刑事コロンボ
(COLUMBO)

　リチャード・レビンソンとウィリアム・リンクのコンビが生み出した、アメリカの人気テレビドラマシリーズで活躍するロス市警殺人課の刑事。正しくは警部補です。

　1968年2月20日、まずＮＢＣテレビで単発もののＴＶムービーを放映する〈ワールド・プレミア〉という番組の中でピーター・フォーク主演により「殺人処方箋」が放映されます。
ピーター・フォークの素晴しい演技に加えて「まず犯行の現場が描かれ、それからその犯人を探偵が追いつめていく」という当時はあまり見られなかった倒叙ミステリという斬新なスタイルが見事にツボにはまり、29.8％という高視聴率を稼ぎます。

　しかしＮＢＣがシリーズ化を望んだのに対し、あまりに多忙になることを心配したピーター・フォークと、アイデアの枯渇を心配したレビンソン＆リンクが積極的ではなかったため、その時点ではシリーズ化は見送られます。

　それから３年が過ぎ、シリーズ化を前提に作られたパイロット版の「死者の身代金」が再び高視聴率を取ると、ＮＢＣは〈ＮＢＣミステリー・ムービー〉という枠を設けてコロンボを含めた数本のミステリーを交替で放映するという条件でようやく関係者を納得させ、シリーズ化が決定します。

　そして1971年9月15日にシリーズ化第１作「構想の死角」が放映され、1978年の最終話「策謀の結末」まで７シーズンで計43話が放映され人気を集めました。

　その後何度か復活の噂が出ては立ち消えとなり、その間にコロンボの生みの親の一人であったリチャード・レビンソンが亡くなるという不幸もありましたが、旧シリーズが終了してからおよそ10年が経過した1989年、ウィリアム・リンクを総指揮に迎え今度はＡＢＣの〈ミステリー・ムービー〉の一本として新シリーズがスタート。第１作の「汚れた超能力」から24作品が放映され、以前同様高い人気を獲得しています。

　コロンボといえばヨレヨレのレインコートに寝癖のついた髪、そしてオンボロの車を乗り回したり、現場に葉巻の灰を撒き散らしたりと、一見するとどこから見ても冴えない刑事にしか見えません。

　しかしそれは故意か偶然かは判断しかねるものの相手を油断させるための一手段のようなもので、一たび犯人の目星がつくと、毎日のように犯人の自宅や仕事場を訪れては「もう一つだけ…」としつこいくらいに相手を質問攻めにし、精神的に追いつめて最後には墓穴を掘らせます。

　そして普段は「すみません」を連発して低姿勢を貫きますが、ここぞという時には犯人に対して厳しい態度をとり、いくつかの作品では激怒したこともある熱血漢でもあります。

　倒叙ミステリの最大の特徴ですが、コロンボに追いつめられていく犯人たちの心理描写がとても秀逸であり、これらの作品を見たら誰も犯罪を行いたくなくなること請け合いです。それだけではなくアリバイ崩しやトリックなど、本格ミステリとしての完成度も高く、そのほとんどが傑作といえる出来栄えです。

　なおコロンボには1979年に番外編としてコロンボのカミさんが主人公を務める〈ミセス・コロンボ〉というシリーズが放映されていますが、この作品はコロンボのキャラクター自体の著作権をユニヴァーサルが保持していたために会社の一存で製作されたシリーズであり、レビンソンやリンクも当初から反対していたそうです。ピーター・フォークも好意的には捉えていなかったようで、そのため番外シリーズとは言い難い作品かもしれません。

　ちなみにこのシリーズではカミさんのファースト・ネームは主演を務めたケイト・マルグルーからとってケイト・コロンボとなっています。