老嬢探偵もので人気の女流本格作家
イギリスの女流本格推理小説家。ミステリの女王アガサ・クリスティーの生み出した老嬢探偵ミス・マープルと肩を並べるほどの人気を誇った老嬢探偵ミス・シルヴァーもののシリーズの作者として欧米ではよく知られています。
インドに生まれ、1910年代前半から歴史小説を書き始めて作家としてのスタートを切り、1920年代に入るとロマンス小説の分野に転向。
それから間もない1923年になると今度はミステリの分野に進出。長編「The Astonishing Adventure of Jane Smith」を刊行してミステリ作家としてデビューを果たします。
そして1928年にはミス・シルヴァーが初登場する長編「Grey Mask」を発表し、以後彼女が亡くなる1961年までに計30冊以上のミス・シルヴァーものを書き続けますが、このシリーズは女性探偵もののシリーズの中でも特に高い評価と幅広い支持を獲得しました。
その作風はオーソドックスな謎解きミステリですが、それに加えて登場人物たちの間に生まれるロマンスを女性作家特有の細やかなタッチで描くのが大きな特徴です。
また有閑階級に起きた事件を題材にし、残酷・暴力的なシーンや性的なシーンなどは一切排除し、ほのぼのとした雰囲気で物語が語られていくため、現在アメリカの女流本格作家の大半を占める〈コージー・ミステリ〉と位置づけられることも多いようです。読後感も心地良く、気楽に読むミステリとしてはうってつけといえるでしょう。
欧米では大変な人気を誇ったこのミス・シルヴァー・シリーズですが、日本国内ではなぜか紹介される機会がなく、僅かにマリオン・マナリングの書いたポアロやクイーンなど錚々たる名探偵たちの登場するパロディ長編「殺人混成曲」(ハヤカワポケットミステリ482)の中で名前が見られるぐらいでした。
しかし喜ばしいことに近年になってようやく論創社より代表作の一つである長編「ブレイディング・コレクション」が刊行されました。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Fool Errant | 1929 | - | |
2 | Danger Calling | 1931 | - | ベンボー・スミスとの共演 |
3 | Walk with Care | 1933 | - | |
4 | Dead or Alive | 1936 | - | |
5 | Rolling Stone | 1940 | - | |
6 | Pursuit of a Parcel | 1942 | - | アーネスト・ラム警部 フランク・アボット巡査部長 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Danger Calling | 1931 | - | フランク・ギャラット大佐との共演 |
2 | Walk with Care | 1933 | - | |
3 | Down Under | 1937 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Fire Within | 1913 | - | |
2 | The Astonishing Adventure of Jane Smith | 1923 | - | ミステリ作家としてのデビュー作 |
3 | The Red Lacquer Case | 1924 | - | |
4 | The Annam Jewel | - | ||
5 | The Dower House Mystery | 1925 | - | |
6 | The Black Cabinet | - | ||
7 | The Amazing Chance | 1926 | - | |
8 | Hue and Cry | 1927 | - | |
9 | Anne Belinda | - | ||
10 | Will-o'the-Wisp | 1928 | - | |
11 | The Coldstone | 1930 | - | |
12 | Beggar's Choice | - | ||
13 | Kingdom Lost | - | ||
14 | Nothing Venture | 1932 | - | |
15 | Red Danger (米 Red Shadow) | - | ||
16 | Seven Green Stones (米 Outrageous Fortune) | 1933 | - | |
17 | Fear by Night | 1934 | - | |
18 | Devil-in-the-Dark (米 Touch and Go) | - | ||
19 | Red Stefan | 1935 | - | |
20 | Blindfold | - | ||
21 | Hole and Corner | 1936 | - | |
22 | Run! | 1938 | - | |
23 | Mr. Zero | - | ||
24 | The Blind Side | 1939 | - | アーネスト・ラム警部 フランク・アボット巡査部長 |
25 | Who Pays the Piper? (米 Account Rendered) | 1940 | - | |
26 | Unlawful Occasions (米 Weekend with Death) | 1941 | - | |
27 | Silence in Court | 1945 | - |
【参考】「ブレイディング・コレクション」(論創社 論創海外ミステリ)