ダールやエリンの先駆けと目される”奇妙な味”の名手
ジョン・コリアー表記もあり。イギリス生まれの小説家で、いわゆる短編の名手として、”奇妙な味”と言われるにふさわしい短編を数多く発表しています。また詩人やハリウッドの映画脚本家としても活躍しました。
ジョージ四世やウィリアム四世の侍医を務めたという曾祖父のほか、医師や文学者を多数輩出したというロンドンの名家に生まれますが、彼の代になった頃には家はすでに豊かな暮らし向きではなく、また17人兄弟の最年長だったため、若くして会社員として働くことを余儀なくされます。
また正規の学校教育を受けておらず、叔父のヴィンセントにより文学教育を施されたこともあってか若くして詩人を志し、1920年に最初の詩集を自費出版。詩の雑誌〈タイム・アンド・タイド〉の編集にも携わっています。また当時滞英中だった詩人・西脇順三郎とも交流があったそうです。
1920年代に短編小説を書き始め、1930年に発表した処女長編の奇想小説「モンキー・ワイフ」で一躍批評家の注目を集めます。
その後1935年アメリカに渡り、シナリオライターとして活躍しますが、1938年頃からはイギリスのオックスフォードからロンドン、フランスのカシス、そして再びアメリカのマンハッタンと各地を転々としつつも〈ニューヨーカー〉や〈アトランティック・マンスリー〉などの一流文芸誌や一般誌に短編作品を数多く発表し、短編作家としての地位を固めました。
40年代にはカリフォルニアに落着いてハリウッドで映画の脚本に専念。ジョン・ヒューストン「アフリカの女王」(51)の制作にも携わっています。
晩年はフランスのグラースという村で20年以上を過ごし、趣味の園芸などをしながら悠々自適に暮らしつつミルトンの叙事詩「失楽園」の映画化をライフワークとして取り組みますが、残念ながら映画化には至らなかったといいます。
その生涯に60数編の短編を発表していますが、その多くは1930年代~50年代に〈ザ・ニューヨーカー〉誌などに発表したもので、それらは1951年に「Fancies and Goodnights(夜と幻想)」という全50編の自選短編集の形でまとめられ出版されています。またこの短編集でMWA賞短編賞、国際幻想文学賞を受賞も受賞しています。
その洗練された文章と鋭い人間観察、奇想と機知に富んだ幻想的な作風や時に見せる残酷なまでのユーモアはまさに”奇妙な味”と言われるにふさわしく、ロアルド・ダールやスタンリイ・エリンらの先駆けと位置づけられる作家といえます。
そしてこれらの作品はアンソロジストたちのお気に入りとなっており、個々の短編はアンソロジーやファンタジーの短編集に頻繁に加えられています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | モンキー・ワイフ ─或いはチンパンジーとの結婚 |
1930 | 講談社('77) | |
2 | No Traveller Returns (旅人帰らず) |
1931 | - | |
3 | Tom's a-Cold (米 Full Circle) (トムは寒いよぉ) |
1933 | - | |
4 | Defy the Foul Fiend: or The Misadventures of a Heart (悪霊を避けよ) |
1934 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | An Epistle to a Friend | 1932 | - | ||
2 | Green Thoughts | - | 550部の署名本 | ||
3 | The Devil and All | 1934 | - | 1000部の署名限定本 | |
4 | Variations on a Theme | 1935 | - | 285部の署名本 | |
5 | Witch's Money | 1940 | - | 350部のみの限定本 | |
6 | Presenting Moonshine | 1941 | - | ||
7 | The Touch of Nutmeg, and More Unlikely Stories | 1943 | - | ||
8 | Fancies and Goodnights (夜と幻想) |
1951 | - | 全50編の自選短編集 MWA賞短編賞 国際幻想文学賞 |
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9 | 炎のなかの絵 | 1958 | 早川書房 異色作家短篇集7(新装版)('06) 早川書房 異色作家短篇集6(改訂版)('74) 早川書房 異色作家短篇集6('61) |
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1 | 夢判断 | 早川文庫80-7「エドガー賞全集/上 アメリカ探偵作家クラブ傑作選6」('83) | |||
2 | 記念日の贈物 | サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 EQMM'60.4 |
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3 | ささやかな記念品 (小さな博物館) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 講談社文庫「世界ショートショート傑作選3」('80) |
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4 | ある湖の出来事 (湖畔の出来事) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 | |||
5 | 旧友 (むかしの仲間) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 | |||
6 | マドモアゼル・キキ | サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 | |||
7 | スプリング熱 | ||||
8 | クリスマスに帰る | 創元推理文庫100-5「世界短編傑作集5」('60) 河出書房新社「サンタクロースの贈物」('79) 東京創元社 世界推理小説全集「世界短篇傑作集2」('57) |
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9 | ロマンスはすたれない (ロマンは亡びず) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 | |||
10 | 鋼鉄の猫 (『鋼鉄ネコ』) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 | |||
11 | カード占い | ||||
12 | 雨の土曜日 | 早川書房「ニューヨーカー短篇集1」('69) | |||
13 | 保険のかけ過ぎ | ||||
14 | ああ、大学 | ||||
15 | 死の天使 | サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 | |||
16 | キャヴィン・オリアリー (ガヴァン・オーリアリ) (名優ギャヴィン・オリアリ) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 筑摩書房 ちくま文学の森12「動物たちの物語」('89) |
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17 | 霧の季節 (なごやかな実りの季節) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 | |||
18 | 死者の悪口を言うな (死者について語る) (死者を鞭うつ勿れ) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 早川書房「復刻エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン No.1-3」('95) 早川書房「ニューヨーカー短篇集3」 EQMM'56.7 |
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19 | 炎のなかの絵 (火の中の映画) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 | |||
20 | 少女 | ||||
10 | Of Demons and Darkness | 1965 | - | 8の短縮版 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The John Collier Reader | 1972 | - | |
2 | The Best of John Collier | 1975 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | ジョン・コリア奇談集 | 1983 | サンリオSF文庫 | ||
1 | 眠れる美女 | HMM'71.6 | |||
2 | ある恋の物語 (特別配達) |
1941 | 河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) 早川文庫NV「幻想と怪奇 おれの夢の女」('05) 早川文庫NV「幻想と怪奇3」('78) 早川サスペンス・シリーズ4001「十三階の女」('63) SFマガジン'61.9臨時増刊 |
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3 | 落ちて来た天使 (堕ちた星) (流れ星) |
ちくま文庫「天使と悪魔の物語」('95) 筑摩書房「アメリカほら話」('68) HMM'74.1 |
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4 | なごやかな実りの季節 (霧の季節) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
5 | 名優ギャヴィン・オリアリ (キャヴィン・オリアリー) (ガヴァン・オーリアリ) |
1945 | 早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 筑摩書房 ちくま文学の森12「動物たちの物語」('89) |
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6 | フランクの買った瓶 (瓶の中のパーティ) (壜詰パーティ) |
1939 | 河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) 光文社文庫「クイーンの定員 IV」('92) ちくま文庫「魔法のお店」('89) 光文社「クイーンの定員3」('84) HMM'73.8 |
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7 | 夜だ、青春だ、パリだ、月だ (夜だ!青春だ! パリだ! 見ろ、月も出てる!) (夜! 青春! パリ! 月!) |
河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) 別冊宝石'61.7(107) |
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8 | わが最愛のメァリー (メアリー) |
HMM'81.5 HMM'69.4 |
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9 | 小さな博物館 (ささやかな記念品) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 講談社文庫「世界ショートショート傑作選3」('80) |
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10 | ある主題の変奏 | ||||
11 | また買いにくる客 | ||||
12 | 女だけの地獄 (悪魔とジョージとロージー) |
白水社「現代イギリス幻想小説」('71) | |||
13 | 腹話術奇談 | 角川ホラー文庫「フランケンシュタインの子供」('95) | |||
14 | むかしの仲間 (旧友) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
15 | ウィーンから来た青春 | ||||
2 | ジョン・コリア奇談集II | 1984 | サンリオSF文庫 | ||
1 | 風変りなプレゼント | 早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
2 | 火の中の映画 (炎のなかの絵) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
3 | 奇術師フレイザーの運命 (登りつめれば) |
創元推理文庫170-1「魔術ミステリ傑作選」('79) | |||
4 | 葦毛のウマの美人 (葦毛の馬の美女) (葦毛に乗った女) |
1951 | 河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) 角川文庫「幻想と怪奇1 吸血鬼と魔女」('75) HMM'69.8 |
||
5 | 異本『アメリカの悲劇』 (異説アメリカの悲劇) (アメリカのおなじみの悲劇) |
1940 | 河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) 筑摩書房 ちくま文学の森8「悪いやつらの物語」('88) 別冊宝石'61.3(105) |
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6 | アンリ・モーラーのステッキ | ||||
7 | 死者について語る (死者の悪口を言うな) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
8 | ロマンは亡びず (ロマンスはすたれない) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
9 | 魔女のくれた金 | ||||
10 | 自殺志願 | ||||
11 | 猛禽 | ||||
12 | マドモアゼル・キキ | 早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
13 | みどりの思い (みどりの想い) (人花) |
創元推理文庫「怪奇小説傑作集2」('69) 立風書房「変身のロマン」('90) 集英社コバルト・シリーズ「怪奇ファンタジー傑作選」('79) 東京創元社 世界大ロマン全集38「怪奇小説傑作集2」('58) |
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14 | 『鋼鉄ネコ』 (鋼鉄の猫) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
15 | 悪魔につかれたアンジェラ (悪魔に憑かれた女) |
河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) HMM'75.8 |
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16 | ナツメグをほんの少し (ナツメグの味) |
河出書房新社 河出ミステリ「ナツメグの味」('07) 新潮文庫「謎のギャラリーこわい部屋」('02) 河出文庫「美酒ミステリー傑作選」('90) マガジンハウス「謎のギャラリー特別室」('98) 大和書房「冷えたギムレットのように」('83) HMM'89.8 HMM'75.8 |
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17 | 地獄の途中まで | ||||
18 | 湖畔の出来事 (ある湖の出来事) |
早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
19 | カエルの王子 (蛙のプリンセス) |
HMM'79.5 | |||
20 | リスの目は光る目 | ||||
21 | 『死の天使』 | 早川書房 異色作家短編集「炎のなかの絵」 | |||
3 | ザ・ベスト・オブ・ジョン・コリア | 1989 | ちくま文庫 | サンリオ「ジョン・コリア奇談集1・2」から再編集 | |
1 | 名優ギャヴィン・オリアリ | ||||
2 | ある恋の物語 | ||||
3 | 葦毛のウマの美女 | ||||
4 | ステッキの行方 | ||||
5 | わが最愛のメァリー | ||||
6 | 霧の季節 | ||||
7 | 結婚記念日の変わったプレゼント | ||||
8 | マハウンド・プロダクション | ||||
9 | 永遠の青春を求めて | ||||
10 | 魔女のくれた金 | ||||
11 | 肉食鳥 | ||||
12 | 女だけの地獄 | ||||
13 | 瓶の中のパーティ | ||||
14 | 小さな博物館 | ||||
15 | 緑の木かげ、みどりの思い | ||||
16 | ロマンスはいつの世にも | ||||
17 | 異本「アメリカの悲劇」 | ||||
18 | ある主題の変奏曲 | ||||
19 | 腹話術奇談 | ||||
20 | 夜だ、青春だ、パリだ、月も照ってる! | ||||
4 | ナツメグの味 | 2007 | 河出書房新社 河出ミステリ | ||
1 | ナツメグの味 (ナツメグをほんの少し) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 新潮文庫「謎のギャラリーこわい部屋」('02) 河出文庫「美酒ミステリー傑作選」('90) マガジンハウス「謎のギャラリー特別室」('98) 大和書房「冷えたギムレットのように」('83) HMM'89.8 HMM'75.8 |
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2 | 特別配達 (ある恋の物語) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 早川文庫NV「幻想と怪奇 おれの夢の女」('05) 早川文庫NV「幻想と怪奇3」('78) 早川サスペンス・シリーズ4001「十三階の女」('63) SFマガジン'61.9臨時増刊 |
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3 | 異説アメリカの悲劇 (異本『アメリカの悲劇』) (アメリカのおなじみの悲劇) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 筑摩書房 ちくま文学の森8「悪いやつらの物語」('88) 別冊宝石'61.3(105) |
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4 | 魔女の金 | ||||
5 | 猛禽 | ||||
6 | だから、ビールジーなんていないんだ (ビールジーなんているもんか) (われはかく身中の虫を退治せん) |
1940 | HPB268「幻想と怪奇2」('56) 白水uブックス「イギリス幻想小説傑作集」('85) 別冊宝石'61(108) |
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7 | 宵待草 | ||||
8 | 夜だ!青春だ! パリだ! 見ろ、月も出てる! (夜だ、青春だ、パリだ、月だ) (夜! 青春! パリ! 月!) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 別冊宝石'61.7(107) |
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9 | 遅すぎた来訪 | 1951 | 講談社文庫「世界ショートショート傑作選1」('78) 奇想天外'74.1 |
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10 | 葦毛の馬の美女 (葦毛のウマの美人) (葦毛に乗った女) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 角川文庫「幻想と怪奇1 吸血鬼と魔女」('75) HMM'69.8 |
|||
11 | 壜詰めパーティ | 光文社文庫「クイーンの定員 IV」('92) ちくま文庫「魔法のお店」('89) 光文社「クイーンの定員3」('84) HMM'73.8 |
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12 | 頼みの綱 | ||||
13 | 悪魔に憑かれたアンジェラ (悪魔に憑かれた女) |
サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集II」 HMM'75.8 |
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14 | 地獄行き途中下車 (地獄までちょっと) |
奇想天外'74.9 | |||
15 | 魔王とジョージとロージー | サンリオ文庫「ジョン・コリア奇談集」 白水社「現代イギリス幻想小説」('71) |
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16 | ひめやかに甲虫は歩む | 1960 | 角川文庫「幻想と怪奇3 残酷なファンタジー」('75) HMM'71.8 |
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17 | 船から落ちた男 (海に落ちた男) |
HMM'78.7 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Hell Hath No Fury 恋人たちの夜 (天使と悪魔と青年と) |
1934 | 文化出版局「吸血鬼は夜恋をする」('75) HMM'70.3 |
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2 | Midnight Blue ミッドナイト・ブルー |
1938 | HMM'80.9 | |
3 | A Word to the Wise 多言無用 |
1940 | 扶桑社ミステリー「不思議な猫たち」('99) | |
4 | Great Possibilities 大いなる可能性 |
1951 | HMM'82.11 | |
5 | 完全犯罪 (完全殺人) |
1959 | 河出文庫「美食ミステリー傑作選」('90) 大和書房「とっておきの特別料理」('83) 別冊クイーンマガジン'60冬 |
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6 | Not Far Away, Not Long Ago 愛のヴァリエーション |
1960 | HMM'72.8 | |
7 | Asking for It お望みどおりに |
1975 | HMM'11.2 | |
8 | The Love Connoisseur 宿願成就 |
EQMM'59.7 | ||
9 | The Dog That Came to Funeral 犬のお悔やみ |
EQMM'60.12 | ||
10 | Don't Call Me いや電話をきらないで |
集英社 プレイボーイブックス「プレイボーイ傑作短篇集」('77) プレイボーイ'75.7 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Gemini (双子宮) |
1931 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Scandal and Credulities of John Aubrey (ジョン・オーブリーの醜聞の軽信) |
1931 | - | ノンフィクション(古典復刻) |
2 | Paradise Lost: Screenplay for Cinema of the Mind (ミルトンの失楽園─心の映画のための脚本) |
1973 | - | モルトンの叙事詩「失楽園」の脚本化 |