聖者(セイント)の生みの親

USA レスリー・チャータリス
(Leslie Charteris)

聖者ニューヨークに現わる
「聖者ニューヨークに現わる」
(1935年)
(早川書房)

 アメリカの推理小説家で、シンガポールに生まれ、後にアメリカに帰化した怪盗小説〈サイモン・テンプラー〉シリーズの生みの親です。

 サイモン・テンプラー・シリーズは、E・W・ホーナングの〈義賊ラッフルズ〉、モーリス・ルブランの〈怪盗紳士アルセーヌ・ルパン〉、F・I・アンダースンの〈怪盗ゴダール〉、エドガー・ウォーレスの〈フォア・スケア・ジェン〉とともに、五大義賊物の一作品に挙げられます。

 中国人外科医を父に、イギリス人を母親に持ち、イギリスで教育を受けます。 7歳にして物書きをはじめ、11歳の時には詩集を発表し、17歳の時にはもう初めての原稿料をもらっていたといいます。

 ケンブリッジ大学に進んだ後も文学熱は衰えず、作家を志しますが、作家という職業を快く思っていなかった父親の強い反対もあり、大学を中退しマレーに単身帰国します。
その後は自ら生計を立てるためマレーのゴム園や錫鉱山、真珠貝の採集、貨物船の船員、酒場のバーテン、賭博場の従業員など様々な職場で様々な職業に就きますが、この時の経験が後の作家活動に役立ったと言われています。

奇跡のお茶事件
「奇跡のお茶事件」
(1939年)
(新潮社)

 1928年、聖者(セイント)ことサイモン・テンプラー・シリーズの第1作「虎との遭遇」を発表し、これが好評を博し、1943年にはハリウッドで映画化もされて、自身もアメリカに住むようになります。1946年にはアメリカへ帰化しました。

 以後はアメリカに定住して映画関係の仕事もしながら、この〈セイント・シリーズ〉を中短長編合わせて50冊ほど発表しました。

 ウィットに溢れテンポのよいストーリー展開の中に現代のロビンフッドを活躍させ、犯罪社会や支配階級を見事に描き出したこのシリーズは全世界で人気を博し、何度も映画化もされています。

 1953年から67年にかけては〈セイント・ミステリー・マガジン〉を刊行。1992年には長年の功績に対してイギリス推理作家協会(CWA)からダイヤモンド・ダガー賞が贈られています。


■作家ファイル■

誕生名
レスリー・チャールズ・ボウヤー・イン(Leslie Charles Bowyer Yin)
出身地
シンガポール(1946年にアメリカへ帰化)
学歴
ケンブリッジ大学キングズ・カレッジ中退
生没
1907年5月12日~1993年4月15日
作家としての経歴
1928
サイモン・テンプラーシリーズ第1作「虎との遭遇」を発表
以後テンプラーの活躍するシリーズを50冊以上刊行
1992
イギリス推理作家協会(CWA)賞ダイヤモンド・ダガー賞を受賞
シリーズ探偵
聖者サイモン・テンプラー (Simon Templar, the Saint)
ビル・ケネディ (Bill Kennedy)
代表作
「聖者ニューヨークに現わる」
「奇跡のお茶事件」(中編)

■著作リスト■

1 聖者サイモン・テンプラー登場作品リスト

2 ビル・ケネディ登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 X Esquire 1927 -
2 The White Rider 1928 -

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Daredevil 1929 -
2 The Bandit
(The Black Cat)
-
3 Juan Belmonte, Killer of Bulls 1937 -
4 Spanish for Fun 1964 -
5 Paleneo: A Universal Sign Language 1972 -

【中編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Lady on a Train 1945 -

【短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Pearls in Pacific 1923 -
2 One Crowded Hour 1925 -
3 Bright Young People 1928 -
4 The Man Who Was Arrogant -
5 Ghost Story 1931 -
6 The Human Torch 1945 -
7 Murder by Television 1946 -
8 The Sin of Brother Clarence 1947 -
9 Hans Schmidt-Minister of Murder -
10 Steven Berrie-The Amorous Psalm Singer 1948 -
11 Reverend Hinshaw-A Saintly Devil -
12 Fish Story
魚怪
1953 ハヤカワSFシリーズ3008「宇宙の妖怪たち」('58)
13 The Corpse in the Belfry 1954 -
14 The Red Fox of the Cumberlands 1955 -
15 That's Arson, Parson 1956 -
16 The James Bond Phenomenon 1965 -
17 Recommending the Two-Carr Library 1966 -

【編書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Saint's Choice
(The Saint Magazine Reader)
1966 - 19編
2 The Saint: Good as Gold 1979 - 4編

【その他の著書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 How I Unmade Histroy 1951 -
2 I am a Reformed Wine Snob 1956 -
3 I'd Rather Fly 1961 -

【関連書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Hindenburg Murders
ヒンデンブルク号の殺人
2000 扶桑社ミステリー('07) マックス・アラン・コリンズ著
1937年のヒンデンブルク号爆発事故をモチーフにチャータリスを探偵役に据えた歴史サスペンス

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