犯人探しとモンクの記憶探しの二重のミステリー
イギリスの女流ミステリー作家アン・ペリーが生み出した、19世紀半ば、クリミア戦争直後のヴィクトリア朝のロンドンで活躍する警察官探偵。
物語冒頭でいきなり辻馬車の転倒事故に遭い、病院で目覚めた時には自分の名前も年齢も分からないという記憶喪失状態でした。
かろうじて自分が警察官と分かったモンクは、職を失うことのないように自らの症状を周囲に隠したまま捜査を命じられた難解な事件と懸命に格闘し続けます。
そして次第に明らかになってくる過去の自分が、仕事一筋で出世のためには他人を蹴落とすことも厭わない鼻持ちならない人間であったことに嫌悪感を感じますが、それでもやはり記憶を取り戻さずにはいられないという自分との葛藤に苦しむモンクの心理描写が秀逸で、読む者の心を捉えます。
このようなモンクの自分探しの旅を鮮明に描き出す一方で、舞台に設定された19世紀半ばのロンドンの風俗も生き生きと描き出され、更にはその中に本格ミステリとしての要素も盛り込まれていて、読み応えある歴史ミステリー・シリーズとなっています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 見知らぬ顔 | 1990 | 創元推理文庫295-1 | |
2 | 災いの黒衣 | 1992 | 創元推理文庫295-2 | |
3 | Defend and Betray (防御と裏切り) |
- | アメリカン・ミステリー賞最優秀伝統ミステリー賞 | |
4 | A Sudden, Fearful Death | 1993 | - | |
5 | The Sins of the Wolf | 1994 | - | |
6 | Cain His Brother | 1995 | - | |
7 | Weighed in the Balance | 1996 | - | |
8 | The Silent Cry | 1997 | - | |
9 | Whited Sepulchres (米 A Breach of Promise) |
1998 | - | |
10 | The Twisted Root | 1999 | - | |
11 | Slaves of Obsession | 2000 | - | |
12 | Funeral in Blue | 2001 | - | |
13 | Death of a Stranger | 2002 | - | |
14 | The Shifting Tide | 2004 | - | |
15 | Dark Assassin | 2006 | - | |
16 | Execution Dock | 2009 | - | |
17 | Acceptable Loss | 2011 | - | |
18 | A Sunless Sea | 2012 | - |