ジャーナリストとしても活躍した遅咲きのミステリ作家

UK ビヴァリイ・ニコルズ
(Beverley Nichols)

消えた街燈
「消えた街燈」
(1954年)
(早川書房)

 イギリスの小説家、随筆家、劇作家。ミステリを発表したのは1954年、55歳の時が最初でしたが、それ以前にも30冊以上の著書を発表しており、イギリス文壇では有名な存在だったといいます。

 父親が弁護士をしている家庭に生まれ、オックスフォード大学に進み、在学中はオックスフォード・ユニオンという学生討論会の会長を務め、〈オックスフォード・アウトルック〉という校内雑誌を創刊しその編集長を務めるなどの活躍をしていました。

 更に在学中の21歳の時に書いた長編普通小説「序曲」が刊行されて、作家デビューも果たします。その後大学から派遣されてアメリカに向かいますが、旅行好きだったという彼は以後何度も海外を訪れています。そしてその旅行の間に執筆活動をするのがライフワークだったそうで、著書の中には旅行記も多数含まれています。

 大学を出た後はジャーナリズムの世界へと進み、1928年からニューヨークに滞在して〈アメリカン・スケッチ〉誌の編集を務め、ロンドンの〈デイリー・スケッチ〉誌や〈サンデー・クロニクル〉誌に毎週寄稿し、インタビュー記者としての名声を高めていったそうです。そして雑誌に載った彼の記事は本としてまとめられ人気を集めたといいます。

ムーンフラワー
「ムーンフラワー」
(1955年)
(早川書房)


  ところが1929年にアメリカを襲った世界恐慌の影響で財産的に著しい損害を受けイギリスに帰国。以後損失を取り戻すためにノンフィクション小説や戯曲を多数発表、これらはベストセラーになったといいます。

 そして第二次世界大戦が始まるとイギリス新聞連盟の特派員としてインドに駐在して「インドの評決」等の著書を残しています。

 ミステリ作家としては1954年、54歳の時に書いた「消えた街燈」が第1作で、この作品は「秘密諜報部員」でも有名な文豪のサマセット・モームから激賞されたといいます。
そして以後もこの作品で活躍する引退した名探偵ホレイショ・グリーンを主人公とする作品を数作発表し、ブラウン神父に比肩する人気を集めたといいます。

 ジャーナリストとしては20代前半に頭角を現わしたニコルズですが、ミステリ作家としては60歳でミステリ作家デビューを果たしたイーデン・フィルポッツほどではありませんが、かなり遅咲きの作家といえるでしょう。


■作家ファイル■

本名
ジョン・ビヴァリイ・ニコルズ (John Beverley Nichols)
出身地
イギリス、ブリストル
学歴
オックスフォードのマールボロー・カレッジとベイリアル・カレッジの出身
生没
1898年9月9日~1983年9月15日
作家としての経歴
1920
大学在学中の21歳の時に処女作の「序曲(Prelude)」を発表
1938
1937年発表の戯曲「メスメル」を名優チャールズ・コクランを使って上演
1954
55歳の時に長編「消えた街燈」をロンドンのハッチンスン社より刊行しミステリ作家としてデビュー
シリーズ探偵
引退した私立探偵のホレイショ・グリーン (Horatio Green)
代表作
【ホレイショ・グリーン】
「消えた街燈」
【ノンシリーズ】
「Merry Hall」

■関連リンク■

1  海外サイト「Beverley Nichols


■著作リスト■

1 ホレイショ・グリーン登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 消えた街燈 1954 HPB425 ニコルズのミステリデビュー作
2 ムーンフラワー 1955 HPB429
3 Death to Slow Music
(スローの音楽にのった死)
1956 -
4 The Rich Die Hard
(老人は富んで死ぬ)
1957 -
5 Murder by Request 1960 -

2 その他の作品

【普通小説】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Prelude
(序曲)
1920 - ニコルズの処女作
2 Patchwork 1921 -
3 Self 1922 -
4 Crazy Pavements 1927 -
5 Evensong 1932 -
6 Revue 1939 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Women and Children Last 1931 -
2 Men Do Not Weep 1941 -

【戯曲】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Failures 1933 -
2 Evensong -
3 Mesmer
(メスメル)
1937 -
4 Shadow of the Vine 1949 -

【児童書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Tree That Sat Down 1945 -
2 The Stream That Stood Still 1948 -
3 The Mountain of Magic 1950 -
4 The Wickedest Witch in the World 1971 -

【園芸書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Down the Garden Path 1932 -
2 A Thatched Roof 1933 -
3 A Village in a Valley 1934 -
4 How Does Your Garden Grow? 1935 -
5 Green Grows the City 1939 -
6 Merry Hall 1953 -
7 Laughter on the Stairs 1954 -
8 Sunlight on the Lawn 1956 -
9 Garden Open Today 1963 -
10 Forty Favourite Flowers 1964 -
11 The Art of Flower Arrangement 1967 -
12 Garden Open Tomorrow 1968 -

【政治論】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Cry Havoc! 1933 -
2 News of England; or a Country without a Hero 1938 -
3 Verdict on India
(インドの評決)
1944 -
4 Uncle Samson 1950 -

【旅行記】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 No Place Like Home 1936 -
2 The Sun in My Eyes 1969 -

【自伝】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Twenty-Five
(二十五)
1926 -
2 All I Could Never Be 1949 -
3 The Sweet and Twenties 1958 -
4 A Case of Human Bondage 1966 -
5 Father Figure 1972 -
6 Down the Kitchen Sink 1974 -
7 The Unforgiving Minute 1978 -

【ノンフィクションその他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Memories and Melodies 1925 -
2 The Valet As Historian 1926 -
3 Are They the Same at Home? 1927 -
4 The Star-Spangled Manner 1928 -
5 For Adults Only 1933 -
6 Puck at Brighton -
7 A Book of Old Ballads 1934 -
8 A Stream and Its Source 1935 -
9 The Fool Hath Said 1936 -
10 The Living and the Dead 1944 - エッセイ
11 Yours Sincerely 1949 -
12 A Pilgrim's Progress 1952 -
13 The Queen's Coronation Day 1953 -
14 Beverley Nichols' Cat Book 1955 -
15 Beverley Nichols' Cats' A. B. C. 1960 -
16 Beverley Nichols' Cats' X. Y. Z. 1961 -
17 奇跡の論理 1966 大陸書房('72) 四次元現象について書かれた研究書
18 Beverley Nichols' Cats' A to Z 1977 - 15と16の合本
19 Twilight 1982 -

【参考】「消えた街燈」(早川書房 ハヤカワポケットミステリ)
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