本格色の濃いハードボイルド作家

USA ジョナサン・ラティマー
(Jonathan Wyatt Latimer)
〔別名 ピーター・コフィン (Peter Coffin)〕

処刑6日前
「処刑6日前」
(1935年)
(東京創元社)

 アメリカの推理小説家、映画脚本家。レイモンド・チャンドラーやジェームズ・M・ケインとともにハードボイルド創成期にダシール・ハメットの影響を受けて作品を発表し、ジャンルの確立に多大な功績を残した作家の一人です。

 イリノイ州のシカゴに生まれ、新聞記者を経て作家生活に入り、1935年に「Murder in the Madhouse(精神病院の殺人)」でデビューを果たします。その後も作品数は少ないのですが、完成度の高い長編を数多くものにしています。

 ハードボイルドの始祖であるダシール・ハメットの影響を大いに受けながらも、全体としてはユーモアたっぷりのほのぼのとした作風を特徴としていますが、それ以上に彼の一連の作品で特徴的なのは、ハードボイルド作品にも関わらず本格的な謎解きの要素が非常に強い点です。

 代表作の「処刑6日前」は密室殺人を題材に扱ったまさしく本格ミステリであり、その他の作品もほとんどが謎解きを中心に据えた作品で、ハードボイルドのジャンルに色分けしてしまうのは正しくない作家かもしれません。

モルグの女
「モルグの女」
(1936年)
(早川書房)

 1940年代に入るとハリウッドに移り住み、映画脚本家としても活躍。ハメットの「ガラスの鍵」や弁護士ペリイ・メイスン・シリーズなど数多くのシナリオを書き上げました。

 彼の作品に登場する私立探偵ビル・クレインは、正統派ハードボイルド探偵たちとは一風変わったダーティーな雰囲気を持っていて、ブラック・ユーモアを交えたテンポの良い台詞回しで読む者を惹きつけます。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、シカゴ
学歴
イリノイ州ノックス・カレッジ卒
生没
1906年10月23日~1983年6月23日
作家としての経歴
1935
ビル・クレインもの第1作「Murder in the Madhouse(精神病院の殺人)」でミステリ作家としてデビュー
1935
代表作の「処刑6日前」を発表
続く翌1936年にも傑作として名高い「モルグの女(盗まれた美女)」を発表
シリーズ探偵
酔いどれの私立探偵ビル・クレイン (William Bill Crane)
代表作
「処刑6日前」「モルグの女(盗まれた美女)」
「シカゴの事件記者」

■著作リスト■

1 私立探偵 ビル・クレイン登場作品リスト

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Search for My Great Uncle's Head 1937 - ピーター・コフィン名義
2 Dark Memory 1940 - 異境ミステリ
3 第五の墓 1941 HPB875
4 シカゴの事件記者 1955 創元推理文庫129-2
5 黒は死の装い 1959 HPB669

【映画脚本】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Lone Wolf Spy Hunt 1939 - Louis Joseph Vance 原作
2 Topper Returns 1941 -
3 The Glass Key
ガラスの鍵
1942 - ダシール・ハメット原作
4 Nocturne 1946 -
5 They Won't Believe Me 1947 - Gordon McDonell 原作
6 The Big Clock
大時計
1948 別冊宝石12('50) ケネス・フィアリング原作
7 Night Has a Thousand Eyes
夜は千の目を持つ
- コーネル・ウールリッチ原作
8 The Unholy Wife 1957 - William Durkee との合作
9 The Greenhouse Jungle
悪の温室
1972 - 刑事コロンボシリーズ第11話

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