出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ959 |
イリヤは足場をとられてよろめき、片膝をついたまま、トゲトゲしたヤブのそばまでずり落ちた。その瞬間、さっきまで頭のすぐ上にあった雑木が、空を切って飛びすぎ、30センチほど先の草むらに烈しく突きささった。ゴルフ・ボールだった。強烈な発射銃から発射された殺人ボールだった。イリヤのからだを戦慄が走った。弾丸に撃たれて死ねば何らかの好奇心をよびおこすかもしれないが、ゴルフ・ボールで殺されるのは、まさに犬死だった。…イリヤは、狂ったように走りだした。そして、丘の頂上からヒースの上を急降下ですべりだした。加速がつき、たちまちふもとに近づいていく。追手はちょうど丘の頂上に立ったところで、追ってくる気配はなかった─いや、そう思ったのはイリヤのあやまちだった。追ってこないのも当然、イリヤが一安心した瞬間、彼は底なしの沼の真只中に落下していたのだ! スコットランドの旧城を根城に、あやしげな罐ビールを製造している生化学者、自称マイケル王の一味─その情報を聞きつけたスラッシュ一味もスコットランドにやってきて、イリヤは双方の敵に追われ、絶体絶命の危機におちこんでいったのだ! あやしげな罐ビールを造っているマイケル王の正体は? またスラッシュの狙いは? 人気沸騰のナポレオン・ソロ・シリーズ第6弾! |