弱冠18歳の新聞記者
ミュージカルの名作として名高い「オペラ座の怪人」で有名なフランスの作家ガストン・ルルーの創造した、密室ものの古典的な名作として名高い長編「黄色い部屋の謎」にも登場する、弱冠18歳の新聞記者。
本名はジョゼフ・ジョゼファンといいますが、巨大な頭をしていたため、「お前の玉をころがせ」を意味する”ルールタビーユ”というあだ名が付けられ、現在ではそれが通り名となっています。
16歳の時にオーベルカンプ街で発生した迷宮入りのバラバラ殺人事件の未発見の死体の左足をセーヌ河の下水道で発見したことをきっかけに、そのスクープ記事を売り込んで〈エポック〉紙に新聞記者として月給250フランで採用され、それ以後は記者兼素人探偵として事件を追いかける日々を送っています。
そんな彼が捜査を進めていくにあたって言うのには、「目に見える事実は、見方によってはどうにでも解釈できてしまうので、事実をもとに推理すると、しばしば判断を誤ることがある」のだそうです。
つまり重要なのはまず推理することで、それから目に見える事実が自分の推理の輪に上手くおさまるかどうかを理性を働かせて調べるべき─これが彼の専らの持論であり、同時に彼の捜査方法そのものともいえます。
全部で8つの作品に登場しますが、初登場作「黄色い部屋の謎」のみが本格推理の名作として現在でも高く評価されており、以降の作品はどちらかというとスリラー的な作品が多く、評価も芳しくありません。
また後期の作品には原作者のルルーが第一次世界大戦中に特派員としてロシアに赴いていたことも影響してか、ロシアを舞台にした作品もあるようです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 黄色い部屋の謎 (黄色い部屋の秘密) (黄色の部屋) |
1907 | 創元推理文庫108-3(新版) 創元推理文庫108-1 早川文庫58-1 HPB237 集英社文庫 乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10 [2] 嶋中文庫 グレート・ミステリーズ10('05) 旺文社文庫('79) 東京創元社 世界推理小説全集4('56) 東都書房 世界推理小説大系7('62) 日本出版協同 異色探偵小説選集2('53) 金剛社 ルレタビーユ叢書1('21) |
乱歩ベスト10・2位 ハヤカワベスト100・56位 EQアンケート21位 「密室大集合」アンケート3位 |
2 | 黒衣婦人の香り (古塔の幻) (ルレタビーユ) |
1908 | 創元推理文庫108-2 早川文庫58-2 HPB238 東都書房 世界推理小説大系7('62) 博文館文庫15「ルレタビーユ」('39) 金剛社 ルレタビーユ叢書2('21) 新青年'37.7特大 別冊付録 |
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3 | 第二ルレタビーユ (ツアーに招かれたルルタビーユ) |
1913 | 新青年'37.9特大 別冊付録 博文館文庫15「ルレタビーユ」('39) 金剛社 ルレタビーユ叢書3・4「ロシア陰謀団および娘ナターシャ」('20) |
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4 | Rouletabille a la Guerre (英 Rouletabille at War) 悪鬼の窟 |
1914 | 金剛社 ルレタビーユ叢書5('21) | |
5 | 水中の密室 | 1916 | 金剛社 ルレタビーユ叢書6('22) | |
6 | Rouletabille Chez Krupp (英 Rouletabille at Krupp's) 都市覆滅機 |
1920 | 金剛社 ルレタビーユ叢書7('22) | |
7 | Le Crime de Rouletabille (英 The Crime of Rouletabille) 怪しい足跡 |
1922 | 新趣味'22.3-4(抄訳) | |
8 | Rouletabille chez les Bohemiens (英 Rouletabille and the Gypsies) |
1923 | - |