UK ヘスキス・プリチャード
(Hesketh Prichard)
〔別名 E&H・ヘロン (E. and H. Heron)〕

ノヴェンバー・ジョーの事件簿
「ノヴェンバー・ジョーの事件簿」
(1913年)
(論創社)

 イギリスの小説家で、E&H・ヘロン名義はヘスキス・プリチャードと、彼の母親であるキャサリン・オブライエン・プリチャードとの合作名義です。

 インドに生まれますが、軍人だった父親が彼の生まれる6週間前に他界したため、生まれて間もなくイギリスへと帰国。やがてオックスフォード大学を卒業し、2メートル近い身長の立派な体格に成長したため陸軍に志願しますが、心臓に欠陥のあることが判明して入隊を断念せざるを得ませんでした。

 1891年、19歳の時にスペインからポルトガル、モロッコを周る長旅に出ますが、その道中でサイキック探偵フラクスマン・ロウの登場するミステリを書き上げます。そして帰国後しばらくは母親とともに合作で〈コーンヒル〉などの雑誌にロマンス小説を発表していましたが、1897年になると一つの人生の転機を迎えます。

 その年の2月に〈コーンヒル〉の主催する晩餐会に出席した所、そこでシャーロック・ホームズの生みの親であるアーサー・コナン・ドイルと、アーサー・ピアスンの二人と知り合います。そしてドイルから激励を受けたプリチャードは、ピアスンが前年に創刊した〈ピアスン・マガジン〉に長旅の際に構想を得ていたロウ物の短編を発表することになったのです。

シャーロック・ホームズのライヴァルたち2
「シャーロック・ホームズの
ライヴァルたち2」
(早川書房)

 それから1898年の1月から6月号にかけて〈ピアスン・マガジン〉にロウものの短編が掲載されますが、毎回掲載されるS・E・ミンズの挿絵や事件の舞台となる幽霊屋敷の写真の効果もあって大人気となり、プリチャードは一躍オカルト・サイキック探偵の先駆者として世間に知れ渡ったのです。
   その後人気に応えて1899年には1~6月号に新作が発表され、同じ年に最初の6編と合わせて短編集「Ghosts」が刊行されています。

 ロウものの短編で人気作家となったプリチャードは、再びピアスンの要請で今度は大衆誌〈デイリー・エクスプレス〉に外国を舞台にした旅行記を連載。
 そしてカナダの山地を旅した経験をもとに、今度はきこりの名探偵ノーヴェンバー・ジョーを創造し、こちらも人気を集めました。ちなみに短編集「ノヴェンバー・ジョーの事件簿」はクイーンの定員にも選ばれています。

 他にもスペインを舞台に、勧善懲悪のロマンティックな山賊ドンQの活躍するシリーズがあり、こちらは長編が1925年に映画化されています。


■作家ファイル■

本名
Hesketh Vernon Hesketh-Prichard
出身地
イギリス(インド北部のジャンシ生まれ)
学歴
オックスフォード大学卒
生没
1876年11月17日~1922年6月14日
作家としての経歴
1898
〈ピアスン・マガジン〉の1月から6月号にかけてオカルト探偵フラクスマン・ロウの活躍する短編を発表し、人気を集める
1899
再び〈ピアスン・マガジン〉の1月から6月号にかけてロウものの短編が掲載される。同年これらの12編を収録した短編集「Ghosts」が刊行される
1913
きこりの名探偵ノーヴェンバー・ジョーの活躍する短編集「ノヴェンバー・ジョーの事件簿」を刊行
シリーズ探偵
ノーヴェンバー・ジョー (November Joe)
オカルト探偵フラクスマン・ロウ (Flaxman Low)(E&H・ヘロン名義)
侠山賊ドンQ (Don Quebranta Huesos (Don Q))(K&H・プリチャード名義)
代表作
【フラクスマン・ロウ】
「Ghosts」(短編集)
【ノーヴェンバー・ジョー】
「ノヴェンバー・ジョーの事件簿」(短編集)

■著作リスト■

1 ノーヴェンバー・ジョー登場作品リスト

2 オカルト探偵フラクスマン・ロウ登場作品リスト

3 侠山賊ドンQ登場作品リスト

K&H・プリチャード名義(キャサリン・オブライエン・プリチャードとの合作)

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Don Q's Love Story 1909 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Chronicles of Don Q. 1904 -
1 The Parole of Gevil-Hay
侠山賊ドン・クー
1903 新青年'23.1増刊
2 How Don Q. Dealt with Don Luis -
3 How Don Q's Sword Was Drawn for the Queen -
4 The Ears of the Governor -
5 The Dark Brothers of the Civil Guard -
6 A Three-Cornered Game -
7 A King of Finance 1904 -
8 How M. Blufort Pained for His Right Hand -
9 How Don Q. Paid for His Cigarettes -
10 How Don Q. Had Dealings with a Usurer -
11 How Don Q. Fought for His Name -
12 How Don Q. Stood at Bay -
2 The New Chronicles of Don Q.
(米 Don Q. in the Sierra)
1906 -
1 How Don Q. Came Back 1905 -
2 How Don Q. Dealt with a Famous Cricketer -
3 How Don Q. Dealt with a Thief -
4 How Don Q. Had Need of a Surgeon -
5 How Don Q. Fought for the Valderejos -
6 How Don Q. Dealt with Professor Japsley, F. R. S., Ph. D 1906 -
7 How Don Q. Kept Christmas 1905 -
8 How Don Q. Was Asked in Marriage 1906 -
9 How Don Q. Became a Squire of Dames -
10 How Don Q. Ateended a Bull-Fight -
11 How Don Q. Played Substitute -
12 How the End Came -

4 その他の作品

K&H・プリチャード名義(キャサリン・オブライエン・プリチャードとの合作)

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 A Modern Mercenary 1899 -
2 Karadac 1901 -
3 The Cahusac Mystery 1912 -

access-rank


TOPへ