UK グラディス・ミッチェル
(Gladys Mitchell)
〔別名 マルコム・トリー (Malcolm Torrie)〕

ソルトマーシュの殺人
「ソルトマーシュの殺人」
(1932年)
(国書刊行会)

 イギリスのファース派を代表する女流本格作家。 ロンドン大学で歴史学を学んだ後、教師として国語や歴史を教えるかたわらミステリーを発表します。後の1961年には教師を辞めて専業の作家となりました。

 シリーズ探偵は魔女の血を引き心理学者でもあるブラッドリー夫人で、彼女のミステリー長編の66作全てに登場します。

 この探偵の誕生の由来には著者自身中世以降の魔法に深い関心を持っていたことが影響しており、作品中には魔術や悪魔信仰などのオカルト的要素がふんだんに盛り込まれているのが特徴です。

 また彼女自身長年教師を勤めて子供に接する機会が多かったこともあり、子供たちの姿が活き活きと描かれているところにも特徴があります。

 他方で、妊娠中絶や性倒錯など、当時タブーとされてきた題材も扱っており、大人から子供まで安心して読めるクリスティーとはまさに対極にある作家といえます。

トム・ブラウンの死体
「トム・ブラウンの死体」
(1949年)
(早川書房)

 そのためかアメリカではあまり出版されなかったそうですが、本国イギリスでは非常に評価が高く、イギリス本格最後の担い手とまでいわれていたほどです。

 また、アントニイ・バークリー、ドロシー・L・セイヤーズらとともにミステリ作家の親睦団体〈ディテクション・クラブ〉の初期からのメンバーでもありました。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、オックスフォードシャーカウリー
学歴
ロンドン大学卒
生没
1901年4月21日~1983年7月27日
作家としての経歴
1929
ミセス・ブラッドリー夫人ものの長編「迅速な死」で作家デビューを果たす
1983
その後この年までに66編のミステリーと普通小説、児童書を含め約90冊の作品を発表する
シリーズ探偵
精神分析専門家ベアトリス・アデラ・レストレンジ・ブラッドリー夫人(Mrs. Beatrice Adela Lestrange Bradley)
史跡保存協会会長ティモシー・へリング(Timothy Herring)(マルコム・トリー名義)
代表作
「ソーホーの落日」「トム・ブラウンの死体」
「ソルトマーシュの殺人」「月が昇るとき」

■関連リンク■

1  海外サイト「Gladys Mitchell Tribute site


■著作リスト■

1 ブラッドリー夫人登場作品リスト

2 ティモシー・へリング登場作品リスト

全てマルコム・トリー(Malcolm Torrie)名義

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Heavy as Lead 1966 -
2 Late and Cold 1967 -
3 My Secret Friend 1968 -
4 Churchyard Salad 1969 -
5 Shades of Darkness 1970 -
6 Bismark Herrings 1971 -

3 その他の作品

【普通小説】

全てスティーヴン・ホッカビー(Stephen Hockaby)名義

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Marsh Hay 1933 -
2 Seven Stars and Orion 1934 -
3 Gabriel's Hold 1935 -
4 Shallow Brown 1936 -
5 Grand Master 1939 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Sleuth's Alchemy: Cases of Mrs. Bradley and Others 2005 - ブラッドリー夫人もの他
1 百匹の猫の事件 1938 創元推理文庫104-27「犯罪の中のレディたち/下」('79) ブラッドリー夫人
2 Daisy Bell 1940 - ブラッドリー夫人
3 Strangers' Hall 1950 - ブラッドリー夫人
4 A Light on Murder
灯台の殺人
HMM'94.3 ブラッドリー夫人
5 Rushy Glen -
6 Juniper Gammon -
7 Manor Park -
8 The Jar of Ginger 1951 -
9 The Knife -
10 Practical Joke -
11 Our Pageant -
12 The Tree -
13 Sammy -
14 Peach Jam -
15 The Plumb-Line -
16 Haunted House 1952 -
17 The Falling Petals -
18 The Price of Lead -
19 The Spell -
20 A Bit of Garden -
21 The Swimming Gala -
22 The Tooth-Pick -
23 The Bodkin -
24 The Boxer 1953 -
25 The Visitor -
26 Oversight -
27 The Manuscript -
28 The Fish-Pond -
29 Alibi -
30 The Vacuum Cleaner -
31 Arsenic in the House 1956 -

【リレー長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 警察官に聞け 1933 早川文庫99-1
HMM'84.1-6
ブラッドリー夫人も登場
2 弔花はご辞退 1953 早川文庫113-1「殺意の海辺」
HMM'85.5

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Most Asked Question: Why Do People Read Detective Stories?
よく訊かれる質問─なぜ、人は推理小説を読むのだろう?
1977 集英社「ミステリー雑学読本」('82) エッセイ

【児童書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Outlaws of the Border 1936 -
2 The Three Fingerprints 1940 -
3 Holiday River 1948 -
4 The Seven Stone Mystery 1949 -
5 The Malory Secret 1950 -
6 Pan at Storne Castle 1951 -
7 Caravan Creek 1954 -
8 On Your Marks -
9 The Light-Blue Hills 1959 -

【参考】「月が昇るとき」(晶文社 晶文社ミステリ)
access-rank


TOPへ