少女ミステリー界のクリスティー
アメリカの女流作家で、少女向けのミステリである〈少女探偵ジュディ〉シリーズを発表してアメリカの少女の間で絶大な人気を集めました。
同じアメリカの作家で少女探偵の活躍するキャロリン・キーンの〈少女探偵ナンシー・ドルー〉シリーズとよく比較されますが、どちらのシリーズも1930年前後に最初の作品が書かれてから数十年に渡って少女たちの間で愛読され続けてきた人気作品です。
ニューヨークに生まれ、10歳の頃に「小公子」(1886)・「小公女」(1905)などの児童文学でも有名なイギリスの女流作家F・H・バーネットの書いた「秘密の花園」を読んで感銘を受け、それ以来毎日のように図書館に通って数多くの物語を読み漁るようになったといいます。
ちなみにバーネットの「秘密の花園」(1911)という作品は、両親を失ったり病弱であったりという逆境の中で暮らす子どもたちが、美しい自然と優しい人間関係の中でたくましく成長していくというヒューマニズム溢れる物語ですが、このような優れた作品を数多く読んでいく中で、やがてただ読むだけでは満足できなくなり自ら物語を書いてみようと決心したのだといいます。
そして1932年、30歳の時に少女探偵ジュディ・ボルトンを主人公とするジュヴナイル・ミステリー長編「消える影の謎(探偵少女ジュディー)」を発表。これが好評を博して、以後1967年までに35年間かけてジュディを主人公とするシリーズを38冊発表しています。
この少女探偵ジュディ・ボルトンのシリーズは、変化に富んだ物語展開で読んでいてとてもドキドキハラハラさせられるというように優れたミステリ作品として楽しめるのはもちろんなのですが、それだけではなく、平凡だが明るく健康的で、どんな困難にも負けないで頑張るジュディのひたむきな姿と、彼女を中心とする少女たちの心理が生き生きと描かれていて、同世代の少女たちに深い感動と共感を与えてくれる心温まる物語でもあるのです。
ジュディ・シリーズはデビューから70年以上が経った今でも全く色褪せることなく、世界中のあらゆる家庭の少女たちに安心して読まれるミステリー・シリーズとして定着しているのも、この作品が少女たちの心理をよく捉えているからに他ならず、これからも変わらず根強い人気と支持を集めていくことでしょう。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Magic Makers and the Bramble Bush Man | 1936 | - | |
2 | The Magic Makers and the Golden Charitz | - | ||
3 | The Magic Makers in Backwards Land | - | ||
4 | Kay Darcy and the Mystery Hideout | 1937 | - | |
5 | Baby's Day in Rhymes and Pictures | 1938 | - | Pelagie Doaneとの合作 |
6 | Summer on the Farm | - | ||
7 | Lollypop: The True Story of a Little Dog | 1939 | - | |
8 | A Shepherd Boy of Australia | 1941 | - | |
9 | Jemima, Daughter of Daniel Boone | 1942 | - | |
10 | Tommy True: A Little Boy Who Was Hungry | - | ||
11 | Two Boys of the Ohio Valley | 1943 | - | |
12 | Gail Gardner Wins Her Cap | 1944 | - | |
13 | Gail Gardner, Junior Cadet Nurse | 1945 | - | |
14 | Who Will Play With Me? | 1953 | - | |
15 | Palace Wagon Family | 1957 | - | |
16 | The Weed Walk | 1965 | - |
【参考】「探偵少女ジュディー」(講談社 世界少女小説全集)
「幽霊面」(ポプラ社 ジュニア世界ミステリー)