長編黄金時代の幕開け

UK E・C・ベントリー
(Edmund Clerihew Bentley)

トレント最後の事件
「トレント最後の事件」
(1913年)
(東京創元社)

 イギリスの小説家で、推理史上に残る名作「トレント最後の事件」の作者として知られています。

 ロンドンに生まれ、オックスフォード大学卒業後弁護士となるも1902年から〈デイリー・ニューズ〉紙の編集員となり、その後〈デイリー・テレグラフ〉に移籍。34年にいったん引退するも40年に復帰し、その後47年まで編集員として活躍しました。

 ミステリー小説はわずかに長編が3作と短編集1冊のみですが、1913年に発表した長編「トレント最後の事件」により歴史に名前を残しました。 この作品は前世紀のホームズを中心とする短編中心の探偵小説から大きく脱却し、本格長編黄金時代の幕開けを告げるものとなりました。 また推理小説と恋愛を有機的に結合させることに初めて成功した作品でもあります。

 この点ベントリーはブラウン神父譚で有名な推理小説家G・K・チェスタトンとは聖ポール校在学時から無二の親友であったらしく、1908年にチェスタトンは長編「木曜の男」を、その5年後にベントリーは「トレント最後の事件」をお互いに捧げました。

トレント乗り出す
「トレント乗り出す」
(1938年)
(国書刊行会)

 そして親友のチェスタトンはこの作品の成功をとても喜んだといいます。 「最後の事件」とあるようにベントリーはこの作品一編でもう書かないつもりでしたが、周囲の強い要望により、その後いくつかのトレントものを発表しています。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、ロンドンの西郊シェパード・ブッシュに生まれる
学歴・職歴
オックスフォード大学卒、弁護士
1902年からは〈デイリー・ニューズ〉紙の編集員、その後〈デイリー・テレグラフ〉紙に移籍
生没
1875年7月10日~1956年3月30日(80歳)
作家としての経歴
1913
「トレント最後の事件」を米英同時に発表
その後1936年、1938年にもトレントものを発表
1936
G・K・チェスタトンの後を受けてディテクション・クラブ2代目会長に就任
シリーズ探偵
フィリップ・トレント (Philip Trent)
代表作
「トレント最後の事件」
「逆らえなかった大尉」「ほんもののタバード」(短編)
ランキング
EQアンケート68位

■著作リスト■

1 フィリップ・トレント登場作品リスト

2 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Elephant's Work
(英 The Chill)
1950 -

【リレー長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 屏風のかげに 1930 中央公論社「ザ・スクープ」('83)
2 ザ・スクープ 1933

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 大食祭の夜
(腹ぺこの夜)
1942 創元推理15('96冬)
HMM'81.12
ピーター卿のパロディ
2 ワトスン博士の友人 論創社 論創海外ミステリ61「シャーロック・ホームズの栄冠」('07) シャーロック・ホームズのパロディ

【編書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Second Sentury of Detective Stories 1938 -

【自伝】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Those Days: An Autobiography
(あの頃のこと)
1940 -

【参考】「トレント最後の事件」(創元推理文庫)
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