度胸満点の行動派老嬢探偵
アメリカの女流作家ドロレス・ヒッチェンズがD・B・オルセン名義で書いた70代の老嬢レイチェル・マードックを探偵役とするシリーズ。
ミステリーの女王アガサ・クリスティーが生み出した同じ老嬢探偵のミス・マープルが編み物を片手に事件について聞かされただけでたちどころに解決してしまう安楽椅子探偵の典型であるのに対し、このレイチェル・マードックはどぎつい映画も冷たい銃身も平然と見ていられる度胸満点の行動派の探偵。
小柄ではあるものの常に事件現場に赴いては危険な目にも遭い、姉のジェニファーやブレイカーズ・ビーチ警察のスティーヴン・メイヒュー警部補を呆れさせますが、それにもめげずに年齢を感じさせない行動力と鋭い洞察力・観察眼で事件を解決に導いていきます。
そしてこのマードック姉妹と並んで重要な役回りを果たすのが、二人の亡き姉アガサの飼い猫だった黒猫のサマンサで、精神異常をきたした女主人の遺言によりなんとその全財産を相続してしまったという風変わりな経歴を持ちます。
現在ではレイチェルになついていて、彼女が危機に瀕した時に身を挺して助けたりと主人顔負けの危険な目に遭うこともしばしばです。 現代アメリカの人気コージー・ミステリ・シリーズであるリリアン・ジャクスン・ブラウンのココに先駆けること20年前に書かれており、猫ミステリーの元祖ともいえるこのシリーズですが、作風は決してコージー・ミステリではなく、トリックにこだわりを持った本格ミステリとして本格ファンも充分楽しめるシリーズです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 黒猫は殺人を見ていた | 1939 | HPB1731 | メイヒュー警部補 |
2 | The Alarm of the Black Cat | 1942 | - | |
3 | Cat's Claw | 1943 | - | メイヒュー警部補 |
4 | Cats Paw for Murder | - | メイヒュー警部補 | |
5 | The Cat Wears a Noose | 1944 | - | メイヒュー警部補 |
6 | Cats Don't Smile | 1945 | - | |
7 | Cats Don't Need Coffins | 1946 | - | メイヒュー警部補 |
8 | Cats Have Tall Shadows | 1948 | - | メイヒュー警部補 |
9 | THe Cat Wears a Mask | 1949 | - | |
10 | Death Wears Cat's Eye | 1950 | - | |
11 | The Cat and the Capricorn | 1951 | - | |
12 | The Cat Walk | 1953 | - | |
13 | Death Walks on Cat Feet | 1956 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Absent Hat Pin (Murder Walks a Strange Path) ハット・ピンの秘密 |
探偵倶楽部'58.4 |
【参考】「黒猫は殺人を見ていた」(早川書房 ハヤカワポケットミステリ)
「ハヤカワ・ミステリマガジン1977年6月号」(早川書房)