タイトル | 学校の殺人 |
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原題 |
Was It Murder? (Murger at School) | ||
発表年 |
1932 | ||
著者/訳者/解説 |
ジェームズ・ヒルトン/龍口直太郎/中島河太郎 | ||
カバーデザイン |
イラスト 西山くに子/デザイン 小倉敏夫 | ||
ページ数 |
330 | ||
あらすじ(解説文) |
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出版 |
東京創元社 創元推理文庫117-1 |
本書は世界的文豪ジェームズ・ヒルトンが書き下ろした唯一の長編推理小説。ミルンの『赤い館の秘密』やモームの『秘密諜報部員』と並ぶ、『チップス先生さようなら』や『鎧なき騎士』の著者の、異色の本格作品である。私立学校に起こった怪死事件をさぐる文学青年コリン・レヴェルを主人公にした本書を、ヴィンセント・スターレットは「類型を脱した、第一級の傑作」と絶賛した。 | |
初版 |
1960年 | ||
重版 |
1993年23版(530円) | ||
入手 |
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ISBN |
4-488-11701-5 |
世界的文豪として名高いジェームズ・ヒルトンがまだその名声を博する前の不遇の時期に書いた唯一の推理長編ですが、やはり後に世界的に有名になったのも頷けるような文章運びの上手さとテンポの良さで、どんどんと読み進めていくことができました。この時代のイギリスの学生生活(キャンパスライフ)も垣間見ることができて、その意味でも興味深い作品です。
トリック的に何か大きなものがある訳でもないですし、犯人の意外性とかどんでん返しとか、本格ミステリとして大がかりな仕掛けというのはありません。
しかしとにかく物語の構成が上手くプロットがしっかりとよく練られ、登場人物も巧みに整理されていますので非常に読み易くかつ楽しむことができました。またラストの犯人を暴くシーンもサスペンスフルに描かれ、スリルがあってとても読み応えがありました。
少ない登場人物の中で上手にプロットを組み立てて読者を上手く騙すという作業は、登場人物を安易に多くして読者をいたずらに混乱させ、犯人当てを難しくすることに比べれば遥かに大変なことであり、そのように少ない登場人物でもって読者を惑わすことが出来るヒルトンの技量にはただただ脱帽しました。大仕掛けはないものの読み易く非常にバランスの取れた作品であり、シリーズ探偵が登場しないのは残念ではあるのですが、この作品はミステリの基本書として推薦するのにふさわしい傑作だと私は思います。