弁護士として法廷でも活躍

UK ジョン・モーティマー
(John Clifford Mortimer)

ランポール弁護に立つ
「ランポール弁護に立つ」
(1978年)
(河出書房新社)

 イギリスのミステリー作家。作家としてだけでなく弁護士・バリスターとしてイギリスの法曹界でよく知られた存在であり、また劇作家として多数の戯曲や脚本も手がけるなど幅広い分野で活躍しています。

 ロンドンで父親が法曹の世界でバリスターとして活躍していた家に生まれ、父親の意向もあってオックスフォード大学を卒業し法学院に進んだ後1948年に法廷弁護士の資格を取得して弁護士となります。そして1970年にアングラ雑誌〈オズ〉の猥褻図画販売事件で被告側の弁護を買って出て、一貫して表現の自由を主張。裁判では敗れたものの一躍名を馳せたのでした。

 また1966年には王室の勅撰弁護士に、1975年には所属するインナー・テンプル法学院の評議員も務めるなど、法曹の世界で順調にキャリアを積んでいきました。

 しかし元々作家志望だったこともあり、それらの多忙な業務の傍ら早くから小説やドラマ脚本などの執筆活動を展開。1940年代より小説をはじめ舞台やテレビ、ラジオや映画の脚本など、幅広居分野で精力的に活動しました。

告発者
「告発者」
(1992年)
(早川書房)

 はじめは小説より脚本がメインだったらしく、代表作に実父との確執に材をとった自伝的な戯曲「父親をめぐる航海」(A Voyage Round My Father)がありますが、彼の名前を特に有名にしたのが、法廷弁護士ホレス・ランポールを主人公とした短編シリーズでした。

 ランポール弁護士シリーズは元々は1975年にランポール弁護士が当時中堅脚本家だった著者の手により、BBC放送の〈今日のドラマ〉連作シリーズの一作として単発のテレビドラマが放映されたのが最初でしたが、イギリスのユーモア作家の巨匠P・G・ウッドハウスを彷彿とさせるようなユーモアとペーソスに満ち溢れた作風と風変わりで個性的な弁護士を登場させた同作品は大変な好評を博し、続いてテムズ・テレビジョンによりシリーズドラマ化されて一躍人気作品となったのでした。
 初のTV放映から3年後の1978年には台本を脚本化した第1短編集「ランポール弁護に立つ」が刊行され、以後30年にわたって書き続けられ、70を超える作品が発表されています。

 その他にもテレビ番組ではイーヴリン・ウォーの名作「ブライズヘッドふたたび」のテレビ化、映画脚本ではダスティン・ホフマンとミア・ファローの共演の「ジョンとメリー」やウラジーミル・ナボコフ原作の「マーシェンカ」などの傑作を世に送り出しています。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、ロンドン
生没
1923年4月21日~2009年1月16日(85歳)
作家としての経歴
1969
ダスティン・ホフマンとミア・ファローが共演する映画「ジョンとメリー」の脚本を担当
1975
脚本家として活躍していた著者の手によりランポール弁護士を主人公に据えた単発ドラマがBBC放送の〈今日のドラマ〉連作シリーズの一作として放映されて好評を博する。続いてテムズ・テレビジョンによりシリーズドラマ化
1978
TVドラマを小説化した法廷弁護士ランポールものの第1作となる短編集「ランポール弁護に立つ」が刊行される
1984
6年前の1978年から発表しているランポール弁護士シリーズが大当りしたのを受けて、弁護士業を辞めて作家専業となる
1987
ウラジーミル・ナボコフ原作の映画「マーシェンカ」の脚本を担当
シリーズ探偵
ホレス・ランポール弁護士 (Horace Rumpole)
代表作
「ランポール弁護に立つ」(ランポール弁護士)
「告発者」

■著作リスト■

1 ランポール弁護士登場作品リスト

2 The Rapstone Chroniclesシリーズ作品リスト

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Paradise Postponed 1985 -
2 Titmuss Regained 1990 -
3 The Sound of Trumpets 1998 -

【アンソロジー・オムニバス】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Rapstone Chronicles 1991 -

3 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Charade 1947 -
2 Like Men Betrayed 1953 -
3 The Narrowing Stream 1954 -
4 Summer's Lease 1988 -
5 告発者 1992 HPB1681
6 Under the Hammer 1994 -
7 Felix in the Underworld 1996 -
8 Quite Honestly 2005 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Edwin and Other Plays 1984 -
2 Thou Shalt Not Kill: Father Brown, Father Dowling and Other Ecclesiastical Sleuths 1992 - ブラウン神父のG・K・チェスタトン、ダウリング神父のラルフ・マキナリーの作品などを併録
3 A Programmed Christmas Carol 1994 -
4 The Scales of Justice 2005 - 小冊子
5 Collected Plays 2006 -

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Laura Norder
ローラ・ノーダー
HMM'97.10

【映画脚本】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 Ferry to Hong Kong 1959 - Lewis Gilbert&VernonHarrisとの合作
2 The Innocents
(回転)
1961 - Truman Capote&William Archibaldとの合作
3 Guns of Darkness
(暗黒の銃弾)
1962 -
4 The Running Man
(逃げる男)
1963 -
5 Bunny Lake Is Missing
(バニー・レークは行方不明)
1964 - 妻ペネロープとの合作
監督・オットー・プレミンジャー
主演・ケア・ダレー
6 A Flea in Her Ear
(パリの秘めごと)
1967 - 監督・ジャック・シャロン
主演・レックス・ハリソン
7 John and Mary
ジョンとメリー
1969 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント('91・'93)(ビデオ) 監督・ピーター・イエーツ
主演・ダスティン・ホフマン
8 Bermondsey 1971 -
9 Maschenka
(マーシェンカ)
1987 - 監督・ジョン・ゴールドシュミット
主演・ケアリー・エルウィス
10 ムッソリーニとお茶を 1998 ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン('06) 監督・フランコ・ゼフィレッリ
主演・シェール、ジュディ・デンチ
11 ドン・キホーテ ~ラ・マンチャの男~ 2000 パイオニアLDC('02) 監督・ピーター・イエーツ
主演・ジョン・リスゴー

【編書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Great Law and Order Stories 1990 -
2 The Oxford Book of Villains 1992 -

【エッセイ評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Clinging to the Wreckage 1982 - 自伝
2 Murderers and Other Friends: Another Part of Life 1994 - 自伝
3 The Summer of a Dormouse: A Year of Growing Old Disgracefully 2000 - 自伝
4 Where There's a Will 2003 - 自伝
5 Zerah Colburn the Spirit of Darkness 2005 - -
6 In Other Words 2008 - -

【エッセイ評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ディック・フランシスとの会見 早川書房「ディック・フランシス読本」('92)

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