タイタニックとともに沈んだ悲運の作家
アメリカのミステリー作家で、〈思考機械〉シリーズの作者として知られています。ちなみに同シリーズは不可能趣味を扱った作品が多かったことも手伝ってか、同時代の”ホームズのライヴァル”と呼ばれる作家たちの中でも特に傑出した人気を誇りました。
また不可能犯罪の巨匠として人気の高かった黄金時代の推理小説家ジョン・ディクスン・カーも彼を激賞し、彼の代表作として「紅い糸」と「燃える幽霊」の2つの短編小説を挙げています。
ジョージア州のパイク・カウンティに生まれ十代でジャーナリズムの世界に入り、結婚してボストンに居を構えた後、《ボストン・アメリカン》紙の編集にかかわります。
そして1905年10月30日日曜日、その紙上で密室からの脱出をテーマにした「十三号独房の問題」が6回にわたり連載されました。これが思考機械のデビュー作です。
ちなみにこの作品の発表当時には読者から有効な脱出法を募り、百ドルの懸賞広告まで出されたのだそうです。
また、フットレルはミステリ以外にも歴史小説や恋愛小説も書いており、英米ではそれらの分野でも有名でした。そして思考機械ものの中には妻であり作家でもあるメイ夫人と合作した作品もあります。
1912年4月、イギリスからアメリカへと帰る途中、あのタイタニック号の沈没事故に遭遇し、フットレルは夫人を救命ポートにおしやって、6編の未発表原稿とともに37歳の若さでこの世を去りました。
思考機械シリーズは新聞紙上に連載されたまま単行本に未収録の作品もかなりあり、全部で50編ほどあるといわれています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Simple Case of Susan | 1908 | - | |
2 | Elusive Isabel (英 The Lady in the Case) |
1909 | - | |
3 | The High Hand (英 The Master Hand) |
1911 | - | |
4 | My Lady's Garter | 1912 | - | |
5 | Blind Man's Buff | 1914 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Diamond Master | 1909 | - | 1912年刊行の英版は思考機械ものを1編併録 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Mystery of the Room 666 (The Statement of the Accused) |
1973 | - | ホテル警備員ギャロンもの |
2 | The Great Suit Case Mystery 大型スーツケースの謎 |
1997 | HMM'99.10 | シャーロック・ホームズもののパスティーシュ |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Titanic Murders タイタニック号の殺人 |
1999 | 扶桑社ミステリー('07) | マックス・アラン・コリンズ著 1912年のタイタニック号沈没事故をモチーフにフットレルを探偵役に据えた歴史サスペンス |
【参考】「思考機械」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)