タイトル | 断崖 |
||
原題 |
Dreadful Summit | ||
発表年 |
1948 | ||
著者/訳者/解説 |
スタンリイ・エリン/三樹青生/都筑道夫 | ||
カバーデザイン |
勝呂忠 | ||
ページ数 |
141(巻末「エリンおぼえがき」) | ||
あらすじ(解説文) |
|||
出版 |
早川書房 ハヤカワポケットミステリ395 |
父さんはアルの顔をじっと見ていたがその目には涙が浮かんでいた。すると突然、ぼくの目からも涙が溢れ出て眼鏡を曇らせた。何もかも霞んでしか見えない。その霞を通して、父さんがシャツを脱ぐのが見えた。「四つん這いになるんだ」と、アルが言った。父さんはそれに従った。アルがステッキを振り上げた。父さんの叫び声が、ぼくの耳に針のように突き刺さった。アル・ジャッジを殺さなきゃならないとぼくが悟ったのは、この時だった─今日はぼくの十六歳の誕生日だった。誕生祝いに、父さんがボクシングの試合に連れていってくれることになっていた。でも、ぼくは一人で行かなけりゃならない。行って、アル・ジャッジに思い知らせてやるんだ。アルはスポーツ欄担当の新聞記者だから、今夜の試合にもきっと来ているだろう。ぼくは父さんのピストルを持って家をぬけ出した……。 夢魔に襲われたような一夜だった。血みどろの闘い。初めて味わうウイスキーの強烈な味覚、頽廃的なナイトクラブのエロティックなムード、黒光りする拳銃の重さ……。そして、ようやくアル・ジャッジのもとに辿り着いたとき、少年は恐ろしい事実を知らされたのだった。 思春期の少年の多感な心が、父親の秘密を知って抱く疑惑と苦悶と強烈な殺意に揺れるさまを、サスペンスフルに描く。 現代ミステリの鬼才の処女長篇。 |
|
初版 |
1958年 | ||
重版 |
1994年3版(800円) | ||
入手 |
|||
ISBN |
4-15-000395-5 |