記号論の分野で世界的に有名な哲学者

ITA ウンベルト・エーコ
(Umberto Eco)

薔薇の名前/上
「薔薇の名前/上」
(1980年)
(東京創元社)

 ウンベルト・エコとも表記。イタリアの哲学者で小説家。元々記号論の分野では世界的に知られていた有名な学者でしたが、歴史ミステリ長編「薔薇の名前」でミステリの分野でもその名を全世界に知らしめました。

 トリノ大学で哲学と中世美学を専攻し、卒業後はイタリア放送教会(RAI)の文化番組やボンビアーニ出版社の評論部門などの仕事に従事していました。

 それからミラノ大学、フィレンツェ大学教授を経てボローニャ大学で教鞭と執る一方、国際記号学会の会長にも就任。記号論や哲学の分野では1962年の「開かれた作品」や1975年の「記号論」など多数の著書も残しています。

 このように学者として大成功を収めていたエーコがミステリの分野に関心を持ったのは、ある事件がきっかけだったといいます。
それは1978年に起きたイタリアの元首相アルド・モロの誘拐殺人事件で、この衝撃的な事件のことを知ったエーコは、これに触発されて一冊の小説を書き上げたのです。それが1980年に発表された「薔薇の名前」でした。

フーコーの振り子/上icon
「フーコーの振り子/上」
(1980年)
(文藝春秋)

 この「薔薇の名前」は、中世イタリアを舞台に元異端審問官のウィリアム修道士が修道院で起きた連続殺人事件の謎を解く歴史本格ミステリーで、作者の哲学的知識もふんだんに散りばめられた重厚な作りに加えて、ウィットとユーモア、遊び心と探求心に満ちた一級のエンターテイメントに仕上がっており、30カ国以上に渡って翻訳・映画化されるという世界的なベストセラーを記録しています。

 また「薔薇の名前」以外にも伝奇ミステリーの「フーコーの振り子」と「前日島」という作品も発表していて、こちらもファンや評論家の間で高い評価を勝ち得ています。


■作家ファイル■

出身地
イタリア、アレッサンドリア
学歴
トリノ大学卒
生没
1932年1月5日~
作家としての経歴
1962
「開かれた作品」を発表
1980
歴史ミステリ長編「薔薇の名前」を発表して30カ国以上で翻訳される世界的なベストセラーに。一躍ミステリ作家としても認知されるようになる
シリーズ探偵
元異端審問官ウィリアム修道士(「薔薇の名前」に登場)
代表作
【ミステリ】
「薔薇の名前」
【その他】
「開かれた作品」「記号論」

■関連リンク■

1 ウンベルト・エーコ公式サイト


■著作リスト■

1 小説

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 薔薇の名前 1980 東京創元社(上下)('90) イタリア・ストレーガ賞('81)
フランス・メディシス賞
映画化
2 フーコーの振り子 1988 文春文庫(上下)('99)
文芸春秋社(上下)('93)
3 前日島 1994 文春文庫(上下)('03)
文藝春秋社('99)
4 Baudolino
バウドリーノ
2000 岩波書店(上下)('10)
5 La misteriosa fiamma della regina Loana
(英 The Mysterious Flame of Queen Loana)
2004 -
6 Il cimitero di Praga 2010 -

2 児童書

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 La bomba e il generale
(英 The Bomb and the General)
爆弾と将軍
1966 TBSブリタニカ('90) 絵・エウジェニオ・カルミ
(Eugenio Carmi)
2 I tre cosmonauti
(英 The Three Astronauts)
三人の宇宙飛行士
TBSブリタニカ('90)
3 Gli gnomi di Gnu
小人の星ニュウ
1992 イタリア・ファブリ出版('92)

3 その他の作品

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Il problema estetico in San Tommaso
(英 The Aesthetics of Thomas Aquinas)
1956 -
2 Sviluppo dell'estetica medievale
(英 Art and Beauty in the Middle Ages)
1959 -
3 Opera Aperta
(英 The Open Work)
開かれた作品
1962 青土社(新新装版)('11)
青土社(新装版)('02)
青土社(新版)('97)
青土社('90)
青土社('84)
4 Diario minimo
(英 Misreadings)
ウンベルト・エーコの文体練習
1963 新潮文庫('00)
新潮社('92)
パスティーシュ集
5 Apocalittici e integrati
(英 Apocalypse Postponed)
1964 -
6 Le poetiche di Joyce
(英 The Middle Ages of James Joyce)
(The Aesthetics of Chaosmos)
1965 -
7 Appunti per una semiologia delle comunicazioni visive 1967 -
8 La struttura assente 1968 -
9 La definizione dell'arte -
10 Le forme del contenuto 1971 -
11 Il segno
記号論入門
―記号概念の歴史と分析
而立書房 教養諸学シリーズ3('97)
12 Il costume di casa 1973 -
13 Beato di Liebana -
14 Trattato di semiotica generale
(英 A Theory of Semiotics)
記号論
1975 岩波書店 同時代ライブラリ(2分冊)('96)
岩波書店 岩波現代選書(2分冊)('80)
15 A Theory of Semiotics 1976 -
16 Il Superuomo di massa -
17 Dalla periferia dell'impero 1977 -
18 Come si fa una tesi di laurea
論文作法
―調査・研究・執筆の技術と手順
而立書房 教養諸学シリーズ1('91)
19 The Role of the Reader 1979 -
20 Lector in Fabula
物語における読者
青土社(新版)('11)
青土社(新装版)('03)
青土社('93)
記号論
21 Function and sign: the semiotics of architecture 1980 -
22 E semeiologia sten kathemerine zoe -
23 Postille al nome della rosa
(英 Postscript to The Name of the Rose)
「バラの名前」覚書
1983 而立書房('94)
24 Sette anni di desiderio -
25 Semiotica e filosofia del linguaggio
(英 Semiotics and the Philosophy of Language)
記号論と言語哲学
1984 国文社 ポリロゴス叢書('96)
26 Concetto di testo
テクストの概念―記号論・意味論・テクスト論への序説
而立書房 教養諸学シリーズ2('93)
27 Sugli specchi e altri saggi 1985 -
28 De bibliotheca 1986 -
29 Streit der Interpretationen 1987 -
30 Notes sur la semiotique de la reception -
31 Im Labyrinth der Vernunft 1989 -
32 Lo strano caso della Hanau 1609 -
33 Auf dem Wege zu einem Neuen Mittelater 1990 -
34 I limiti dell'interpretazione
(英 The Limits of Interpretation)
-
35 Stelle e stellette 1991 -
36 Vocali -
37 Il secondo diario minimo 1992 -
38 Interpretation and Overinterpretation
エーコの読みと深読み
岩波書店('93) リチャード・ローティ、ジョナサン・カラー、C・ローズ・ブルックとの共著、ステファン・コリーニ編
39 La memoria vegetale -
40 La ricerca della lingua perfetta nella cultura europea
(英 The Search for the Perfect Language)
完全言語の探求
1993 平凡社ライブラリー('11)
平凡社 叢書ヨーロッパ('95)
41 Ton augousto den Uparchoun eideseis -
42 Apocalypse Postponed 1994 -
43 Six Walks in the Fictional Woods
エ-コの文学講義
─小説の森散策
岩波書店('96)
44 In cosa crede chi non crede?
(英 Belief or Nonbelief?)
1996 - Carlo Maria Martiniとの共著
45 Neue Streichholzbriefe 1997 -
46 Cinque scritti morali
(英 Five Moral Pieces)
永遠のファシズム
岩波書店('98)
47 Kant e l'ornitorinco
(英 Kant and the Platypus)
カントとカモノハシ
岩波書店(上下)('03)
48 Talking of Joyce 1998 - Liberato Santoro-Brienzaとの共著
49 Gesammelte Streichholzbriefe -
50 Serendipities
セレンディピティー 言語と愚行
而立書房('08)
51 Tra menzogna e ironia -
52 La bustina di Minerva 2000 -
53 Den nye Middelalderen og andre essays -
54 Mein verrucktes Italien -
55 Mysl a smysl -
56 Experiences in Translation -
57 Poesie -
58 Riflessioni sulla bibliofilia 2001 -
59 Samtliche Glossen und Parodien -
60 Sulla letteratura 2002 -
61 Dire quasi la stessa cosa 2003 -
62 Mouse or Rat? -
63

Storia della bellezza
(英 History of Beauty)
美の歴史

2004 東洋書林('05)
64 A passo di gambero 2006 -
65 Storia della bruttezza
(英 On Ugliness)
醜の歴史
2007 東洋書林('09)
66 Dall'albero al labirinto -
67 The Infinity of Lists 2009 -
68 N'espérez pas vous débarrasser des livres
もうすぐ絶滅するという紙の書物について
阪急コミュニケーションズ('10) ジャン=クロード・カリエールとの共著
69 Vertigine della Lista
芸術の蒐集
東洋書林('11) 編著、「美の歴史」「醜の歴史」に続く芸術史第3弾

4 研究書その他

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Autoritratto dell'Italia
エコのイタリア案内
1967 而立書房('88)
2 Carnival!
カーニバル!
1983 岩波書店('87) 記号論、V・V・イワーノフ、モニカ・レクトールとの共著
3 The Sign of Three: Dupin, Holmes, Peirce
三人の記号
―デュパン、ホームズ、パース
東京図書('90) 記号論
トマス・A・シービオクとの共著
4 Arte e bellezza nell'estetica medievale
中世美学史─『バラの名前』の歴史的・思想的背景
1985 而立書房 教養諸学シリ-ズ('01)
5 『バラの名前』探求 而立書房('88)
6 Interviews with Umberto Eco
ウンベルト・エコ インタヴュー集
―記号論、「バラの名前」そして「フーコーの振り子」
而立書房('90) ルイス・パンコルボ、トマス・シュタウダー、セース・ノーテボーム共著
7 エコの翻訳論―エコの翻訳論とエコ作品の翻訳論 1999 而立書房('99) 他作家との共著
谷口伊兵衛編

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