複雑な人間関係を巧みに描写
アメリカの女流本格ミステリー作家。メイベル・シーリーないしメイベル・シーリイとも表記。
図書館員ジェーカブ・ホドンフィールドの6人兄弟の長女として生まれ、最年長であったことから小さい頃から弟や妹に物語を話して聞かせることが多かったといいます。幼少期はイリノイ、アイオワ、ウィスコンシン州などを転々としました。
1922年にミネソタ大学に入学し、在学時に英文学教授で「メリー・ピーターズ」などの少女物語等などで小説家としても著名であったメリー・エレン・チューズの影響を受け、自身も作家を志すようになります。しかし1926年の卒業後しばらくは生計を維持するために広告会社に入社し、コピーライターとして働いていました。
やがて結婚・出産を経て1935年になると会社を辞め、以前からの夢であった作家を志して本格的に小説を書き始めます。
そして1938年に最初の長編である「耳すます家(耳をすます家)」を完成させ、見事に作家デビューを果たしたのでした。
この人間の醜さや執念深さをテーマにした本格ミステリは発表されるやいなやたちまち好評を博し、ジェームズ・サンドーやW・B・スティーヴンスン、ハワード・ヘイクラフトらの名高い評論家たちも、この作品をミステリ界の”路標的作品”の一つに選んで高く評価しています。
「人間」と人間に襲いかかる「恐怖」に最も関心があるという彼女の言葉どおり、以後も複雑な人間関係を恐怖を交えて巧みに描き出していく本格作品を何作品か発表しています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 耳をすます家 (耳すます家) |
1938 | 鶴書房 ミステリ・ベストセラーズ(抄訳?) 別冊宝石111('62) |
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2 | The Crying Sisters | 1939 | - | 映画化 |
3 | The Whispering Cup | 1940 | - | |
4 | The Chuckling Fingers | 1941 | - | |
5 | Eleven Came Back | 1943 | - | |
6 | Woman of Property | 1947 | - | |
7 | ドアをあける女 | 1950 | 論創社 論創海外ミステリ24('05) | |
8 | The Stranger Beside Me | 1951 | - | |
9 | The Whistling Shadow | 1954 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The House That Nella Lived in ネラが住んでいた家 |
1952 | EQMM'58.5 | |
2 | Let Run, or Catch ? お気に召すまま |
1955 | EQMM'57.10 |
【参考】「別冊宝石111号 世界探偵小説全集47 クレイトン・ロースン&メーベル・シーリー篇」(宝石社)