ブラック・ユーモアを織り交ぜたシニカルな作風が持ち味
イギリスのミステリー作家で、イギリス本格黄金時代を代表する作家の一人。官吏とジャーナリストの経歴を持ち、それらの多忙な職務の傍ら探偵小説を発表しました。
また作家活動のかたわらミステリーの書評家としても活躍しています。
オックスフォード大学を卒業後、第一次世界大戦では戦功章を受けるなどの功績を残し、終戦後は短期間カイロの財務省での勤務の後ILO(国際労働機関)に入り、ジュネーヴ本部での勤務を経てロンドン事務局長に就任します。
また第二次世界大戦ではオタワで情報部の仕事に従事し、終戦後は公務を退いてジャーナリストに転身。〈エンパイア・ダイジェスト〉誌の編集長を務めるなど、華々しい職務経歴を持っている人物です。
ミステリー作家としては主に1930年代から40年代に活躍し、他の作家との合作も含めて全部で20の長編と数作の短編を残していますが、その内訳は情報部での勤務を生かしたスパイ小説もあるものの、大部分は本格ミステリのジャンルに入ります。
この点本格ミステリー作家としてはオーソドックスな謎解きミステリもありますが、ブラック・ユーモアを織り交ぜたシニカルで捻りの効いた技巧派ミステリも数多く発表していて、このあたりは盟友といわれたアントニイ・バークリーに通じるものがあります。
ちなみにオーソドックスな本格謎解きとしては「スリープ村の殺人者」、シニカルな作風のものとしては「救いの死」が代表作とされ、また探偵役は2人いるもののどちらもこの2作品には登場せず、ノンシリーズ作品が多いのもこの作家の特徴の一つです。
それ以外にもディテクション・クラブの初期の主要なメンバーの一人として、「漂う提督」や「警察官に聞け」といった合作長編にも参加したり、書評家としてはドロシー・L・セイヤーズの後を受けて〈サンデー・タイムズ〉誌の書評欄を長い期間担当するなど、数多くの分野で活躍した才人でもありました。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Corpse on the Mat (米 Man Who Rang the Bell) |
1929 | - | |
2 | Corpse Guards Parade 死の濃霧 |
新青年'30.5-8 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Bull's Eye | 1933 | - | |
2 | Corpse in Cold Storage | 1934 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Half Mast Murder (半旗の殺人) |
1930 | - | |
2 | Death in a Deck Chair | - | ||
3 | 救いの死 | 1931 | 国書刊行会 世界探偵小説全集30('00) | |
4 | スリープ村の殺人者 | 1932 | 新樹社 新樹社ミステリ('06) | |
5 | Poison in the Parish | 1935 | - | |
6 | Sic Transit Gloria (米 Scornful Corpse) |
1936 | - | |
7 | I'll Be Judge, I'll Be Jury | 1937 | - | |
8 | It Began in New York | 1943 | - | |
9 | Escape to Quebec | 1946 | - | |
10 | The Top Boot | 1950 | - | |
11 | Two's Company | 1952 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Bleston Mystery | 1928 | - | ゴードン・マクドネル(Gordon Macdonnell)との共著 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Murder in Black and White | 1931 | - | |
2 | Angel in the Case | 1932 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 漂う提督 | 1931 | 早川文庫73-1 HMM'80.7-9 |
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2 | 警察官に聞け | 1933 | 早川文庫99-1 HMM'84.1-6 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Mr. Truefitt Detects 靴 (トルウフィット君の手柄) |
1930 | 新青年'33夏季増刊 探偵小説'32.7(2-7) |
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2 | Death in the Kitchen 台所の死体 (ウヰスキイの壜) |
荒地出版社「一分間ミステリ」('59) ぷろふいる'36.11 新青年'34春期増刊 |
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3 | 無用の殺人 (湖底の自転車) |
1935 | 創元推理文庫110-10「探偵小説の世紀/上」('83) 新青年'38夏期増刊 |
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4 | End of a Judge | 1940 | - | |
5 | The Accident | 1951 | - | |
6 | The Fool | 1954 | - | |
7 | You've Been Warned | 1955 | - | |
8 | The Lost Ambassador | 1961 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | A Chance for Amateur Detectives/Report on the Competition | 1930 | - | 評論 |
2 | Are Murders Meant ? | 1939 | - | エッセイ |
3 | Murderers in Fiction | - | エッセイ |
【参考】「救いの死」(国書刊行会 世界探偵小説全集)