〈悪徳警官〉もので有名な社会派の犯罪小説作家
アメリカの推理小説家。シカゴに生まれ、大学在学中に第二次世界大戦に参戦し、伍長にまで昇進。復員後は〈フィラデルフィア・イヴニング・ブレティン〉紙の記者を務め、その傍らにパルプ・マガジンにミステリーやSF小説を寄稿します。
1948年になると同じ作家のモーリン・デイリー(Maureen McGivern)と結婚し、同年に第1長編の「囁く死体」を発表。殺人の濡れ衣を着せられた雑誌編集長の必死の捜査活動を描いたいわゆる〈巻き込まれ〉型のサスペンス小説で、評論家のジェイムズ・サンドーらから高い評価を受けます。
そして1951年に発表した長編「殺人のためのバッジ」では、ギャングから金銭を絞り取る悪徳警官ものを登場させ、これがアメリカ中にセンセーションを巻き起こします。
その後も長編「ビッグ・ヒート」、「悪徳警官」、そして「最悪のとき」と次々と悪徳警官を主人公に据えた犯罪小説を発表。警察権力の腐敗構造を生々しく描き出す一方で、社会性を前面に押し出し、読む者に一石を投じる社会派のミステリーとして高い評価を勝ち得ています。
他にもこのような社会性を前面に打ち出した作品として「緊急深夜版」があり、こちらは市長選挙に絡む市政の不敗を激しい怒りとともに克明に描き出し評判を集めました。
またラジオやテレビの仕事も数多くこなし、ハリウッドでシナリオライターとして数多くの作品を手がけています。
晩年に入ると普通小説やサイコ・サスペンスなどにも挑戦し、未完の長編「名誉の問題」を残して亡くなりますが、この作品は夫人の手によって完成されました。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 囁く死体 | 1948 | HPB318 | |
2 | 最後の審判 | 1949 | 創元推理文庫134-1 | |
3 | 虚栄の女 | 1950 | 創元推理文庫134-2 | |
4 | 殺人のためのバッジ | 1951 | 早川文庫29-1 HPB588 早川書房 世界ミステリ全集10('73) |
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5 | ゆがんだ罠 | 1952 | 創元推理文庫134-3 | |
6 | ビッグ・ヒート | 1953 | 創元推理文庫134-4 | |
7 | 恐怖の限界 | 創元推理文庫134-5 | ||
8 | 悪徳警官 | 1954 | 創元推理文庫134-6 東京創元社 世界名作推理小説大系22('61) |
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9 | 最悪のとき | 1955 | 創元推理文庫134-7 東京創元社 現代推理小説全集2('57) |
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10 | ファイル7 | 1956 | 早川文庫29-2 HPB680 |
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11 | 緊急深夜版 | 1957 | 早川文庫29-4 HPB469 |
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12 | 明日に賭ける | 早川文庫29-3 HPB510 |
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13 | けものの街 | 1959 | HPB769 | |
14 | 七つの欺瞞 | 1960 | HPB747 | |
15 | The Road to the Snail | 1961 | - | |
16 | A Pride of Place | 1962 | - | |
17 | A Choice of Assassins | 1963 | - | |
18 | The Caper of the Golden Bulls | 1966 | - | |
19 | Lie Down, I Want to Talk to You | 1967 | - | |
20 | Caprifoil | 1972 | - | |
21 | Reprisal | 1973 | - | |
22 | ジャグラー ニュ-ヨ-ク25時 (夜の曲芸師) |
1975 | 早川書房('80) HMM'78.11-'79.2 |
映画化 サイコスリラー |
23 | 1944年の戦士 | 1979 | 早川書房('80) | 戦記物 |
24 | The Seeing | 1980 | - | 妻モーリン・マッギヴァーンとの合作 |
25 | Summitt | 1982 | - | |
26 | War Games | 1984 | - | |
27 | A Matter of Honor (名誉の問題) |
- | 未完、妻モーリン・マッギヴァーンの手により完成 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 金髪女は若死する | 1952 | HPB306 | ハードボイルド |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 高速道路の殺人者 | 1961 | HPB782 | ||
1 | 高速道路の殺人者 | EQMM'63.3 | |||
2 | 祈らずとも | ||||
3 | ウィリーじいさん (スター・ホテルでみたこと) |
1953 | 早川文庫80-3「眠れぬ夜の愉しみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選3」('82) マンハント'59.1 |
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4 | デュヴァル氏のレコード | ||||
5 | ベルリンの失踪 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Peter Fereney's Death Cell 死刑囚監房 |
1941 | 講談社文庫「世界ショートショート傑作選1」('78) 奇想天外'74.2 |
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2 | Manchu Terror 上海の恐怖 |
1946 | HMM'74.1 | |
3 | Death Comes Gift-Wrapped 死の贈り物 |
1948 | HMM'05.6 | |
4 | The Galaxy Raiders 星団の侵入者 |
1950 | 誠文堂新光社「アメージング・ストーリーズ7」('50) | |
5 | Death Rode the Rails 死は鉄路に乗って |
1958 | HMM'71.1 | |
6 | Ordeal in Darkness 暗黒の試練 |
1961 | EQMM'62.4 | |
7 | The Last Word 最後の一言 |
1963 | EQMM'63.5 | |
8 | The Walking Corps (The Dead Walk) 歩く死体 (あるく死体) |
HMM'70.5 EQMM'62.3 |
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9 | Glory and the Beast 優雅なる生贄 |
ハードボイルドマガジン'63.12 | ||
10 | 金髪の小娘 | 探偵倶楽部'58.7増刊 | 原題不明 |
【参考】「殺人のためのバッジ」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)