出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ945 |
イリヤはふと目をさますと、アパートのなかの異様な空気を感じとった。しずかに寝返りをうち、拳銃を手に隣室へしのび寄っていった。奇妙な怪物がいた。巨大な目が三つ、虫の触角めいたものが二つ。大きなマスクのようなヘルメットをかぶった男だった。イリヤは男の背後に近づくと、男は一瞬ギクリとしたが、やがてイリヤの拳銃を前に、奇妙な言葉を吐いた。つぎの瞬間、なにかが窓からパッと飛びこみ、絨緞の上で音もなく爆発した。イリヤはしだいに気が遠くなり、ゆっくりと床に倒れていった。……
一方、アンクル本部は、永遠の宿敵スラッシュが最近ぜんぜん動きをみせないことに、かえって不安を感じていた。嵐の前のしずけさなのか?─だが、ナポレオン・ソロと眠りからさめたイリヤが、スラッシュの西部地区の動向をさぐるべく、サンフランシスコに飛んだとき、二人は一瞬のすきに捕われの身となってしまった。しかもスラッシュ一味は、イリヤのアパートを襲ったのは自分らのしわざではないといい、執拗になぞの奇怪な組織〈ダガー〉のことを二人から知ろうとしていたのだ……スラッシュさえも怖れるダガー─人類の抹殺を図るダガーとは、いったい何か? アンクル、スラッシュ、ダガーが、三つどもえとなって展開する戦慄のナポレオン・ソロ・シリーズ第5弾! |