フランシス・クレイン
(Frances Kirkwood Crane)

　アメリカの女性小説家。ヨーロッパ滞在中の20代の頃から執筆活動を開始し、最初は雑誌に短編を中心に発表していましたが、やがて〈ニューヨーカー〉誌に発表した「クレイグ・ヒッグズ夫人」という風刺文が人気を集めたのをきっかけとしてミステリ作家に転身。

　1941年発表の「The Turquoise Shop（トルコ玉を売る店）」からは夫婦で探偵役を務めるおしどり探偵パット＆ジーン・アボットを登場させ、このシリーズでアメリカ国内では人気を集めました。

　この〈アボット夫妻〉シリーズは１作ごとに舞台設定が変わり、しかも文体までその土地に応じて変化する凝った趣向と、ジョン・Ｄ・マクドナルドのトラヴィス・マッギー・シリーズのように原題のタイトルにはすべて色の名前がついている所に大きな特徴があります。

　また同じアメリカの女流作家メアリ・ロバーツ・ラインハートやミニョン・Ｇ・エバーハートらのいわゆる〈H.I.B.K.（もし知っていさえしたら）〉派の流れも汲んでいて、陽気な妻ジーンのおしゃべりで展開していくカラフルでロマンティックな長編が多いのが特徴です。