出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ 1005 |
タイヤのきしむ音が、街路の空気をつんざいた。クリヤキンと一緒に歩いていたナポレオン・ソロは、思わず振り向いてみると、旧型の図体の黒いキャディラックが、地ひびきを立てて走りながら、車体を安定させようと必死の様子だった。次の瞬間、物騒な機関銃が窓から突き出たかと思うと、続けざまにオレンジ色の火を吹いた。通行人たちの悲鳴や逃げまどう足音をよそに、ソロは咄嗟に身構え、アンクル専用の拳銃を引き抜いて応戦した。だが、ガラスが割れただけだった。キャディラックは急ブレーキをかけて停まり、今度は、ものすごい勢いでバックしてきた。イリヤのそばを通り、ソロに襲いかかった。ソロ、危うし!
不思議なことに、この殺人自動車は、クリヤキンには目もくれず、ソロばかり狙った。なぜか?─九死に一生を得てようやく捜査にかかったソロとクリヤキンは、ようやく、スラッシュを除名された男が、アンクル一の特務機関員ソロを殺し、名誉回復を図っていることを突きとめた。しかも、その男は、スラッシュに戻れば、全世界の植物を全滅すべく、木枯し作戦を開始しようと図っていることまで判明したのだ……!
自分自身、かつてない死の危険にさらされながら、世界平和の敵に敢然と挑戦するナポレオン・ソロ! |