1930年初頭から1950年代末期にかけて活躍したイギリス本格黄金時代の女流作家で、本国イギリスではミステリーの女王アガサ・クリスティーやマージェリー・アリンガムと同格の存在と評されたほどの作家です。
キャロル・カーナックという女性名義のペンネームでも作品を発表していましたが、長い間ロラック=キャロル・カーナックであることは隠されていて、そのためロラックは世間では男性作家だと思われていたそうです。 ちなみにロラック(Lorac)の名前の由来は、面白いことにキャロル(Carol)のスペルを逆さまにしただけです。
その作風はアガサ・クリスティーに代表されるようなトリック・犯人あてやアリバイ崩し等を重視する典型的な謎解きミステリであり、探偵役のマクドナルド警部をはじめ、登場人物はやや地味かもしれません。
しかしそのプロットの妙と文章構成の巧さ、それに結末の意外性で読者を唸らせ、本格ミステリとしては重厚で素晴らしい出来に仕上がっている作品が多いのが特徴といわれています。
ちなみにロラックはキャロル・カーナック名義の作品も含めて70冊を超えるミステリを残していますが、その著作は現在本国イギリスでも入手困難なのだそうです。
一方日本国内においては、邦訳は3作品に止まっており、うち現在容易に入手できる作品は国書刊行会の世界探偵小説全集から刊行された「ジョン・ブラウンの死体」と長崎出版のGemコレクションより刊行された「死のチェックメイト」の2冊のみです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Triple Death | 1936 | - | |
2 | The Missing Rope | 1937 | - | |
3 | When the Devil Was Sick | 1939 | - | |
4 | The Case of the First-class Carriage | - | ||
5 | Death in the Diving-Pool | 1940 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | A Double for Detection | 1945 | - | |
2 | The Striped Suitcase | 1946 | - | |
3 | Clue Sinister | 1947 | - | |
4 | Over the Garden Wall (庭囲いの向うで) |
1948 | - | |
5 | Upstairs, Downstairs (Upstairs and Downstairs) (階上と階下) |
1950 | - | |
6 | Copy for Crime (犯罪コピー) |
- | ||
7 | It's Her Own Funeral (天罰覿面) |
1951 | - | |
8 | Crossed Skies (交叉したスキー) |
1952 | - | |
9 | Murder as a Fine Art (美術としての殺人) |
1953 | - | |
10 | A Policeman at the Door (訪れた警官) |
- | ||
11 | Impact of Evedence (衝撃となった証拠) |
1954 | - | |
12 | Murder Among Members (会員仲間の殺人) |
1955 | - | |
13 | Rigging the Evidence (証拠を捏造する) |
- | ||
14 | The Double Turn (The Late Miss Trimming) (二重返し) |
1956 | - | |
15 | Long Shadows (Affair at Helen's Court) |
1958 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Death of an Author | 1935 | - | |
2 | Murder at Mornington | 1937 | - | キャロル・カーナック名義 |
3 | The Burning Question (燃えあがる疑問) |
1957 | - | キャロル・カーナック名義 |
4 | Death in Triplicate (People Will Talk) |
1958 | - | |
5 | Death of a Lady Killer | 1959 | - | キャロル・カーナック名義 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 弔花はご辞退 | 1953 | 早川文庫113-1「殺意の海辺」 HMM'85.5 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Live Wire | 1939 | - | |
2 | Chance is a Great Thing | 1950 | - | |
3 | Death at the Bridge Table | - | ||
4 | Permanent Policeman | 1951 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Outer Circle | 1939 | - | キャロル・リヴェット名義 |
2 | Time Remembered | 1940 | - |
【参考】「ジョン・ブラウンの死体」(国書刊行会 世界探偵小説全集)
「ウィーンの殺人」(東京創元社 現代推理小説全集)