短編の名手として知られるイギリスの小説家ジェラルド・カーシュの唯一のシリーズものに登場するキャラクター。”カームジン”とは中欧の言語で”真紅”を意味するそうで、実際のモデルはカーシュの現実の知り合いのカーファックスという人物なのだそうです。
このシリーズはカーシュがまだ作家としては駆け出しの頃だった1936年から作家としては晩年の1962年にかけて全17編が書き上げられ、ミステリー作家のレックス・スタウトや第二次世界大戦前後の首相ウィンストン・チャーチルの他、数多くの著名人にも愛読者がいたらしく、異なるタイトルであちこちの雑誌に再録されて数多くの読者の前にお目見えしました。そして2003年にはカーシュの研究家として知られるポール・ダンカンにより1冊の短編集にまとめられています。
カームジンは口髭をたくわえた中年男で、物語は原作者のカーシュがカームジンに会う所からスタートし、カームジンが自分が手がけたという奇想天外な犯罪について体験談を披露するのですが、その話というのが余りに突拍子もなくにわかに信じられないものの、語られる悪党や手口はいかにも本物らしく聞こえる一方、カーシュにタバコをせびったり喫茶店で砂糖をくすねたりする彼の姿にやはり眉唾ではないかと疑いたくなります。
もしこの話が真実なら当代きっての大犯罪者であるし、もし嘘なら史上まれにみる大ぼら吹き…さてあなたならどう思いますか?…といった調子で、彼の個性的かつ魅力的なキャラクターに読者はいつの間にか引き込まれてしまっているのです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き | 2003 | 角川書店('08) | ポール・ダンカン編 邦訳はノンシリーズ2編追加収録 |
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1 | カームジンの銀行泥棒 | 1936 | 晶文社 晶文社ミステリ「廃墟の歌声」('03) | ||
2 | カームジンとガスメーター (詐欺師カルメジン) |
1937 | 創元推理文庫104-24「ミニ・ミステリ傑作選」('75) | ||
3 | カームジンの偽札づくり (カーミジンの偽札騒動) |
1938 | 河出文庫「詐欺師ミステリー傑作選」('90) 大和書房「ハリイ・ライムの回想」('85) |
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4 | カームジンとめかし屋 | ||||
5 | カームジン脅迫者になる | ||||
6 | カームジンの宝石泥棒 | 1939 | 晶文社 晶文社ミステリ「廃墟の歌声」('03) | ||
7 | カームジンとあの世を信じない男 | 1938 | 晶文社 晶文社ミステリ「廃墟の歌声」('03) | ||
8 | カームジンの殺人計画 | 1944 | |||
9 | カームジンと透明人間 | 1945 | |||
10 | カームジンと豪華なローブ | 1946 | |||
11 | カームジン手数料を稼ぐ | ||||
12 | カームジン彫像になる (彫像になった泥棒) |
1954 | EQMM'61.2 | ||
13 | カームジンと王冠 | HMM'04.6 | |||
14 | カームジンの出版業 | 1956 | |||
15 | カームジン対カーファックス | 1960 | |||
16 | カームジンと重ね着した名画 (重ね着した名画) |
晶文社 晶文社ミステリ「廃墟の歌声」('03) | |||
17 | カームジンと 『ハムレット』 の台本 | 1962 | 晶文社 晶文社ミステリ「壜の中の手記」('02) | ||
18 | 埋もれた予言 | ノン・シリーズ | |||
19 | イノシシの幸運日 | ノン・シリーズ |