Lonely, Lovely Lady) |
- | |||
2 | 不思議の国の悪意 | 1958 | 創元推理文庫191-3 | クイーンの定員117 | |
1 | 不思議の国の悪意 (不思議の国の犯罪) |
EQMM'58.10 | |||
2 | マイアミプレスの特ダネ (マイアミ各紙乞転載) |
光文社「クイーンの定員 IV」('92) | |||
3 | 淵の死体 (水中の死体) |
1954 | 早川書房「復刻エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン No.1-3」('95) EQMM'56.8 |
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4 | 思い出のために | ||||
5 | 死にたいやつは死なせろ | ||||
6 | 承認せよ─さもなくば、死ね (イエスか、死か) |
EQMM'60.12 | |||
7 | ロックピットの死体 | ||||
8 | 黄泉の川の霊薬 | ||||
3 | The Steps to Murder | 1960 | - | ||
1 | The Steps to Murder | - | スタッフ・ドリスコール | ||
2 | On the Patron Saint the Impossible 聖ユダのご利益 |
HMM'96.2 | |||
3 | Murder on Her Mind | - | |||
4 | A Little Cloud...Like a Man's Hand | - | ベン・コール警部補 | ||
5 | Rendez-vous With Death | - | |||
6 | A Boderline Case | - | |||
7 | The Tigress of the Chateau Plage | - | |||
4 | The Faces of Danger | 1964 | - | ||
1 | The Faces of Danger | - | スタッフ・ドリスコール | ||
2 | Gift for the Bride 花嫁への贈り物 |
EQMM'62.9 | |||
3 | Each Drop Guranteed | - | |||
4 | The Caesar Complex | - | |||
5 | Happy Ending | - | |||
6 | The Gods, to Avenge 神の復讐 |
HMM'68.11 | スタッフ・ドリスコール |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | You Must Ride with the Wind 風に乗る |
EQMM'61.6 | ||
2 | The Y-Shaped Scar Y字型の傷痕 |
EQMM'63.9 |
【参考】「不変の神の事件」(東京創元社 創元推理文庫)