UK E・C・R・ロラック
(E. C. R. Lorac)
〔別名 キャロル・カーナック (Carol Carnac)〕

ジョン・ブラウンの死体
「ジョン・ブラウンの死体」
(1938年)
(国書刊行会)

 1930年初頭から1950年代末期にかけて活躍したイギリス本格黄金時代の女流作家で、本国イギリスではミステリーの女王アガサ・クリスティーやマージェリー・アリンガムと同格の存在と評されたほどの作家です。

 キャロル・カーナックという女性名義のペンネームでも作品を発表していましたが、長い間ロラック=キャロル・カーナックであることは隠されていて、そのためロラックは世間では男性作家だと思われていたそうです。 ちなみにロラック(Lorac)の名前の由来は、面白いことにキャロル(Carol)のスペルを逆さまにしただけです。

 その作風はアガサ・クリスティーに代表されるようなトリック・犯人あてやアリバイ崩し等を重視する典型的な謎解きミステリであり、探偵役のマクドナルド警部をはじめ、登場人物はやや地味かもしれません。

 しかしそのプロットの妙と文章構成の巧さ、それに結末の意外性で読者を唸らせ、本格ミステリとしては重厚で素晴らしい出来に仕上がっている作品が多いのが特徴といわれています。

死のチェックメイト
「死のチェックメイト」
(1944年)
(長崎出版)

 ちなみにロラックはキャロル・カーナック名義の作品も含めて70冊を超えるミステリを残していますが、その著作は現在本国イギリスでも入手困難なのだそうです。

 一方日本国内においては、邦訳は3作品に止まっており、うち現在容易に入手できる作品は国書刊行会の世界探偵小説全集から刊行された「ジョン・ブラウンの死体」と長崎出版のGemコレクションより刊行された「死のチェックメイト」の2冊のみです。


■作家ファイル■

本名
イディス・キャロライン・リヴェット (Edith Caroline Rivett)
出身地
イギリス、ロンドンのヘンドンに生まれる
学歴
ロンドン美術工芸中央学校卒
生没
1894年~1958年
作家としての経歴
1931
処女作「The Murder on the Burrows」をサンプスン・ロウ社から発表
1936
アガサ・クリスティー、ナイオ・マーシュらが属するコリンズ社に移籍し、「Crime Counter Crime」を発表する
シリーズ探偵
スコットランド・ヤードのロバート・マクドナルド警部 (Inspector Robert Macdonald)
リヴェット警部(キャロル・カーナック名義)
スコットランド・ヤードのジュリアン・リヴァーズ主任警部(キャロル・カーナック名義)
代表作
「セント・ジョンズ・ウッドの殺人」「悪魔対CID」
「医院の事件」「マッチの火の殺人」

■著作リスト■

1 ロバート・マクドナルド警部登場作品リスト

2 リヴェット警部登場作品リスト(キャロル・カーナック名義)

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Triple Death 1936 -
2 The Missing Rope 1937 -
3 When the Devil Was Sick 1939 -
4 The Case of the First-class Carriage -
5 Death in the Diving-Pool 1940 -

3 ジュリアン・リヴァーズ主任警部登場作品リスト(キャロル・カーナック名義)

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 A Double for Detection 1945 -
2 The Striped Suitcase 1946 -
3 Clue Sinister 1947 -
4 Over the Garden Wall
(庭囲いの向うで)
1948 -
5 Upstairs, Downstairs
(Upstairs and Downstairs)
(階上と階下)
1950 -
6 Copy for Crime
(犯罪コピー)
-
7 It's Her Own Funeral
(天罰覿面)
1951 -
8 Crossed Skies
(交叉したスキー)
1952 -
9 Murder as a Fine Art
(美術としての殺人)
1953 -
10 A Policeman at the Door
(訪れた警官)
-
11 Impact of Evedence
(衝撃となった証拠)
1954 -
12 Murder Among Members
(会員仲間の殺人)
1955 -
13 Rigging the Evidence
(証拠を捏造する)
-
14 The Double Turn
(The Late Miss Trimming)
(二重返し)
1956 -
15 Long Shadows
(Affair at Helen's Court)
1958 -

4 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Death of an Author 1935 -
2 Murder at Mornington 1937 - キャロル・カーナック名義
3 The Burning Question
(燃えあがる疑問)
1957 - キャロル・カーナック名義
4 Death in Triplicate
(People Will Talk)
1958 -
5 Death of a Lady Killer 1959 - キャロル・カーナック名義

【リレー長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 弔花はご辞退 1953 早川文庫113-1「殺意の海辺」
HMM'85.5

【短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Live Wire 1939 -
2 Chance is a Great Thing 1950 -
3 Death at the Bridge Table -
4 Permanent Policeman 1951 -

【少女小説】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Outer Circle 1939 - キャロル・リヴェット名義
2 Time Remembered 1940 -

【参考】「ジョン・ブラウンの死体」(国書刊行会 世界探偵小説全集)
「ウィーンの殺人」(東京創元社 現代推理小説全集)
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