少女探偵 ナンシー・ドルー
(Nancy Drew)

　アメリカの児童小説家キャロリン・キーンの生み出した美少女探偵。

　1930年に「古い柱時計の秘密」でデビューして以来オリジナル56編を含めて計170作品以上が発表され、70年以上が経った現在でもまだ年に数作のペースで新作が発表され続けており、少女探偵の草分け的存在として本国アメリカをはじめ全世界の少女たちの間で絶大な人気を誇っているシリーズです。

　幼い時に母親を亡くし、思いやりのある家政婦ハンナ・グルエンと、有能で優しい弁護士の父親に育てられます。
シリーズを通して年はとらずずっと18歳の高校三年生で、いつもナンシーと行動をともにしているジョージとべスの二人とは固い友情で結ばれています。

　正義感に溢れ困った人間を見ると放っておけない性格で、行動力も抜群。そのせいもあって危ない目に遭うこともしばしばですが、どんな小さなことでも見逃さない鋭い観察眼と有能な弁護士である父親譲りの推理力で、そのような苦境も難解な謎も、いつも鮮やかに解き明かしてみせてくれます。

　ナンシー・シリーズでは残酷な殺人事件などが発生したり、犯人により難解なトリックが仕掛けられたりするということはなく、謎といっても盗難事件や失踪事件などのごく身近にあるようなものばかりです。

　しかしそれが却って何気ない日常生活の中にも推理する楽しさはあることを教えてくれ、物語をより身近なものにしてくれています。大人たちが安心して子供に薦められるのもこういった理由があるからなのでしょう。

　そしてこのような読者の日常生活で事件が展開するかのような楽しさに加えて、ナンシーをはじめとする少年少女の微妙な心理をよく捉えた人物描写が、同世代の子供たちに共感を呼び心を捉えて離しません。まさしく何世代に渡って誰からも愛されている好シリーズといえます。

　わが国でも、戦後1950年代に入ってから児童向けの名作が全集の形で数多く翻訳・紹介されましたが、そんな中でナンシー・ドルー・シリーズはマーガレット・サットンの少女探偵ジュディ・シリーズとともに特に高い人気を集め多くの作品が邦訳されました。

　1990年を境にしばらく新刊では手に入らず、図書館でしか読めないという時期もありましたが、1998年になって金の星社からフォア文庫の一環として６冊が復刊され、それをきっかけとして新たなファンを獲得しつつあります。更にたくさんの作品が復刊ないし新訳で紹介されることを期待したい所です（祝・2007年春より新シリーズの邦訳が開始されました）

　また映像化もアメリカでは何度もされていて、日本でも1970年代にパメラ・スー・マーティン主演のシリーズがＮＨＫで放映されています。