イギリスの本格作家。ミステリ作家としてだけではなく山岳界でもかなり知られた人物だったらしく、邦訳はありませんがその方面でも多数の著作を残しているそうです。
ちなみにグリン・カーのペンネームはミステリを書くときにだけ使われていて、本名で数多くの歴史小説や冒険小説を残しています。
登山家・冒険家としての活躍も目覚ましく、第二次大戦が終わり海軍を除隊し、フルタイムの作家となってからも北極探検隊を二度指揮し、ヒマラヤにも遠征しています。
ミステリ作品も彼のこういった山岳家・冒険家としての経験や知識が活かされていて、ノルウェーやチロル、エベレストといった世界各地の山々を舞台に雄大なスケールで物語が展開されていくところに最大の魅力があります。
またこういったリアリティ溢れる魅力的な舞台設定にクロフツばりのアリバイ崩しや犯人あてなどの謎解き要素も盛り込まれており、本格ファンを充分満足させてくれる作家の一人だといえます。
探偵役はシリーズを通じてシェイクスピア俳優兼舞台監督のアバークロンビー・リューカーで、初期のスタイルズ名義の作品から登場しますが、当初はどちかというと冒険小説やスリラーの要素が濃く、グリン・カー名義で書かれるようになった第四作目から謎解き重視の本格ミステリに変貌を遂げました。
そして、このグリン・カー名義での第1作「Death on Milestone Buttress」は〈サンデー・タイムズ〉紙のミステリ書評でも絶賛されたといわれ、その後も1969年までに「マッターホルンの殺人」などの傑作長編を発表し続けています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Dark Hazard | 1948 | - | ショーウェル・スタイルズ名義 |
2 | The Rising of the Lark | - |
【参考】「マッターホルンの殺人」(新樹社 新樹社ミステリー)