度胸満点の行動派老嬢探偵

USA 老嬢探偵レイチェル・マードック
(Rachel Murdock)

黒猫は殺人を見ていた
「黒猫は殺人を見ていた」
(1939年)
(早川書房)

 アメリカの女流作家ドロレス・ヒッチェンズがD・B・オルセン名義で書いた70代の老嬢レイチェル・マードックを探偵役とするシリーズ。

 ミステリーの女王アガサ・クリスティーが生み出した同じ老嬢探偵のミス・マープルが編み物を片手に事件について聞かされただけでたちどころに解決してしまう安楽椅子探偵の典型であるのに対し、このレイチェル・マードックはどぎつい映画も冷たい銃身も平然と見ていられる度胸満点の行動派の探偵。

 小柄ではあるものの常に事件現場に赴いては危険な目にも遭い、姉のジェニファーやブレイカーズ・ビーチ警察のスティーヴン・メイヒュー警部補を呆れさせますが、それにもめげずに年齢を感じさせない行動力と鋭い洞察力・観察眼で事件を解決に導いていきます。

 そしてこのマードック姉妹と並んで重要な役回りを果たすのが、二人の亡き姉アガサの飼い猫だった黒猫のサマンサで、精神異常をきたした女主人の遺言によりなんとその全財産を相続してしまったという風変わりな経歴を持ちます。

 現在ではレイチェルになついていて、彼女が危機に瀕した時に身を挺して助けたりと主人顔負けの危険な目に遭うこともしばしばです。 現代アメリカの人気コージー・ミステリ・シリーズであるリリアン・ジャクスン・ブラウンのココに先駆けること20年前に書かれており、猫ミステリーの元祖ともいえるこのシリーズですが、作風は決してコージー・ミステリではなく、トリックにこだわりを持った本格ミステリとして本格ファンも充分楽しめるシリーズです。


■原作■

D・B・オルセン (ドロレス・ヒッチェンズ)
(D. B. Olsen (Dolores Hitchens) 米 1907-73)


■人物ファイル■

住居
ロサンゼルス
好きなもの
どぎついミステリ映画
協力者
レイチェルの姉ジェニファー・マードック
ブレイカーズ・ビーチ警察のスティーヴン・メイヒュー警部補
姉妹の亡き姉アガサの飼い猫の黒猫のサマンサ(メス)
事件簿
13長編と邦訳短編1編

■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 黒猫は殺人を見ていた 1939 HPB1731 メイヒュー警部補
2 The Alarm of the Black Cat 1942 -
3 Cat's Claw 1943 - メイヒュー警部補
4 Cats Paw for Murder - メイヒュー警部補
5 The Cat Wears a Noose 1944 - メイヒュー警部補
6 Cats Don't Smile 1945 -
7 Cats Don't Need Coffins 1946 - メイヒュー警部補
8 Cats Have Tall Shadows 1948 - メイヒュー警部補
9 THe Cat Wears a Mask 1949 -
10 Death Wears Cat's Eye 1950 -
11 The Cat and the Capricorn 1951 -
12 The Cat Walk 1953 -
13 Death Walks on Cat Feet 1956 -

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Absent Hat Pin
(Murder Walks a Strange Path)
ハット・ピンの秘密
探偵倶楽部'58.4

【参考】「黒猫は殺人を見ていた」(早川書房 ハヤカワポケットミステリ)
「ハヤカワ・ミステリマガジン1977年6月号」(早川書房)
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