歴史ミステリのパイオニア
アメリカの女性推理小説家、劇作家。素人芝居と合唱が趣味で、ミステリだけでなく犯罪実話や料理本、ジュヴナイル小説も手がけています。
ニューヨークに生まれ、大学を卒業後は高校教師を務めながらコロンビア大学やハーヴァード大学で修士号を取得し、その後大学講師を経て20世紀フォックスでテクニカル・アドバイザーとして活躍します。
ミステリー作家としては1942年から発表したサミュエル・ジョンスンものの短編シリーズを皮切りに活動を始め、1945年発表の長編「消えたエリザベス」で作家としての地位を確立しました。
この「消えたエリザベス」は18世紀後半に実際にイギリスで起きた若い女性の失踪事件を題材にした歴史ミステリーで、黄金時代の代表的作家であり、歴史ミステリの先駆者でもあるジョン・ディクスン・カーの「エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件」に影響を受けて書かれたものだといわれています。実際この作品の冒頭では、ディクスン・カーに敬意を表する形で彼に献辞を捧げる形をとっています。
その後も18世紀後半のイギリスを舞台に、辞書編纂家で批評家でもあった実在の人物であるサミュエル・ジョンスン博士を主人公とする短編ミステリ・シリーズを発表し続け、計4冊の短編集を刊行。中でも1作目の「探偵サム・ジョンスン博士」はエラリー・クイーンにも高い評価を受けていて、クイーンの定員にも選ばれています。
その作風は、自らを〈歴史の真相発見者〉と呼んでいるとおり、歴史の中に謎のまま残されていた事件に光をあて、自分なりに推理を展開した上で最後に真相を明らかにしていくという形をとっており、謎解きの要素もふんだんに盛り込まれていて、歴史本格ミステリとしての醍醐味が充分満喫できる作品が多いのが特徴です。
また1979年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の会長にも就任しました。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 消えたエリザベス | 1945 | 東京創元社 世界推理小説全集65('58) | リリアン・デ・ラ・トア ディクスン・カーに捧げられる |
2 | The Heir of Douglas | 1952 | - | |
3 | The Truth About Belle Gunness | 1955 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | コーヒー茶碗 | 東京創元社「アメリカ探偵作家クラブ傑作選2」('61) | ||
2 | A Fool for a Client 愚者の依頼人 |
立風書房「現代アメリカ推理小説傑作選2」('81) | ||
3 | しつこい狙撃者 | 1987 | 早川文庫75-11「シャーロック・ホームズの新冒険/下」('89) | シャーロック・ホームズのパスティーシュ |
4 | The Earl's Nightingale | 1989 | - | |
5 | A Small Shadow | 1992 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Good-Bye, Miss Lizzie Borden | 1947 | - |
【参考】「遠い国の犯罪」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)
「暗号ミステリ傑作選」(東京創元社 創元推理文庫)
「クイーンの定員Ⅲ」(光文社 光文社文庫)