最長長寿記録を保持する探偵
ミステリーの本場イギリスで、シャーロック・ホームズに匹敵するともいわれる国民的英雄といえる名探偵。セクストン・ブレーク、更に古い邦訳ではセキストン・ブレーキなどとも表記されています。
この著名な名探偵が誕生したのは1893年12月10日のことで、作者はハリー・ブリス。〈ハーフペニー・マーベル〉という少年向け週刊誌の第六号に掲載された冒険小説「失踪した百万長者」が記念すべき彼のデビュー作となりました。
その6ヶ月後にはブレイクの専門誌英国国旗(ユニオン・ジャック)が創刊され、後に〈ディテクティヴ・ウィークリー〉、1920年代には〈セクストン・ブレイク・ライブラリー〉がこれに加わり、1960年代初期に同誌が廃刊になるまで、有名無名作家の手になるおびただしい量のブレイク譚が書き継がれたといいます。
探偵おいての世界長寿記録の保持者とされ、一説によればこのシリーズに動員された作家は200人とも300人とも、作品は4000編にも登るともいわれ、これは少なくとも毎週一回以上難事件に直面してきた計算になるといいます。
日本では京大の島博士が英文教科書用に2冊のアンソロジーを編んだのが最初とされ、森下雨村がこれに注目し、大正9年の探偵雑誌〈新青年〉の創刊号に「沈黙の塔」を翻訳紹介。以後毎号のようにブレイク譚が掲載されるに至りましたが、その後はあまり紹介されることもなく、イギリスなどに比べれば認知度ははるかに低いといえるでしょう。
元々はシャーロック・ホームズのライヴァルとして書かれたこともあり、その設定はよく似ていて、ベイカー街に事務所を構え、脇を固めるのはワトスン役の助手のティンカー少年と下宿のバーデル夫人。これにブレイクをひそかに慕う女賊マドモアゼル・イヴォンヌとハーリー街に住む仇敵の気ちがい外科医ライマー博士が敵役として事件に絡んできます。
また作風に関しては当初は推理や謎解きといった要素が強かったものが次第に影を潜めていき、やがて主人公のブレイクが悪者たちと手に汗握る大活劇を演じる冒険小説的な色合いが濃くなっていきます。もっともかえってそれが功を奏し、犯罪者連盟のリース会長、黄色甲虫団のウー・リン王子、毒殺魔クラヴィッチ伯爵ら極悪人たちの存在がブレイク譚をいっそう魅力あるものにしています。
4000以上と言われる作品数のためここでは復刻されたアンソロジーのみ掲載
詳しくは上記関連リンク先のサイトを参照下さい
邦訳は作者不詳のものも多いため他にもある可能性は多分にあります
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Sexton Blake: Star of Union Jack and Detective Weekly | 1972 | - | W. Howard Baker編 | |
1 | The Plague of Onion Men | - | |||
2 | Behind the Fog | - | |||
3 | Sexton Blake Wins | - | |||
4 | Land of Lost Men | - | |||
5 | The House of Light | - | |||
6 | Sexton Blake's Secret | - | |||
2 | Sexton Blake's Early Cases | 1976 | - | ||
1 | Witness for the Defence | - | |||
2 | A Clue from the Deep | 1895 | - | ||
3 | 死者の目の謎 | 早川文庫87-2「シャーロック・ホームズのライヴァルたち2」('83) | Arnold Grahame | ||
3 | Sexton Blake Wins | 1986 | - | Jack Adrian編 | |
1 | The House of the Hanging Sword | - | |||
2 | The Treasure of Tortoise | - | |||
3 | Under Sexton Blake's Orders | - | |||
4 | The Man I Killed | - | |||
5 | The Green Jester | - | |||
6 | The Secret Amulet | - | |||
7 | The Box of Ho Sen | - | |||
8 | The Four Guests Mystery | - | |||
9 | Sexton Blake Solves It | - | |||
4 | The Sexton Blake Casebook | 1987 | - | Mike Higgs編 | |
1 | The Mystery of Glyn Castle | - | |||
2 | The Case of the Society Blackmailer | - | |||
3 | The Crime in the Wood | - | |||
4 | Down and Out | - | |||
5 | The Missing Millionaire (失踪した百万長者) |
1893 | - | ハリー・ブリス著 記念すべき第1作 |
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5 | The Sexton Blake Detective Library | 1989 | - | Mike Higgs編 | |
1 | The Yellow Tiger | - | |||
2 | Ill-Gotten Gains | - | |||
3 | The Shadow of His Crime | - | |||
4 | The Rajah's Revenge | - |
全部で4冊ほど存在
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 秘密の函 | 1921 | 金剛社 世界伝記叢書4 | 日本独自で編纂? |
2 | 銀貨をにぎる骸骨 ─セクストンブレーク探偵物語 |
1924 | 民友社 | 日本独自で編纂? |
新青年はすべて原題不明
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | モアハンプトンの怪事件 (モアーハムプトン事件) |
講談社文庫「世界鉄道推理傑作選1」('79) 新青年'28.7 |
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2 | 崖の上の家 | 勉誠社「アップルビィ警部の事件簿」('96) | ||
3 | 沈黙の塔 | 新青年'20.1-2 | ||
4 | 銭の幽霊 | 新青年'20.3 | ||
5 | 謎の信号 | 新青年'20.5-6 | ||
6 | 巨像の腕 | 新青年'20.7 | ||
7 | ブレーク探偵譚 | 新青年'20.8 | 短編? | |
8 | 怪美人の手 | 新青年'21.1 | ||
9 | 好敵手 | 新青年'22.2増刊 | ||
10 | 近代錬金術師 | 新青年'28.7 | ||
11 | 古代僧 | |||
12 | 病める温室 | |||
13 | 雪人形の謎 | |||
14 | 牧師の外套 | |||
15 | スポーツ劇余聞 | |||
16 | 黒猫の怪 | |||
17 | 空鑵の秘密 |
【参考】 「シャーロック・ホームズのライヴァルたち2」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
「名探偵読本5 シャーロック・ホームズのライヴァルたち」(パシフィカ)