ネオ・ハードボイルドの代表的作家
アメリカのミステリー作家で、いわゆる〈ネオハードボイルド〉の代表的作家の一人として知られています。
マサチューセッツ州に生まれ、5才から高校卒業まではアメリカ中北部インディアナ州の州都インディアナポリスに在住していました。
ハーバード大学を卒業の後はコネティカット州やニューヨーク州で高校教師として教鞭と執っていましたが、1965年に結婚した夫人から贈られたレイモンド・チャンドラーの作品を読んだことがきっかけでハードボイルドに目覚めたのだといいます。
やがて1971年に夫人の母国イギリスのサマセットに移住すると、バスケットのコラムニストの傍ら小説を書き始め、同年長編「A型の女」でミステリ作家としてデビュー。
時代と社会を投影し、アメリカの家庭の悲劇を文学的タッチで描いて一時代を築いたハードボイルドの巨匠ロス・マクドナルドのスタイルを受け継いだ作風で人気を集め、以後もアメリカ社会の変革と共に作風を変化させつつも、主に第1作に登場した私立探偵のアルバート・サムスンを主人公に質の高いハードボイルド作品を多数発表しています。
リューイン作品で主に探偵役を務めるのは、彼が幼少を過ごしたインディアナポリスで探偵事務所を開いている私立探偵のアルバート・サムスンですが、彼は従来のハードボイルド探偵に数多く見受けられるような飲んだくれでもなければタフガイでもなく、武器も持たず暴力に訴えることもない、いたって常識的な探偵です。
そして扱う事件も暗黒街のギャングの犯罪などではなく、一般市民の犯罪を描いたものばかりであり、また作品では必ずといっていい程子供が事件に絡んできますが、それと同時にミステリとしての重要な要素の一つである謎解きや意外性の面白さも持ち合わせている所に大きな特徴があります。
この点このシリーズは社会性を深く掘り下げた内容のためか作品数は決して多くありませんが、どれも水準以上の出来栄えだと評論家からも高く評価されています。
またもう一つの代表的シリーズとしてインディアナポリス市警失踪人課の中年刑事リーロイ・パウダー警部補が活躍するシリーズがありますが、こちらはまるで警察小説を思わせるように様々な事件が錯綜するモジュラー型のハードボイルドで、第1作目の「夜勤刑事」ではサムスンも脇役として登場しています。
他にも1988年の短編作品「ファミリー・ビジネス」に初登場した英国バースで親子三代に渡って探偵事務所を経営するイタリア系家族の活躍を軽妙なタッチでユーモラスに描いたルンギ一家のシリーズや、サムスンの恋人で子連れの女性ソーシャルワーカーのアデル・バフィントンが主人公として活躍する「赤ん坊」など、様々なジャンルの作品を精力的に発表しています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 夜勤刑事 | 1976 | 早川文庫165-6 HPB1427 |
アルバート・サムスンも脇役として登場 |
2 | 刑事の誇り | 1982 | 早川文庫165-7 HPB1495 |
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3 | 男たちの絆 | 1986 | 早川文庫165-8 HPB1519 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 季節の終り | 1984 | 早川文庫165-9 HPB1532 |
アルバート・サムスンもの 脇役として登場 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 探偵学入門 | 2001 | 早川文庫362-5 現代短篇の名手たち5 HPB1754 |
ルンギ探偵事務所6編他全21編(文庫版はルンギ6編割愛の全15編) | |
1 | 夜勤 | 1999 | HMM'99.8 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 911 | 2005 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 探偵家族 | 1995 | 早川文庫165-12 HPB1655 |
|
2 | Family Planning 探偵家族/冬の事件簿 |
1999 | HPB1746 | |
3 | Family Way | 2011 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 探偵学入門 | 2001 | HPB1754 | パウダー1編他 全21編 |
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1 | Family Business ファミリー・ビジネス |
1988 | 早川文庫「わが手で裁く」('90) HMM'90.1 |
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2 | Wedding Bells ウェディング・ベル |
1990 | |||
3 | Gains and Losses 利益と損失 |
1993 | |||
4 | Travel Plans 旅行計画 |
1994 | |||
5 | Pay Phone 共用電話 |
2001 | HMM'01.12 | ||
6 | Gun Point 銃で脅されて |
2000 | HMM'00.9 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | And Maybe More | 2005 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Next Man | 1976 | - | ノヴェライゼーション |
2 | Outside in 表と裏 |
1980 | HPB1688 | |
3 | Underdog 負け犬 |
1993 | HPB1626 | |
4 | Cutting Loose カッテイングルース |
1999 | 理論社(上下)('06) | |
5 | Oh Joe | 2008 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Telling Tails | 1994 | - | ||
2 | Rover's Tales のら犬ローヴァー町を行く |
1998 | 早川書房('00) | 連作短編集 | |
3 | 探偵学入門 | 2001 | 早川文庫362-5 現代短篇の名手たち5 HPB1754 |
パウダー1編、ルンギ探偵事務所6編他、全21編(文庫版はルンギ6編割愛の全15編) | |
1 | 探偵をやってみたら (仕方なく探偵をやってみたら) |
1984 | 早川文庫「探偵をやってみたら」('86) 早川文庫「探偵は眠らない/下」('86) HPB1505「現代イギリス・ミステリ傑作集3」('88) HMM'85.9 |
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2 | イギリスは嫌だ | 1993 | EQ'93.11 | ||
3 | ダニーのお手柄 | 1991 | HMM'04.6 | 副大統領ダニー(Dan Quayle) | |
4 | ダニー、職分を果たす | 1992 | 副大統領ダニー(Dan Quayle) | ||
5 | 旅行者 | 1993 | |||
6 | 女が望むもの | 1994 | |||
7 | ボス | 1993 | |||
8 | まちがい電話 | 1981 | 早川書房「ミステリ・ウェイヴ」('83) HMM'82.3 |
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9 | 恩人の手 (食べ物をくれた手) |
1994 | HMM'98.7 | のら犬ローヴァー(Rover a Dog) | |
10 | ヒット (ザ・ヒット) |
1994 | バベル・プレス「本の殺人事件簿1」('01) | ||
11 | 偶然が重なるときには | 2001 | HMM'02.9 | ||
12 | 少女と老人のおはなし | 1992 | |||
13 | 風変わりな遺言 | 1994 | HMM'94.6 | ||
14 | ミスター・ハード・マン | 2001 | HMM'03.9 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Loss Factor | 1975 | - | |
2 | Students of Disaster | 1978 | - | |
3 | Silent Testimony 物言わぬ証人 |
1982 | HMM'83.3 | |
4 | At Home | 1989 | - | |
5 | The Truth | 1992 | - | |
6 | In Mitigation | 1993 | - | |
7 | Kitty Kitty 子猫よ、子猫 |
1993 | HMM'93.10 | |
8 | Blood Blue | 1994 | - | |
9 | Cormorants 強欲者たち |
扶桑社ミステリー「ロンドン・ノワール」('03) | ||
10 | Dr. Bud, CA | - | ||
11 | Cross, Rems Of | 1995 | - | |
12 | Oil And Water | 1999 | - | |
13 | Backing | - | ||
14 | Backwater | - | ||
15 | Rover | 2003 | - | |
16 | Cigarettes | 2004 | - | |
17 | The Jane Case | 2005 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 1st Culprit: A Crime Writers' Association Annual | 1992 | - | リザ・コディとの共編 |
2 | 2nd Culprit: A Crime Writer's Annual | 1993 | - | リザ・コディとの共編 |
3 | 3rd Culprit: A Crime Writers' Annual | 1994 | - | リザ・コディとの共編 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | How to Beat College Tests | 1970 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Soft-Boiled but Still an Egg 半熟でも卵は卵 |
1977 | 集英社「ミステリー雑学読本」('82) | ノンフィクション |