アランナ・ナイト
(Alanna Knight)
〔別名　マーガレット・ホープ(Margaret Hope)〕

　ミステリーのみならず歴史小説や伝記など多彩なジャンルで活躍するイギリスの女流作家。イングランド北部のタインサイドで生まれ育ち、1960年代初めから雑誌や新聞に小説や記事を発表しはじめ1969年にロマンティック・スリラーの長編「Legend of the Loch」でミステリ作家としてデビューを果たします。

　その後ロマンス作家協会の受賞をきっかけにアメリカやフランスでも紹介されるようになりミステリ作家として活躍する一方、ノンフィクションや伝記などの分野でも活躍。特に「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」などの作品で有名なイギリスの作家ロバート・Ｌ・スティーブンスンの権威として知られ、スティーヴンスンに関連する研究書も2冊発表しています。

　ミステリ作家としては1977年にエリス・ピーターズが発表した長編「聖女の遺骨求む」を皮切りとする修道士カドフェル・シリーズの大成功に触発されてスタートさせたジェレミー・ファロ警部補を主人公に据えた本格歴史ミステリーを1988年から発表し好評を博しています。

　このシリーズは彼女がスコットランド生まれの科学者の夫とともに各地を旅行した後に移り住んだというエジンバラを舞台に19世紀のヴィクトリア朝時代を鮮やかに描くと同時に、犯人捜しも楽しむことができるすぐれたフーダニットのミステリに仕上がっているのがその特徴です。

　40年を超える作家生活で著作は60作品に及び、スコットランド作家協会の設立にも携わるなど著名な作家である一方で日本での紹介はこれまでありませんでしたが、2012年にファロ警部補シリーズの第1作「修道院の第二の殺人」が紹介されたのを皮切りに代表作のシリーズ第2作「エジンバラの古い柩」も遂に邦訳されるなど、日本の本格ファンや歴史ミステリのファンの間でも話題に上がっている注目の作家の一人です。