現代イギリスで歴史本格推理を得意とするポール・ドハティーやサプライズ・エンディングの名手である女流本格作家のグウェンドリン・バトラーとともに、質の高い本格ミステリを数多く送り出している女流作家です。
スコットランド西部に生まれ、イングランドの鉄鋼の町コービーの専門学校を卒業の後、法律事務所の秘書を経てブリティッシュ・スチール社という鉄鋼会社に入社します。
そしてその鉄鋼会社で働くかたわらBBC主催の短編コンテストに普通短編小説を発表してこれが見事に入賞。その後専業作家となり、1983年ロイド&ヒルの活躍する第1長編「パーフェクト・マッチ」でミステリ作家としてデビューを飾ります。
「きわめて伝統的なフーダニットミステリを書くように心がける」という彼女の言葉どおり、計算し尽くされた綿密なプロットをもとにラストにどんでん返しを見せる…というのが彼女の作品における一貫した特徴で、これは頭では分かっていても実際に書いてみるとなかなかできることではない、そんな謎解きミステリの基本をしっかり抑えている所に実力の程が窺い知れます。
トリックそのものは極めて単純ではあるものの、叙述の仕方が極めて優れているため、なかなか容易に見抜けない、まさに〈ミステリーの女王〉と謳われたアガサ・クリスティーを髣髴とさせる女流作家です。
「パーフェクト・マッチ」以後もロイド&ヒルの活躍する作品の他、ノンシリーズ作品も多数発表しており、中でも「騙し絵の檻」はサプライズ・エンディングの傑作として各方面から高い評価を得ています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Record of Sin | 1985 | - | |
2 | An Evil Hour | 1986 | - | |
3 | 騙し絵の檻 | 1987 | 創元推理文庫112-4 | |
4 | Murder Movie | 1990 | - | |
5 | 幸運の逆転 | 1992 | 早川文庫ミステリアス・プレス80 | エリザベス・チャップリン名義 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 芸術としての殺人 | 早川文庫「わが手で裁く」('90) |
【参考】「パーフェクト・マッチ」(東京創元社 創元推理文庫)