専用心配係
20世紀最大のユーモア作家と言われるイギリスの作家P・G・ウッドハウスの生み出した最も有名かつ人気の高いキャラクター。
本国イギリスではこの執事ジーヴスと彼の主人であるバーティ・ウースターのコンビは、アーサー・コナン・ドイルの生み出したあの名探偵シャーロック・ホームズとその助手ワトスン博士のコンビと並び称されるほどの人気があるらしく、TVドラマ化もされている程の人気シリーズです。
またイギリス本格ミステリ黄金時代の代表的作家の一人でもある女流作家ドロシー・L・セイヤーズの生み出したピーター卿と執事ヴァンターのコンビのモデルともなったとも言われ、少し間の抜けた主人と有能な執事のやり取りをユーモラスに描くシリーズの嚆矢的作品でもあります。
物語はほぼ全ての作品が主人のバーティ・ウースターによって語られ、本人の語りによればジーヴスはもめごとや心配処理の天才で、彼が自分に仕えるようになってからというものの世の中の心配事とはさっぱり縁切りになったのだと言います。
葬儀屋か何かのような威厳ある態度でしかつめらしい表情ではあるものの、どことなく親切そうで物腰も軽く行動も機敏、屋敷に入る時もまるで透き間風が音もなくスーッと入ってくるような感じで物音一つ立てないほどです。
ただそんなジーヴスにも一つだけ問題があって…それは読んでのお楽しみということになるでしょう。
とにかくバーティの語り口が絶妙で、またユーモア小説では特に大事な間の取り方が非常に上手く、冒頭からすぐに引き込まれて楽しい気分にさせてくれます。一度読み出したら間違いなく癖になるシリーズです。
ちなみに海外の検索サイトといえばYahoo!やGoogleの他にAskが特に有名ですが、以前このサイトのマスコットキャラクターを務めていた(その当時は「Ask Jeeves」でした)ことがあり、サイトには生みの親のP・G・ウッドハウスについて紹介しているページもありました。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | サンキュー、ジーヴス | 1934 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション6('06) | |
2 | よしきた、ジーヴス (無敵相談役) |
国書刊行会 ウッドハウスコレクション2('05) 東成社 ユーモア長篇小説集('40) |
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3 | ウースター家の掟 | 1938 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション4('06) | |
4 | ジーヴスと朝のよろこび | 1947 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション7('07) | |
5 | ジーヴスと恋の季節 | 1949 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション8('07) | |
6 | お呼びだ、ジーヴス | 1953 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション12('11) | ガイ・ボルトンとの共作劇の小説化 語り手がバーティでないバーティに仕える前の作品 邦訳はシリーズ短編1編併録 |
7 | ジーヴスと封建精神 | 1954 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション9('08) | |
8 | ジーヴスの帰還 | 1960 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション10('09) | 邦訳はシリーズ短編2編併禄 |
9 | がんばれ、ジーヴス | 1963 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション11('10) | 邦訳はノンシリーズ短編3編併禄 |
10 | 感謝だ、ジーヴス | 1971 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション13('11) | |
11 | ジーヴスとねこさらい | 1974 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション14('12) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | My Man Jeeves | 1919 | - | 全8編 | |
1 | Leave it to Jeeves | 1916 | 短編集3「コーキーの芸術家稼業」の原型 | ||
2 | 招かれざる客 (ジーヴズと招かれざる客) |
1917 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション3「それゆけ、ジーヴス」 集英社 世界文学全集37「現代ユーモア文学集」('66) 宝石'60.8 |
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3 | ジーヴスとケチンボ公爵 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション3「それゆけ、ジーヴス」 | |||
4 | 伯母さんとものぐさ詩人 | 1916 | |||
2 | 比類なきジーヴス | 1923 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション1('05) 文春文庫「ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻」(1-6収録)('11) 文春文庫「ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻」(7-11収録)('11) 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) |
連作短編集 | |
1 | ジーヴス、小脳を稼動させる ~ビンゴが為にウェディングベルは鳴らず (ジーヴズの春) (ジーブスと春の訪れ) |
1921 | HMM'85.4 |
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2 | アガサ伯母、胸のうちを語る ~真珠の涙 (ロヴィルの怪事件) (従僕と怪盗) |
1922 | |||
3 | ウースター一族の誇り傷つく ~英雄の報酬 (ジーヴズとグロソップ一家 前半) (心配係の休暇) (ジーブスがゐなくては) |
東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) 新青年'29.4増大 |
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4 | クロードとユースタス登場~サー・ロデリック昼食に招待される (ジーヴズとグロソップ一家 後半) |
1918 | |||
5 | 紹介状~お洒落なエレベーター・ボーイ (ジーヴズと駆け出し俳優) |
1922 | |||
6 | 同志ビンゴ~ビンゴ、グッドウッドでしくじる (同志ビンゴ) |
1922 | |||
7 | 説教大ハンデ (トゥイング騒動記 前半) |
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8 | スポーツマン精神 (トゥイング騒動記 中盤) (清潔な運動会を) |
別冊宝石109('61) | |||
9 | 都会的タッチ (トゥイング騒動記 後半) (ビンゴ青年行状記) |
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10 | クロードとユースタスの遅ればせの退場 (クロードとユースタスの出航遅延) (双生児綺譚) |
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11 | ビンゴと細君~大団円 (ビンゴと今度の娘) |
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3 | それゆけ、ジーヴス | 1925 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション3('05) | 「My Man Jeeves」(1919)所収の3.4.5に数編追加 | |
1 | ジーヴス登場 (ジーヴス乗り出す) (ジーヴズの初仕事) (専用心配係) (天は晴れたり) |
1916 | 文春文庫「ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻」('11) 集英社 世界文学全集37「現代ユーモア文学集」('66) 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) 東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) 新青年'29新年増大 |
バーティに仕えた経緯が語られている作品 | |
2 | コーキーの芸術家稼業 (コーキーの画業) |
集英社 世界文学全集37「現代ユーモア文学集」('66) | |||
3 | ジーヴズと招かれざる客 (招かれざる客) (監獄志願兵) |
集英社 世界文学全集37「現代ユーモア文学集」('66) 宝石'60.8 新青年'38.2 |
再収録 | ||
4 | ジーヴスとケチンボ公爵 | 1917 | 再収録 | ||
5 | 伯母さんとものぐさ詩人 | 1916 | 再収録 | ||
6 | 旧友ビッフィーのおかしな事件 (ジーヴズとビッフィー事件) |
1924 | 宝石'60.10 | ||
7 | 刑の代替はこれを認めない (巡査を殴る) |
1925 | 新青年'27新春増刊 | ||
8 | フレディーの仲直り大作戦 (失恋救済業) |
1912 | 改造社「世界ユーモア全集2 英米篇」('33) 新青年'28.9 |
レジー・ペッパーものをジーヴスものに書き換えた作品 | |
9 | ビンゴ救援部隊 | 1925 | |||
10 | バーティー考えを改める (君子豹変談) (バーティ君の変心) (君子豹変譚) (女学校事件) |
1922 | 文春文庫「ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻」 東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) 宝石'53.6 新青年'38増刊 新青年'32新春増刊 新青年'26.7 |
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4 | でかした、ジーヴス! | 1930 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション5('06) | ||
1 | ジーヴスと迫りくる運命 (ジーヴズと白鳥の湖) |
1926 | 文春文庫「ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻」('11) 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) |
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2 | シッピーの劣等コンプレックス (花瓶) |
新青年'28新春増刊 | |||
3 | ジーヴスとクリスマス気分 (ジーヴズと降誕祭気分) (湯タンポ騒動) |
1927 | 文春文庫「ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻」('11) 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) 改造社「世界ユーモア全集2 英米篇」('33) 新青年'28.9 |
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4 | ジーヴスと歌また歌 | 1929 | |||
5 | 犬のマッキントッシュの事件 (預かった犬) |
東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) 新青年'31新年特大 |
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6 | ちょっぴりの芸術 (ちょっとした芸術) |
白水社 白水Uブックス「笑いの遊歩道 イギリス・ユーモア文学傑作選」('90) | |||
7 | ジーヴスとクレメンティーナ嬢 | 1930 | |||
8 | 愛はこれを浄化す | 1929 | |||
9 | ビンゴ夫人の学友 | 1930 | |||
10 | ジョージ伯父さんの小春日和 | ||||
11 | タッピーの試練 (子守歌騒動) |
東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) | |||
5 | A Few Quick Ones | 1959 | - | マリナー2編、ユークリッジ1編、ゴルフ1編他全10編 | |
1 | ジーヴス、オムレツを作る | 1959 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション12「お呼びだ、ジーヴス」('11) HMM'07.11 |
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6 | Plum Pie | 1966 | - | マリナー1編、ユークリッジ1編、ブランディングス城1編他全9編 | |
1 | ジーヴスとギトギト男 | 1965 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション10「ジーヴスの帰還」('09) HMM'07.5 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Life With Jeeves | 1931 | - | 短編集2と4の全てを再収録 |
2 | The World of Jeeves | 1967 | - | 短編集2・3・4の全短編とアンソロジー収録2編を収めた完全版 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 専用心配係 | 1939 | 東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) | ||
1 | 専用心配係 (ジーヴス登場) (ジーヴズの初仕事) (ジーヴス乗り出す) (天は晴れたり) |
1916 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション3「それゆけ、ジーヴス」 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) 集英社 世界文学全集37 現代ユーモア文学集「ジーヴス物語」('66) 新青年'29新年増大 |
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2 | 子守歌騒動 | 1930 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション5「でかした、ジーヴス!」('06) | ||
3 | 心配係の休暇 (ジーブスがゐなくては) |
1922 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション1「比類なきジーヴス」 新青年'29.4増大 |
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4 | 預かった犬 | 1929 | 国書刊行会 ウッドハウスコレクション5「でかした、ジーヴス!」('06) 新青年'31新年特大 |
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5 | 君子豹変談 (バーティー考えを改める) (バーティ君の変心) (君子豹変譚) (女学校事件) |
1922 | 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション3「それゆけ、ジーヴス」 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) 宝石'53.6 新青年'38増刊 新青年'32新春増刊 新青年'26.7 |
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2 | 天晴れジーブス | 1940 | 東成社 P・G・ウッドハウス ユーモア傑作集 | ||
3 | ジーヴス物語 | 1966 | 集英社 世界文学全集37「現代ユーモア文学集」 国書刊行会 ウッドハウス・コレクション3「それゆけ、ジーヴス」 |
他の作家とのアンソロジー 短編集3の冒頭3編を所収 |
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1 | ジーヴス乗り出す (ジーヴス登場) (ジーヴズの初仕事) (専用心配係) (天は晴れたり) |
1916 | 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1「ジーヴズの事件簿」('05) 東京創元社 世界大ロマン全集6「地下鉄サム」('56) 新青年'29新年増大 |
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2 | コーキーの画業 (コーキーの芸術家稼業) |
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3 | 招かれざる客 (ジーヴズと招かれざる客) (監獄志願兵) |
宝石'60.8 新青年'38.2 |
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4 | ジーヴズの事件簿 | 2005 | 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集1 | 短編集2+5編 | |
1 | ガッシー救出作戦 | 1915 | ジーヴス初登場作品 但し登場はほんの僅か |
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5 | ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 | 2011 | 文春文庫 | 4の分冊文庫化 全7編 |
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6 | ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻 | 2011 | 文春文庫 | 4の分冊文庫化、全6編 5編+「エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏」から1編 |
【参考】「よしきた、ジーヴス」(国書刊行会 ウッドハウス・コレクション2)