〈ハウダニット〉の名手

USA フレデリック・I・アンダースン
(Frederick Irving Anderson)

怪盗ゴダールの冒険
「怪盗ゴダールの冒険」
(1914)
(国書刊行会)

 アメリカの推理小説家。イリノイ州に生まれ、ペンシルヴェニア大学を卒業後新聞記者として地元の〈ニューズ〉紙で働いた後、1898年にニューヨークの〈ワールド〉紙に移転し1908年までの10年間華々しい活躍を見せます。

 1908年になると結婚を機に退社しフリーのジャーナリストとなり、、1910年から本格的な執筆活動を開始して農業問題、労働問題、技術革新など数多くのテーマでエッセイを発表し、これらの問題について語った著書も二冊出しています。

 そしてこれまでの執筆経験を活かして1911年には小説家としてデビューを果たし、デビュー作の短編「身元不詳の男」を皮切りとして怪盗ゴダールや女賊ソフィ・ラングなどのユニークなキャラクターを主人公とする本格志向の強い短編を〈サタデー・イブニング・ポスト〉や〈マルクア〉などの一流誌に寄稿する人気作家となります。

 また探偵小説だけでなく演劇や音楽界を舞台とした短編も発表していて、これらも含めて1933年頃までに70編あまりの中短編を残していますが、1937年に夫人が亡くなると事実上の隠遁生活に。

犯罪の中のレディたち/下
「犯罪の中のレディたち/下」
(東京創元社)

 それ以後は1940年代に彼の作品を愛読していたエラリー・クイーンの要請で〈エラリー・クイーン・ミステリ・マガジン〉に掲載された3編のみの発表に止まっています。

 彼の作品には怪盗ゴダールや女賊ソフィ・ラングの他数多くのキャラクターが登場しますが、これらのシリーズをまたいで様々なキャラクターが共演を見せていて、アンダースン独自の世界観を築き上げている所にその特徴があります。

 ミステリとしては、警察の厳重な包囲網や難攻不落の金庫などをいかにかいくぐって盗んでいったか?という、いわゆる〈ハウダニット(どうやってやったか?)が中心となる本格ミステリが最も多いのが特徴ですが、それに加えて登場人物に凝った仕掛けをして最後の最後であっと言わせる手法など、独特のスタイルと複雑なプロットで読者を驚愕の世界へと導いてくれます。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、イリノイ州イースト・オーロラ
学歴
ペンシルヴェニア大学卒
生没
1877年11月14日~1947年12月24日
作家としての経歴
1911
〈アドヴェンチャー〉8月号にホワイトものの短編「身元不詳の男」を発表。以後〈サタデー・イブニング・ポスト〉や〈マルクア〉などの雑誌に怪盗ゴダールや女賊ソフィ・ラングを主人公とする短編を次々と発表
1914
短編集「怪盗ゴダールの冒険」を発表
シリーズ探偵
不敗のゴダール (Godahl)
女族ソフィ・ラング (Sophie Lang)
オリヴァー・アーミストン&パーNY警察副本部長
新聞記者ホワイト氏(3短編に登場)
代表作
「怪盗ゴダールの冒険」

■著作リスト■

1 怪盗 ゴダール登場作品リスト

2 女賊ソフィ・ラング登場作品リスト

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Notorious Sophie Lang
(悪名高きソフィ・ラング)
1925 -
1 The Signed Masterpiece - オリヴァー&パー
2 The Whispering Gallery - オリヴァー&パー
3 贋札 創元推理文庫104-27「犯罪の中のレディたち/下」('79) パーのみ
4 Dilatory Domiciles - オリヴァー&パー
5 The Van Duersen Haze - オリヴァー&パー
6 The Social Destitute - パーのみ
7 The Peacock - オリヴァー&パー

3 その他の作品

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Book of Murder
(殺人教書)
1930 - クイーンの定員82
1 Beyond All Conjecture - オリヴァー&パー
2 The Wedding Gift - オリヴァー&パー
3 The Japanese Parasol - オリヴァー&パー
4 The Dead End -
5 The Magician -
6 A Start in Life -
7 Big Time - オリヴァー&パー
8 The Rcoil - オリヴァー&パー
9 Gulfsteam Green - オリヴァー&パー
10 ドアの鍵
(玄関の鍵)
光文社文庫「クイーンの定員 II」('92)
別冊宝石75('58)
オリヴァー&パー

【主な未収録短編】

1~3以外は全てオリヴァー・アーミストン&パー本部長もの

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Unknown Man
身元不詳の男
1911 EQMM'58.4 アンダースンのデビュー作
ホワイトもの
2 Beyond a Reasonable Doubt 1912 - ホワイトもの
3 The Purple Flame -
4 The Phantom Alibi 1920 - ゴダールへの言及
5 Wild Honey 1921 -
6 The Man Killer 1922 -
7 The Half-Way House -
8 The Follansbee Imbroglio - ゴダールへの言及
9 The White Horse 1925 -
10 The Footstep - ソフィ・ラングへの言及
11 Wise Money 1927 -
12 The House of Many Mansions 1928 -
13 Hangman's Truce -
14 Vivace-ma Non Troppo 1929 -
15 Madame the Cat 1930 -
16 Thumbs Down -
17 The Two Martimos -
18 The Pandrora Complex 1932 -
19 The Man on Post -
20 Unfinished Business 1933 -
21 幻の宿泊客 1942 光文社文庫「世界ベスト・ミステリー50選/上」('94) パーとフェーシー警部
22 Murder in Triplicate 1946 -
23 The Man from the Death House 1951 - パーのみ

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Farmer of Tomorrow 1913 - 農業問題に関するエッセイ
2 Electricity for the Farm 1915 -

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