複数の作家がハウスネームの名の下に執筆を担当
アメリカの国民的ヒーローとして有名なキャラクターである〈ニック・カーター〉シリーズを手がけるアメリカの小説家。
もっとも実際にそのような名前の作家が存在していたのではなく、実はニック・カーターというのはハウスネームで、現在までに相当数の作家が実作を担当しているそうです。そしてその最初の作家として生みの親となったのはジョン・ラッセル・コリエル(1848~1924)だと言われています。
当時新しい探偵を求めていたストリート&スミス社の青年社長オーモンド・スミスの執筆の依頼を受けたコリエルが、〈ニューヨーク・ウィークリー〉誌の1886年の9月18日号に老探偵ジム・カーターの息子として登場させたのが初登場だったそうです。
しかしコリエルはカーターものを3作品しか書かず、その後このキャラクターが爆発的な人気を集めるようになったのは、スミス社長が同じキャラクターを使用して冒険物語を書くようにフレデリック・ダイ(1865~1922)に依頼し、〈ニック・カーター・ディテクティヴ・ライブラリー〉として再デビューさせてからでした。
その後はトーマス・C・ハーボー、ユージーン・T・ソーヤー、ジョージ・C・ジェンクス、フレデリック・W・デイヴィス、W・バート・フォスター等が次々と書き継いでいき、1909年にはフランスで映画化もされたりしていますが、やがて1960年代に入ると、青年探偵からプレイボーイ・スパイとしてペイパーバック・ヒーローに転身を遂げ、〈キルマスター〉シリーズとして1990年頃まで250以上の作品で大活躍を見せてくれます。
時代とともに冒険的要素の強い作品へと変貌を遂げていきますが、初期のカーター譚は探偵的要素が強く、シャーロック・ホームズの強力なライヴァルとして歴史的にも重要なキャラクターの一人と言えます。