アメリカの小説家、ハーバード大学在学中にハードワークが祟って当時はまだ不治の病であった肺結核を患い、フロリダで静養を余儀なくされますが、その頃に小説を書いてみようと思い立ったといいます。
そうして書かれた一冊の長編ミステリ「ハーバード大学殺人事件」を、文芸批評家でアメリカきっての高級文学雑誌〈アトランティック・マンスリー〉の編集長でもあったエドワード・ウィークスに読んで貰った所、ウィークスはすぐに彼の才能に感嘆し、それまでの〈アトランティック・マンスリー〉の長い伝統の中で一度も掲載例のなかったミステリ作品を、伝統を打ち破って初めて掲載する英断を下したのでした。
弱冠21歳で幸運な作家デビューを果たしたフラーは、その後も同作品で主人公を務めたジュピター・ジョーンズの活躍するミステリ作品を数作発表していますが、デビュー作品であり代表作でもある「ハーバード大学殺人事件」は、新青年ベスト10で大江専一氏が自身のベスト10の第1位に推しており、第3長編の「Reunion with Murder」はジェームズ・サンドーの名作集に選ばれるなど、寡作ながらもミステリ史上にその名を刻み込んでいます。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | ハーバード大学殺人事件 | 1936 | 青弓社 ブルー・ボウ・シリーズ('93) | 新青年ベスト10・大江専一氏のベスト第1位 |
2 | Three Thirds of a Ghost (幽霊の三分の一) |
1941 | - | |
3 | Reunion with Murder |
- | ジェームズ・サンドーの名作集に選ばれた作品 | |
4 | This is Murder, Mr. Jones (殺人です、ミスター・ジョーンズ) |
1943 | - | |
5 | Keep Cool, Mr. Jones (これをどうぞ、ミスター・ジョーンズ) |
1950 | - |
【参考】「ハーバード大学殺人事件」(青弓社 ブルー・ボウ・シリーズ)