USA ロス・トーマス
(Ross Elmore Thomas)
〔別名 オリバー・ブリーク (Oliver Bleeck)〕

クラシックな殺し屋たち
「クラシックな殺し屋たち」
(1971年)
(立風書房)

 アメリカのミステリー作家。サスペンスからスパイ小説までその作風た多彩で数多くの作品が映画化もされている実力派の作家です。

 オクラホマ市に生まれ、オクラホマ大学に入学し在学時の1943年から44年にかけて〈デイリー・オクラホマ〉紙の記者をしていたといいます。そして第二次世界大戦中は学徒動員でアメリカ分艦隊とともにフィリピン諸島で戦争を体験しています。

 終戦後に復学し49年に卒業。その後52年から56年にかけて全米農業組合の広報ディレクター、58年から59年にかけてはドイツのボンで、59年から61年はアフリカのナイジェリアで記者として活躍。64年から66年にかけてはアメリカ合衆国政府の領事を務めるなど、様々な職業を経験しました。

 そして1966年にデビュー長編「冷戦交換ゲーム」を発表し、冷戦下のドイツを舞台にマッコークルとパディロの二人組が活躍するこのスパイ小説の傑作でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀新人賞を受賞し、華々しいデビューを飾ると、以後も1984年に発表しアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀長編賞を受賞した「女刑事の死」を筆頭に、巧みなプロットで都会派のミステリー作家として数多くの傑作を世に送り出し高い評価を得ています。

女刑事の死
「女刑事の死」
(1984年)
(早川書房)

 上記のようにアメリカやヨーロッパ、アフリカでたくさんの出版者や放送局、政府機関、政治家の下で記者・編集者・広報ディレクターなどの職に就いていたため、実社会の人間模様や政界の裏面に関し深い知識と経験を積んでおり、これが彼の小説世界の形成に大いに役に立ったといいます。

 登場人物の人間関係が複雑に絡み合う重厚なプロットで一筋縄ではいかない展開を見せるその作風からストーリーが難解であるという評価もある一方で、脇役に至るまで魅力的に描く人物描写と登場人物たちのさりげない会話の上手さ、全編に散りばめられたユーモアセンスで熱狂的なファンも多いと言われます


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、オクラホマ州オクラホマ・シティ生まれ
学歴
オクラホマ大学卒
生没
1926年2月19日~1995年12月18日
作家としての経歴
1966
デビュー長編「冷戦交換ゲーム」を発表し、翌1967年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀新人賞を受賞
1984
ノン・シリーズの長編「女刑事の死」を発表し、翌1985年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀長編賞を受賞
シリーズ探偵
マック・マッコークル& マイク・パディロ (Mac McCorkle & Michael Padillo)
フィリップ・セント・アイヴズ (Philip St. Yves)(オリバー・ブリーク名義)
アーティー・ウー&クィンシー・デュラント (Artie Wu & Quincy Durant)
代表作
「冷戦交換ゲーム」
「女刑事の死」

■著作リスト■

1 マック・マッコークル& マイク・パディロ登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Cold War Swap
冷戦交換ゲーム
1966 HPB1044 MWA賞新人賞
2 暗殺のジャムセッション 1967 HPB1827
3 クラシックな殺し屋たち 1971 立風書房 立風ミステリー('76)
4 黄昏にマックの店で 1990 早川文庫ミステリアス・プレス109('97)
早川書房 ミステリアス・プレス・ブックス('92)

2 フィリップ・セント・アイヴズ登場作品リスト(オリバー・ブリーク名義)

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Brass Go-between 1969 -
2 Protocol for a Kidnapping 1971 -
3 強盗心理学 1971 立風書房 立風ミステリー('76) オリバー・ブリーク名義
映画化「セント・アイブス」('76)
4 The Highbinders 1974 -
5 No Questions Asked 1976 -

3 アーティー・ウー&クィンシー・デュラント登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Chinaman's Chance
大博奕
1978 立風書房('82)
2 五百万ドルの迷宮 1987 早川文庫ミステリアス・プレス136('99)
早川書房 ミステリアス・プレス・ブックス('88)
3 Voodoo, Ltd.
獲物
1992 早川書房 ミステリアス・プレス・ブックス('95)

4 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Seersucker Whipsaw 1967 -
2 恐喝─シンガポールウインク 1969 立風書房('76)
3 The Fools In Town Are On Our Side 1970 -
4 ポークチョッパー─悪徳選挙屋 1972 立風書房('74)
5 可愛い娘 1973 立風書房 立風ノベルズ('74)
6 The Money Harvest
悪魔の麦
1975 立風書房('80)
7 Yellow Dog Contract 1977 -
8 八番目の小人 1979 早川文庫ミステリアス・プレス2('89)
9 モルディダ・マン 1981 早川文庫ミステリアス・プレス6('89)
10 Missionary Stew
(シチューと密使)
1983 -
11 女刑事の死 1984 早川文庫309-1
早川文庫ミステリアス・プレス91('95)
早川書房('86)
MWA賞長編賞('85)
12 神が忘れた町 1989 早川文庫ミステリアス・プレス103('96)
早川書房 ミステリアス・プレス・ブックス('90)
13 Ah, Treachery
欺かれた男
1994 早川書房 ミステリアス・プレス・ブックス('96)

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Missionary Stew
シチューと密使─「シチューと密使より」
1983 早川書房「ニュー・ミステリ」('95)
2 Christmas Reposessed
クリスマス専門家
HMM'96.12

【ノンフィクション】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Warriors for the Poor: The Story of VISTA, Volunteers In Service to America 1969 - William H. Crookとの共著
2 Spies, Thumbsuckers, Etc. 1989 -

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 An Interview with Ross Thomas The Art of Writing
ロス・トーマス「私の小説作法」
HMM'86.10

【映画原作】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 セント・アイブス 1976 ワーナー・ホーム・ビデオ('06) J・リー・トンプソン監督
チャールズ・ブロンソン主演
2 ブラッド・イン ブラッド・アウト 1993 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('05) テイラー・ハックフォード監督
ダミアン・チャパ主演

【映画脚本】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 ハメット 1982 パイオニアLDC('02) ジョー・ゴアズ原作
ヴィム・ヴェンダース監督
フレデリック・フォレスト主演
2 Bad Company
バッド・カンパニー/欲望の危険な罠
1995 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('95)(ビデオ) ダミアン・ハリス監督
エレン・バーキン主演


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